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1話
しおりを挟む「アンヌ、もう君とは離婚させてもらう」
私の夫のカイル・グラントは、突然離婚状を突きつけてきた。
「離婚? 何故ですか?」
「分かっているだろうアンヌ・モーガン。もう君への愛が尽きてしまったんだ」
カイルは重苦しいため息を吐いた
私とカイルが結婚したのは二年前だ。
カイルは婿養子として私の家にたであるモーガン家へとやって来た。
長男ながらも、能力が何もか中途半端で、家を継げないと判断されたカイルは、政略結婚の道具として私の家へと送り込まれた。
そのせいか、カイルは自暴自棄になった。
私の家のお金を使い込んで夜になると酒場へ入り浸り、遊び呆ける毎日。
カイルはその自分の悲運さを嘆き、しかし堕落しきった彼は酒に溺れていく……。
と、いう“設定”だ。
カイルの本当の目的……いや、“グラント家の本当の目的”は私の家のお金を使い潰すことだ。
彼らはとある法を悪用しようとしている。
それは、「夫婦の財産は共有する」という法だ。
つまり、夫婦の片方が財産を使い潰してもそれは違法とはならない。
加えて、私はこの家の当主なので財産はこの家だが、カイルは婿養子でこの家に来る時、何の財産も持っていなかった。
こっちの家はお金を使い込まれるが、あちらには何のリスクも無い、と言う訳だ。
そして今現在、私の家のお金を使い果たしたカイルは、私と離婚してさよならしようとしている。
しかし、そんなことを許すわけがない。
「離婚ですか……分かりました」
私が離婚を了承すると、カイルは口の端を吊り上げた。
私も同様にニッコリと笑う。
「では、あなたに今まで貸していた金貨千二百枚、きっちりと返してくださいね?」
「はぁ?」
カイルがコイツは何を言っているんだ、という表情になった。
「そんなことできる訳ないだろう。夫婦では全て共有財産だ。僕がお金を使ったってそれを僕に請求できるわけが──」
カイルの言葉に私は割り込んだ。
「ええ、そうですね。──浮気していないなら」
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