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「最っ、高だわ……」
翌日、私は自分の部屋で、姿鏡に写る自分に見惚れていた。
いつもの制服を着ているが、見た目は全く別のものに変わっていた。
茶色に染めていた髪は金色に。伸ばしていた前髪も切り、曲がっていた背も張る。
私は前とは別人になっていた。
本当の自分になれたことの喜びを噛みしめる。
これからはおしゃれも出来るし、自由に話すことも出来る。
(ノーラン様、婚約破棄してくれてありがとう……!)
私は心のなかでノーランに向けて感謝をした。
「お嬢様、そろそろ出発のお時間ですよ」
メイドがコンコンと扉をノックして入って来た。
「あ、そうね。今行くわ」
久しぶりの自分の姿にはしゃいで、学園に行くことをうっかり忘れていた。
私は用意をして屋敷の前にある馬車へと向かった。
馬車に乗り込むと御者の人が挨拶をした。
「おやお嬢様、今日はいつもと違いますね。何だか昔に戻ったようだ」
「ええ、ノーラン様との婚約を解消するから、今日からは元の私に戻れるのよ」
「それはそれは、ノーラン様はもったいないことをしたのではないでしょうか」
そんなふうに御者の人と話していると、すぐに学園へと着いた。
「お嬢様、到着しました」
「ありがとう」
御者の人にお礼を言って馬車から下りる。
歩いていると、視線が集まってきているのが分かった。
きっと昨日とは違う私を見て驚いているのだろう。
私は前方にノーランが歩いているのを発見した。
丁度いい。ここで
「あ、ごきげんようノーラン様!」
私は元気よく挨拶する。
今までは言いつけで出来なかったが、今なら出来る。
ノーランは振り向くと一瞬誰だか分からない、といった表情になった。
しかし、すぐに私を指差して震え始めた。
寒いのだろうか。
「き、君はもしかして……」
「はい! ナタリーです!」
私はその場でくるくると身体を動かして、どこかおかしなところがないか確認する。
「どうですかノーラン様! 私かわいくなったと思いませんか? 今までノーラン様の言いつけを守って地味にしていましたが、もう婚約破棄するなら、言いつけを守る必要はないかなって思って……。大丈夫ですよね?」
言っている途中で不安になってきたので、私は念の為に確認をとった。
しかしノーランは俯いたまま「嘘だろ……こんなに美人だったなんて……」とか、意味の分からないことを呟いている。
「え、えっとノーラン様……? あ、これ! 持ってきました!」
私はおかしな挙動を見せるノーランが不思議だったが、ノーランに挨拶した目的を思い出して、サインが書かれている紙を差し出した。
「これで婚約は解消ですよね! いやー、私達二人、これからはお互いの道を歩いていきましょう!」
一応婚約関係だったので、私はノーランに別れの挨拶のようなものをした。
しかし、顔をあげたノーランは、とんでもないことを言った。
「……い、いや、婚約破棄ってなんのことだ? 僕はそんな事言ってないぞ」
「……え?」
ハラリ、と手に持っていた紙が落ちる。
な、なんで……!?
翌日、私は自分の部屋で、姿鏡に写る自分に見惚れていた。
いつもの制服を着ているが、見た目は全く別のものに変わっていた。
茶色に染めていた髪は金色に。伸ばしていた前髪も切り、曲がっていた背も張る。
私は前とは別人になっていた。
本当の自分になれたことの喜びを噛みしめる。
これからはおしゃれも出来るし、自由に話すことも出来る。
(ノーラン様、婚約破棄してくれてありがとう……!)
私は心のなかでノーランに向けて感謝をした。
「お嬢様、そろそろ出発のお時間ですよ」
メイドがコンコンと扉をノックして入って来た。
「あ、そうね。今行くわ」
久しぶりの自分の姿にはしゃいで、学園に行くことをうっかり忘れていた。
私は用意をして屋敷の前にある馬車へと向かった。
馬車に乗り込むと御者の人が挨拶をした。
「おやお嬢様、今日はいつもと違いますね。何だか昔に戻ったようだ」
「ええ、ノーラン様との婚約を解消するから、今日からは元の私に戻れるのよ」
「それはそれは、ノーラン様はもったいないことをしたのではないでしょうか」
そんなふうに御者の人と話していると、すぐに学園へと着いた。
「お嬢様、到着しました」
「ありがとう」
御者の人にお礼を言って馬車から下りる。
歩いていると、視線が集まってきているのが分かった。
きっと昨日とは違う私を見て驚いているのだろう。
私は前方にノーランが歩いているのを発見した。
丁度いい。ここで
「あ、ごきげんようノーラン様!」
私は元気よく挨拶する。
今までは言いつけで出来なかったが、今なら出来る。
ノーランは振り向くと一瞬誰だか分からない、といった表情になった。
しかし、すぐに私を指差して震え始めた。
寒いのだろうか。
「き、君はもしかして……」
「はい! ナタリーです!」
私はその場でくるくると身体を動かして、どこかおかしなところがないか確認する。
「どうですかノーラン様! 私かわいくなったと思いませんか? 今までノーラン様の言いつけを守って地味にしていましたが、もう婚約破棄するなら、言いつけを守る必要はないかなって思って……。大丈夫ですよね?」
言っている途中で不安になってきたので、私は念の為に確認をとった。
しかしノーランは俯いたまま「嘘だろ……こんなに美人だったなんて……」とか、意味の分からないことを呟いている。
「え、えっとノーラン様……? あ、これ! 持ってきました!」
私はおかしな挙動を見せるノーランが不思議だったが、ノーランに挨拶した目的を思い出して、サインが書かれている紙を差し出した。
「これで婚約は解消ですよね! いやー、私達二人、これからはお互いの道を歩いていきましょう!」
一応婚約関係だったので、私はノーランに別れの挨拶のようなものをした。
しかし、顔をあげたノーランは、とんでもないことを言った。
「……い、いや、婚約破棄ってなんのことだ? 僕はそんな事言ってないぞ」
「……え?」
ハラリ、と手に持っていた紙が落ちる。
な、なんで……!?
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