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5話
しおりを挟む「それで、婚約破棄するなら紙にサインしたんじゃないのか? その紙はどこにあるんだ?」
私はぴくりと動きを止めた。
「……持っていかれちゃいました」
「は?」
「だから、紙をノーラン様に持って行かれちゃったんです……」
「はぁ!? 何やってんだよお前! 一番大事な物だろそれは!」
「いや、急に婚約破棄しないとか言い出したから、驚いて落としちゃったんですよ! 事故です事故!」
「このバカ! なんでお前はいつもこう、ドジを踏むんだ!」
「なっ! バカは言い過ぎですよ! 私より成績下のクセに!」
「言いやがったなお前! 不敬罪でしょっぴくぞ!」
「私は事実を言っただけです!」
「クソッ! なんでこんなバカなのに勉強だけ出来るんだよ……」
そこまで言うと私達は二人とも肩で息を切らしてゼーゼーと吐いた。
「こんな言い合いをしてもキリがないな……」
ロマン王子が額に手を当ててを空を仰ぐ。
そして深くため息をついた。
「しょうがない、後で俺が一緒についていってやる。口添えしてやるよ」
「え、本当ですか! 助かります!」
「いい、俺にも関係あるしな」
私は喜んだ。
ロマン王子がついてくれるなら百人力だ!
ロマン王子は私みたいな貴族にも気さくだから忘れがちだが、腐っても王子だ。ノーランもロマン王子の言葉なら言うことを聞いてくれるに違いない。
その時、ふと疑問が浮かんだ。
「でも、なんでロマン王子は私にこんなに親身にしてくださるんですか?」
ロマン王子にとっては私の婚約破棄なんて所詮他人事のはずだ。
それなのに、なぜこんなにも私に労力をかけてくれるのか疑問だった。
私が質問するとロマン王子は「うっ」と言葉を詰まらせた。
「べ、別になんでもいいだろ……」
「えー、教えて下さいよ。関係あるってなんですか?」
たじろいだロマン王子が面白かったのでからかうと、ロマン王子はスン、と無表情になった。
「おい、一緒について行ってやらんぞ」
「あ、分かりました」
ふざけすぎたようだ。
着いて行ってくれなくなるのは困るので、私は口を閉じた。
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