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3話
しおりを挟むあれから三日間、ロバートは家で大人しくしていた。
偶に何処かに行きたそうにそわそわとしているが、使用人たちには家から出さないように厳命しているので、ロバートがまたサラの元へ向かう心配は無い。
そして昼過ぎ、私が仕事をしていると玄関先から甲高い悲鳴のような、不愉快な喚き声が聞こえてきた。
何事だ、と思っていると使用人は入ってきて報告した。
「サラ様がお越しです」
私は驚いた。
「要件は何なの?」
「ロバート様を出せ、とずっと言っています」
「なるほど、私が出るわ」
私は仕事を中断し、玄関先へと向かう。
玄関先に近づくにつれ、声が大きくなり私の感じる不快さは増えていった。
玄関先につくと、ロバートの幼馴染のサラが「ロバートを出しなさい!」と大声で叫んでいた。
使用人たちは扱いに困っているようだ。
私は前へと出る。
「サラ様、いかが──」
しかし、サラは私を見るやいなや近づいて私に平手打ちをした。
バチン! と音が響く。
サラが私に怒鳴る。
「早くロバートを出しなさい!」
使用人たちは絶句していた。
私も驚いていたが、表向き愛想笑いを浮かべて対応する。
取り乱すのは貴族としての禁忌だ。
面倒くさいので、取り敢えずロバートはいないことにして帰ってもらおう。
「ええと、ただ今ロバートは」
「早く出せって言ってるでしょ! ロバートに今すぐ金貨百枚を借りなきゃいけないの!」
サラは私の言葉を叫ぶ。
私はサラの言った内容に驚いた。
「金貨、百枚ですか……」
「そうよ! ロバートは貸してくれるって言ったんだから!」
金貨百枚。
貴族にとっても相当な大金だ。
それをロバート貸すと約束した?
いや、出来るわけがない。
ロバートにそんな経済力がないことは私が一番良く知っている。
「サラ……!」
その時、声を聞きつけたのか、ロバートが玄関先へとやって来た。
サラはロバートを見て叫ぶ。
「ロバート! 早く金貨百枚貸してよ! 今すぐ必要なんだから!」
サラの言葉を聞いてロバートの表情が強張った。
そしてロバートは私の方をちらちらと見始める。
「さ、サラ。今日は僕、体調が悪いからもう帰ってくれないかな……?」
「なっ! 私は公爵令嬢なのよ! そんなことを言っていいと思ってるの?」
「本当にごめん! 今日は本当に駄目なんだ!」
そう言ってロバートは強引にサラの背中を押し、家の外へと向かわせた。
サラは色々と喚き散らしていたが、男の力には敵わず家から追い出された。
扉を閉め、屋敷に静寂が戻った。
ロバートは居心地が悪そうに私のことを見ている。
安心してください。そんな顔をしても逃しませんから。
「それで、金貨百枚って何ですか?」
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