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8話

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「もういいわ。帰りましょう」

「しかしエミリア様! こんな扱いは不当です!」

「ジェーン、ここで私が何を言おうと、どれだけ待とうとあの人は私を王宮へ入れたりしないわ。ここにこれ以上いるのは時間の無駄よ。それなら、帰った方がマシだわ」

「……申し訳ありません」

「いいのよ。私のために怒ってくれているのでしょう?」

 ジェーンの落ち着かせ、私は屋敷へと戻ることにした。
 馬車を反転させ、もと来た道を戻るとき後ろを振り返ると、門番はこちらを見て笑っていた。



「なに、これ……」

 私が屋敷に到着するやいなや、ありえない光景が目に入ってきた。

 紙の山。
 大量の紙が私の屋敷の中に運ばれていたのだ。

 もちろん、こんな物を頼んだ覚えはないし、心当たりもない。

 私はこの紙の束を運びこんだ使用人に尋ねる。

「これは何なの?」

「私もおかしいとは思ったのですが、宛名が国王陛下からでしたので……」

 これはアルバートから送られてきた物のようだ。

 私は一枚の紙を手に取る。
 王宮の経営や雑務が書かれた書類だった。

 つまり、アルバートは王宮の仕事を全て私へと押し付けることにしたらしい。

 私が留守の間に運び込まれたのも、私が拒否しないようにするためだろう。

「やってくれたわね……!」
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