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9話
しおりを挟む「そ、そんな……バカな……!」
誤魔化しようの無い真実を突きつけられて、ロバートはがっくりと項垂れ膝をついた。
「冤罪に、暴行に、脅迫に、これ程までお前が考え無しに行動するとはな」
「それは……! フィオナが虐められていたと聞いてついカッとなって……」
「怒りで我を忘れていたら罪は無くなると?」
「……」
黙ったロバートから目を離し、国王は私へ質問した。
「アリス嬢。大方事情は聞いているが、他につまびらかにしておかなければならないことはないか。遠慮はせず正直に、真実を話して欲しい」
「……先程食堂で昼食をとろうとしたのですが」
「うむ」
「彼ら三人に取り囲まれ暴行を加えられそうになりました。レオ様は真剣を持ち込み、罪を裁くという名分で斬りつけられそうになりました。丁度国王様の御命令が来て危険を逃れましたが、もう少しで剣を振り下ろすところでした」
私は包み隠すことはせずにさっき起こったことを述べた。
私が述べた事実に大人四人は目を見開いて驚愕した。
そして騎士団長が怒声をあげた。
「レオッ! お前ッ!」
騎士団長はレオを思い切り殴った。
本気の怒りと共に繰り出された拳は手甲をつけていたことも相まって相当痛そうだ。
しかしレオは鍛えているのもあり、私とは違い吹き飛ばされたりはしなかった。
精々殴られた親をにらみ返すぐらいだ。
「痛って……」
騎士団長はレオの胸ぐらをつかみあげる。
「女性に手をあげただけでなく、騎士の誇りである剣を向けただと……!? だれが暴力のために振るえと言った!」
「それは……」
「お前はもう騎士などではない……! お前がこれから騎士を目指すのは生涯許さない……!」
「はぁ!? 生涯ってそんな……ウソだろ!?」
騎士団長はついに涙を流した。
レオはそれでやっと騎士団長の言葉は軽いものではないと理解したようだった。
謁見の間に騎士団長の嗚咽が響く。
国王は私へ再度問いかけた。
「他にはないか?」
「あります」
そして私はポケットから砕かれたペンダントを取り出した。
今朝手紙で状況を伝えた私は、このペンダントのことを伝えるのを迷い、結局言わなかった。
しかし、今はもう黙っているつもりは無い。
「“家紋の入った”ペンダントを壊されました。ロバート様とドミニク様とレオ様に」
そう言って手のひらにのせたペンダントを見せる。
「ペンダントを足で何度も踏みつけられ、壊されました」
私の発言に、大人四人はさっきよりも驚愕していた。
普通のペンダントを壊されたくらいではここまで驚愕しない。
なぜここまで驚くのかというと、家紋が入っているペンダントを壊したからだ。
家紋には家の誇りや名誉が詰まっている。
つまり、家紋をいれた装飾品を踏みつける、ということはその家紋の家に対する宣戦布告と同義なのだ。
父を除く国王たち三人は表情が真っ青になった。
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