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4話
しおりを挟む「これはどういうことですか?」
私は目の前の机に書類をパサリと置く。
ロバートが青い顔をしてそれを見ている。
私がおいた書類は、私の部屋で管理していたこの家の帳簿だった。
「最近、帳簿がおかしいと思ったんです」
「アリシア……」
私はロバートの言葉を無視する。
「帳簿に書かれている数字と私の覚えている数字とほんの少し違う、と。しかし忙しかったので今日まできちんと確認していませんでしたが」
「あ、アリシア。聞いてくれ」
「小さな小さな改変でしたよ。注意深く見ていなければ気が付かないほどの」
そしてよく見てみると、その改変はいたるところにあった。
その改変を再度計算して誤差を修正すると、その誤差は大金になった。
「横領していましたね。この家のお金を」
「……」
「そう言えば、あなたが婿入りするとき、一人使用人を連れて来ましたよね」
ロバートに帳簿を偽装する能力はない。
私の使用人は帳簿を偽装する理由がないし、するはずがない。
となれば、考えられる可能性は一つだ。
「あなたの連れてきた使用人が、この偽装を行ったのですね?」
ロバートは図星を疲れたように仰け反った。
「一体、いくら彼女につぎ込んだのですか?」
「…………金貨三百枚」
「……はぁ」
「あ、アリシア! 聞いてくれ!」
私はため息をついた。
ロバートが私に縋りつく。
私はそれを冷ややかな目で見下した。
「あなたとは離婚します」
そんな技術を持った人間を使用人として連れてくるなんて、確信犯以外のなにものでもない。
「当然このことはあなたの実家に報告して然るべき処置を取らせていただきますから。さぁ、部屋から出ていってください」
ガックリと項垂れるロバートを使用人に連れ出させる。
静かになった部屋で私はもう一度ため息をついた。
「アリシア様、紅茶をどうぞ」
「ああ、ありがとう」
メイドのロザリーが紅茶を淹れてくれた。
私はそれをお礼を言って受け取る。
一口飲んで心を落ち着けた。
「最悪だわ。まさかそんな大金をつぎ込んでいたなんて」
偽装されていた帳簿を見て悔しさに歯噛みする。
「でも、おかしいのよね」
ロバートが横領されてたお金を足しても、今まで貢いできた金貨三百には届かない。
横領されていたのはせいぜい金貨百枚なのだ。
ロバートの言っていたことと辻褄が合わない。
(まぁいいわ。後でゆっくりと問い詰めましょう)
私はそう疑問に一度蓋をして、寝ることにした。
◯
次の日、慌ただしく使用人が部屋に入ってきた。
「大変です! ロバート様が部屋にいません!」
「なんですって!?」
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