あなたはその人が好きなんですね。なら離婚しましょうか。

水垣するめ

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1話

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「…………やっぱり、来ないわね」

 王宮の控え室。
 私、公爵令嬢のエミリア・ラブレスはポツリと呟いた。

 今日は私がある人物と結婚したことを発表するパーティーがある。

 本来なら、この控え室には新郎が迎えにくる手筈になっている。

 しかし、私を控え室まで迎えにくるはずの新郎は約束の時間になっても一向に現れる気配が無かった。

「……やはり“あの方”と一緒なのでしょうか」

「……そうでしょうね」

 隣にいる使用人のジェーンは呆れてため息を吐きながらそう言葉を漏らし、私も同様に呆れながらそれに首肯した。

「こんなのおかしいですよ! だってエミリア様は何も悪くないんですよ!? それなのにアルバート王はエミリア様に辛く当たって……!」

「……そうね。好きでもない人と結婚させられるのはお互い様なのにね」

 この結婚は政略的な結婚だった。

 私は上級貴族に生まれた者として果たさなければならない義務として割り切っていたのだが、アルバートは未だ割り切ることが出来ていないようだった。

 アルバートには想いを寄せる人物がいたからだ。

 男爵令嬢のエミー・モーガン。

 それがアルバートが恋している人物だった。

 当然、男爵令嬢と王子は結婚できるはずもない。 
 そのため公爵令嬢の私が結婚することとなったのだが……。

 あろうことか、アルバートは私と結婚したせいでエミーと結婚出来なくなったと思い込んでおり、私を親の敵のごとく憎んでいた。
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