いいですよ、離婚しましょう。だって、あなたはその女性が好きなのでしょう?

水垣するめ

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12話

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「それでは“話し合い”を始めましょうか」

 サリヴァン家の無駄に広い部屋には異様な空気が漂っていた。
 それも当然だ。今から行われるのは“話し合い”なんて優しいものではない。
 被害者から加害者への一方的な断罪だからだ。

 加害者側に座っているサリヴァン家当主のニッチと、ホスキンス家の当主であるフィリップは二人とも青い顔で震えながら座っている。
 ロバートとサラはもっとひどい顔だ。

 被害者側にはニコニコとしたエドワードと私、そしてもう一人、この部屋の異質な空気の正体が座っている。
 国王リチャード・エッセルが口を開く。

「……では、始めようか」

 国王はじろりとニッチを睨みつける。

「まずは我が息子エドワードの婚約者であるサラ・サリヴァンが他家の男と浮気していた件について、だ」

 ニッチがビクッ! と肩を震わせる。

「ニッチ・サリヴァン。この婚約は貴様が最初に言い出したことではなったか? この婚約でこの国の未来はもっと良くなる、と。それが何だ? この状況は。何か申し開きがあるなら述べてみろ」
「は、はひっ……!」

 ニッチは口をぱくぱくと動かすだけで言葉が出てこないようだ。
 国王はニッチを見てため息をつくと、エドワードに向き直った。

「それで、エドワード。お前はどう思っている」
「はい、まず彼女とは婚約破棄させて頂きたいと思っています」
「まぁ当然だな。それで?」
「そうですね、ここは慣例に従って、浮気した家から慰謝料を貰うのはどうでしょうか」

 国王は少しの間思案する。

「ふむ、いいだろう。それで、ニッチ・サリヴァン。貴様の誠意はどのくらいだ?」

 国王からの質問にニッチは汗をかきながら答える。

「は、はいっ……! ええと、慣例に従うなら、金貨百枚ほどでどうでしょうか……?」
「ほう、それが貴様の誠意なんだな?」
「い、いえ! とんでもありません! 金貨二百枚出させて下さい!」
「そうか、貴様の誠意はそんなものか」

 国王が首を振ってため息をつく。
 ニッチはその仕草に慌てて答えた。

「き、金貨千枚出します!」

 その額にその場にいた私達は驚愕した。
 金貨千枚なんて、サリヴァン家が破産してもおかしくないほどの大金だ。
 国王はそれにニヤリと笑う。

「いいだろう。貴様の誠意、しっかりと伝わった」

 ニッチががっくりと肩を落とす。
 その場にいた誰もが国王の手腕に感嘆していた。
 浮気していたとはいえ、言ってしまえば結婚前の婚約段階の出来事でしかない。
 慣習に従うなら、そもそもそんなに払う必要は無いのだ。
 しかし相手が正常な判断が出来ていない時にしっかりと追い詰めて大金を毟りとった。

 さすが国王だ。

「それでは次はメディナ家とホスキンス家の問題について話していこうか」
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