「無能はいらない」と言ったのはあなた達ですよね……?

 この世界の貴族は魔法を重視する。
 魔法がどれだけ洗練されているか。
 魔法を使うのに重要な魔力をどれだけ持っているか。

 それが貴族における重要な価値判断の一つとなる。

 そして私、男爵家のエルザ・フランスは誰よりも保有する魔力が多かった。

 常人の約百倍。
 それは国の中でも五本の指に入るほどの魔力量だった。

 両親に私に大層期待して、甘やかしてくれた。

 あれが欲しい、と言えば何でも買ってくれた程だ。

 そしてその魔力量の多さは、フランス男爵家に大きな幸運をもたらした。

 公爵家から縁談が来たのだ。

 両親は即刻頷き、私は公爵家のジャン・ブルボンと婚約することになった。

 両親は喜んだ。
 これで公爵家とのパイプができて、かつ上流貴族にもなることができる、と。

 私は誇らしかった。
 自分がこれほどまでに両親の役に立っていることが。

 そんな幸せの歯車が狂ったのは私が魔法を習い始めた、十二歳の頃だった。

 私は魔法が全く使えなかったのだ。

 どの属性にも適正は無く、唯一使えたのは治癒魔法だけ。

 両親は「魔法は使えるまで一年はかかる」と励ましてくれたが、治癒魔法だけしか使えずニ年が過ぎた頃から、両親の態度が変化し始めた。

 そしてジャンに「無能とは婚約できない」と婚約を破棄されたことから、両親にも完全に見捨てられ、家から追い出されることとなる。

 しかし私には治癒魔法の才能があったようで……?
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