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3話
しおりを挟むジョン王子に感謝しながら廊下を歩いていると、また声をかけられた。
「やあ、シャロン。おはよう」
「イアン様、おはようございます」
私に爽やかな笑みを浮かべながら手を振って現れたのは、ジョン王子の弟の、イアン王子だった。
イアン王子はジョン王子の一つ下で、私と同じ学年だ。
話し始めたのはジョン王子と婚約を解消してからなのでつい最近だが、仲良くさせてもらっていた。
「ああ、イアン様素敵……!」
「今日もお顔が綺麗だわ……!」
イアン王子はとても好ましい人物だ。
常に成績はトップを維持し、自己の研鑽を怠らず、いつも物腰は柔らかい。
話し始めたのは最近とはいえ、ずっとその努力している姿は見てきたので、ずっと王妃教育を受けてきた私はとても親近感を覚えていた。
「今日は生徒会に顔を出すのかな?」
「はい、今日は出そうと思います」
「良かった、君がいるならいつもより早く終わらせることが出来る」
「まぁ、そう言っていただけると嬉しいです」
「ところで、今日の昼なんだが……」
イアン王子が言い淀む。
「お昼に、何でしょう?」
「あー……、昼食を一緒にとらないか?」
「ふふ、是非ご一緒させてください」
そんなことに言い淀んでいたのか、と私は可笑しくてつい口に手を当てて笑ってしまう。
「本当にお似合いの二人ですね……」
「あの二人なら、完璧な夫婦になるでしょうね」
そんな声が聞こえてきた。
そんなことを言われると、ついイアン王子を意識してしまって、顔が赤くなるのが分かった。
それはイアン王子も聞いていたようで、二人して顔を赤くしてしまっている。
「ははは……」
「うふふ……」
気まずくなってしまった雰囲気を誤魔化すために、私達は空笑いをする。
「さあ、教室へと行こう」
「ええ、行きましょう。早く」
焦りながら、私達は教室へと歩き出す。
だから、気づかなかった。
ジョン王子が柱の影から私を睨んでいたことに。
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