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3話
しおりを挟むアルバートが私へ嘲笑を向けたその時。
「あら、あなたはなぜ一人なの?」
いきなりエミーが私に対してそんな言葉を投げかけてきた。
私はその言葉遣いに私はひどく驚いた。
下級貴族であるエミーが上級貴族である私に対して、『あなた』なんて言えば不敬どころの騒ぎでは無い。
確実に、私を見下している。
「せっかくのパーティーなのに、エスコートしてくれる男性はいないの?」
「…………っ」
なぜ私の隣にアルバートがいないのなかも分かっているはずなのに、エミーわざとらしく私へと質問しながら、ケラケラと笑う。
屈辱に私は固く拳を握る。
私は今すぐにでもエミーを怒鳴りつけたい気分だった。
しかし私はその屈辱に対しても我慢して耐えることしかできない。
エミーの隣にアルバートが立っているため、そんな非常識を咎めることすら出来ない。
私が必死に耐えているとエミーは興味を失ったのか、アルバートと一緒にどこかへ行ってしまった。
その後、パーティー会場にいた人々はまた談笑を始めたが、私は遠巻きに見られるだけで、誰も私へと話しかける人物はいない。
「……」
私は椅子の隣に置かれている水晶へ手を載せた。
今日一番大切な儀式を果たすためだ。
『潔白と誠実の誓い』
貴族がこの国の神に対して、不貞行為をしないことと誠実さを誓う儀式だ。
本来なら、新しく夫婦になる者同士で水晶へ手を置き誓いを述べるのだが、アルバートは絶対に座らないだろう。
だから、私はこの儀式を一人で行わなければならなかった。
衆人環視の中、一人屈辱に耐えて。
「潔白と、誠実を神に誓います」
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