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9話
しおりを挟む「やぁ、久しぶりアリシア」
「エドワード王子……」
メディナ家のチャイムを鳴らした客人はこの国の王子、エドワード・エッセル王子だった。
エドワード王子はその国中の女性を虜にする笑顔で私に挨拶をした。
私は予想だにしない客に驚愕した。
エドワード王子は私の畏まった態度に少し寂しそうな表情を浮かべる。
「そんな畏まった態度はやめてくれ。幼馴染なんだ。昔みたいに砕けた態度で接してくれていいい」
「じ、じゃあ……エドワード?」
「ああ、アリシア」
エドワードが華のような笑顔で私の名前を呼ぶ。
昔よりも男らしくなったエドワードに、私の心は少しドキリとした。
◯
「それにしても、本当に久しぶりね」
「二人とも婚約してから会ってなかったね。となると、随分時間が経ったようだ」
「本当にエドワードは見違えるくらいに成長したわよね」
「それは君もさ、本当に綺麗になった」
「……そう、ありがとう」
私はエドワードの歯が浮くような褒め言葉に顔が熱くなった。
エドワードは昔からこんなふうに歯が浮くようなセリフを言う癖がある。
しかしそれは私限定で、他の女性の前ではボロを出さなかったのは今でも不思議だ。
「それで、用は何かあるの?」
「用がないとアリシアに会いに来てはいけないかな?」
「そんなことは、ないけど……」
「はは、冗談だよ」
私はエドワードを睨みつける。
エドワードはけらけらと笑った。
「本当の目的は君が困ったことになっていると聞いたからだよ」
「知っていたのね」
「もちろん。私も“当の本人”なんだからね」
そう、エドワードにも婚約者がいる。
その相手の名前はサラ・サリヴァン。
絶賛ロバートと浮気中の公爵令嬢だ。
「まぁ、婚約者だとは思っていなかったけどね。もう一年以上会っていなかったし。そもそもサリヴァン公爵に押し通された婚約だったし」
私は今まで疑問だったことが腑に落ちた。
サラが浮気していることは確実なのに何故エドワードは何もしていなかったのかは疑問が、そもそも婚約したくなかったのか。
「それで、サリヴァン家に入りたいんだろう? ロバート君を連れてこないと色々と不味いらしいじゃない」
「そっちの方も知っていたのね」
「それでどうする? サリヴァン家に入る方法があんだけど」
「頼むわ、エドワード」
私は即決する。
選択肢は無かった。
「うん、任された」
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