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8話
しおりを挟む「もういいわ。帰りましょう」
「しかしエミリア様! こんな扱いは不当です!」
「ジェーン、ここで私が何を言おうと、どれだけ待とうとあの人は私を王宮へ入れたりしないわ。ここにこれ以上いるのは時間の無駄よ。それなら、帰った方がマシだわ」
「……申し訳ありません」
「いいのよ。私のために怒ってくれているのでしょう?」
ジェーンの落ち着かせ、私は屋敷へと戻ることにした。
馬車を反転させ、もと来た道を戻るとき後ろを振り返ると、門番はこちらを見て笑っていた。
◯
「なに、これ……」
私が屋敷に到着するやいなや、ありえない光景が目に入ってきた。
紙の山。
大量の紙が私の屋敷の中に運ばれていたのだ。
もちろん、こんな物を頼んだ覚えはないし、心当たりもない。
私はこの紙の束を運びこんだ使用人に尋ねる。
「これは何なの?」
「私もおかしいとは思ったのですが、宛名が国王陛下からでしたので……」
これはアルバートから送られてきた物のようだ。
私は一枚の紙を手に取る。
王宮の経営や雑務が書かれた書類だった。
つまり、アルバートは王宮の仕事を全て私へと押し付けることにしたらしい。
私が留守の間に運び込まれたのも、私が拒否しないようにするためだろう。
「やってくれたわね……!」
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