いいですよ、離婚しましょう。だって、あなたはその女性が好きなのでしょう?

水垣するめ

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10話

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 次の日、サリヴァン家へとある来客があった。

「エドワード・ラッセルです。私の婚約者であるサラに会い来ました」

 エドワードは笑顔で門番に要件を告げる。
 門番は王子の訪問として急いで当主のニッチへ知らせに行った。

「クソッ! このタイミングとは……!」
「やはりエドワード王子は……」
「ああ、サラの浮気について聞きに来たのであろうな」

 別に家に入られるくらいならこちらで挙動を見張っておけばいいのでどうということはないが、サラとエドワードを引き合わせては不味い。あの馬鹿娘がエドワードに何を口走るか分からない。
 ニッチはどうするか思考する。
 相手は王子、あの生意気な伯爵家の娘のように雑に扱うわけにもいかない。

「病気だから会えないと言うしかないか……」

 メディナ家のように門番に伝言させては失礼にあたるので、ニッチは自ら門の前にいるエドワードの元へと向かう。
 門の前で従者を連れたエドワードはニコニコと笑顔を浮かべていた。
 ニッチも表面上は笑顔を浮かべながらエドワードへと近づく。

「これはこれはエドワード様、わざわざお越し頂きありがとうございます。しかしただ今折り悪く娘は病に伏せておりまして……」
「ああ、何ということだ。私の婚約者が病に伏せていると。今すぐに見舞いに行かねばならない」

(おのれ! 何をするつもりだ!)

 わざとらしく話すエドワードにニッチは心の中で怒鳴る。
 しかし表情は笑顔から崩さず対応する。

「では少しお待ちいただけますか? サラも年頃の娘。少々用意が必要なのです」
「ええ、分かりました」

(よし! 時間が出来た! 後はサラには強烈な睡眠薬を飲ませて、ロバートは別の出口から逃がせばいい!)

 ニッチは心の中でほくそ笑んだ。

「ではこちらへ、応接室へ案内致します」
「どうもご丁寧に」

 お互い薄っぺらい笑みを交わし、ニッチの屋敷の中へと入っていく。
 階段を上がり、応接室がある廊下を歩く。
 その間、ニッチはエドワードを注意深く見ていた。
 エドワードがおかしな行動をしないようにするためだ。

 だから、反応が遅れた。
 エドワードの側についていた従者がいきなり走り出した。



「おい! 何をしている!」

 後ろからニッチの怒鳴る声が聞こえる。
 私は走りながらエドワードの言葉を思い出していた。

「サラの部屋はこの廊下の突き当りだ」

 私を見てギョッとした表情を浮かべた使用人の横を通り抜ける。
 完全に意表をついたので、誰も私を捕まえられない。

 奥の部屋の扉を開ける。

「これはどういうことでしょうか?」

 エドワードの従者の格好をした私、アリシア・メディナは後ろを振り返ってニッチへと質問した。
 ニッチは部屋の中の状況に顔を青くしている。

 部屋の中ではサラとロバートが裸で仲睦まじく抱き合っていた。
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