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8話
しおりを挟む「なっ! ふざけるな! こちらは一時間も待ったいたんだぞ! それにそんなことを確認するのに一時間もかかるわけないだろう! バカにしているのか!」
使用人が怒鳴る。
私もその気持ちはとても分かる。
サリヴァン家は私たちのことを明らかにコケにしていた。
しかし、ここで怒っては相手の思う壺だ。
「止めなさい。いきなり押しかけた私たちが悪いわ。一旦帰るわよ」
「……分かりました」
私は馬車に乗る。
そしてコケにされた悔しさを噛み締め、メディナ家の屋敷へと戻るのだった。
◯
「やっぱりこうなったわね……」
私は自室の机に座って爪を噛む。
私はこんな風に追い返されるのは予想出来ていた
。
サリヴァン家として弱点となる浮気した者を隠しておきたいのは当然だ。
「取り敢えず出来ることはこれだけしかないわね……」
私はサリヴァン家に面会の約束を取り付けるため、公式な文書を書く。
そしてサリヴァン家へその文書を送った。
翌日、返事が返ってきた。
その内容は「ただ今体調が優れないため会うことは出来ない」というものだった。
「マズいわね……」
非常に不味い。
私はその返事に歯噛みをした。
サリヴァン家はこのままのらりくらりと躱して私と面会をしないつもりだ。
匿っているロバートが何かの拍子で見つかってしまうリスクがあるからだろう。
そして、あちらにはタイムリミットは無いが、こちらには借金の返済期限がある。
サリヴァン家はメディナ家の事情なんて分からないはずなのに狙い澄ましたかのような手を打ってきている。
(いや、待てよ……?)
そうだ、あちらにはロバートがいる。
もし、ロバートからそのことが漏れてサリヴァン家がこんな手を使っているのだとしたら。
いや、確実にロバートから情報が漏れている。
「ロバート! あなたはどこまで……!」
ロバートは我が身可愛さにサリヴァン家に情報を全て売ったのだ。
どう考えても人としての道に間違っている。
「そうなるとますます不味いわ……」
あちらは確実に返済期限が過ぎるまで待つだろう。
ノーリスクでメディナ家へダメージを負わせられるのだ、やらない手はない。
(どうする……! 何か手を打たないと……!)
しかしこれ以上打つ手は無い。
腐ってもあちらは公爵。
こちらが下手な手を打てば公爵の権力でメディナ家が潰される。
完全な八方塞がり。
しかし私は諦めず思案する。
ちょうどその時、救いの手のように玄関のチャイムが鳴った。
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