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6話
しおりを挟む「……っ!」
(そういうことか!)
私は理解した。
計算しても辻褄が合わない数字。
金貨二百枚はロバートが商会から勝手に借りていたのだ。
しかも最悪なことに相手は先代の頃から付き合いがあるロンズデール商会。
ロバートが勝手に借りたからと言って無下に扱っては、この家の信用に関わる。
私は深呼吸をして、心を落ち着ける。
「すみません。まず契約書類を見せていただけますか?」
「もちろんです。これを」
男性が鞄から書類を取り出す。
私はその書類を受け取り、じっくりと読み始めた。
そして私はあることを発見する。
(やっぱり家の名前を勝手に使われているけど……よし! ロバートの名前がしっかりと入っているわ!)
私は心の中でガッツポーズをした。
契約書類のサインの欄には、『ロバート・メディナ』と書いてある。
そう、ロバートの名前が入っているのだ。
これはとても重要だ。
本来なら、法律では家の名前でお金を借りると、家に返済の義務がある。
しかし個人の名前まで書いてあるならば、離婚した場合本人に返済の義務が移るのだ。
ますますロバートを連れ戻したくなってきた。
私は契約書類から顔を上げた。
「すみません、今は忙しくて。返済期限はいつまでですか?」
「一週間後となっております」
「一週間後!?」
そんなのあまりに短すぎる!
私が驚いていると、男性は申し訳なさそうな表情になった。
「私たちもこれまでに何度もロバート様に催促させていただいているのです。メディナ家への手紙も送ったはずですが……拝見なさっていませんか?」
「手紙……?」
そんなの貰った覚えはない。
私はメディナ家へ来る手紙は一応全て目を通しているので、借金の催促の手紙なんかが来て見逃すわけがない。
(ロバート! 手紙を隠していたのね!)
考えられるのはロバートが手紙が私に渡る前に、使用人に命令して全て隠していたのだろう。
ただ、手紙を読んでいなかったからと言って、知らんぷりを決め込む訳にもいかない。
「ごめんなさい。少し行き違いがあったみたい。また後でしっかりと連絡させてもらうわ」
「分かりました」
「本当にありがとう」
きっとこの男性も今日借金をしっかりと回収するように命令されていて、回収できる出来る見込みも得ずに帰るわけにはいかないはずだ。
それをここで引いてくれるのは、今までのメディナ家への信頼に他ならなかった。
(ロバート! あなたのしたことは絶対に許さないわ!)
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