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23話 ダンスを踊りました。
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扉が開かれる。
途端に楽器の音が聞こえてきた。それに加えて話し声も。
会場の中はオレンジ色の照明で照らされ、息の詰まるような空気が充満していた。
「リナリア、私についてきてください」
「はい……!」
耳元で囁かれ心臓が跳ね上がりつつも私は公爵様の歩みについていく。
広間の中を歩いているとヒソヒソと話している声が聞こえて来た。
『ほら、あれが……』
『噂の……』
公爵様の言っていた通り、私のことは知れ渡っているようだ。
全方向から視線を感じながらノエル様について行っているとノエル様が立ち止まった。
「ネイジュ公爵様!」
「お待ちしていました!」
何だろう、と思っていると数人の令嬢が駆け寄ってきてたちまちノエル様が囲まれた。
どうやらノエル様は彼女たちを見て立ち止まったようだ。
「公爵様、今日も素敵です!」
「噂でもしかしたら今日来ると伺っていたのですが、本当にいらっしゃったのですね!」
彼女たちはノエル様を皆恋する乙女の瞳で見上げている。
本人も言っていたが、やっぱりノエル様は社交界ではモテモテみたいだ。
「この方はどなたですか……?」
そしてすぐに彼女たちはノエル様の隣に立っている私の存在に気づき誰なのかを質問した。
皆のアイドルであるノエル様に見知らぬ女がついているのが気になるのだろう。
「彼女は私の婚約者です」
ノエル様は取り繕った笑みをニッコリと浮かべて彼女たちにそう言った。
普通ならノエル様の優しそうな笑顔を見たらこれが本当だと思うだろうが、ノエル様と少なからず関わってきた私にはこの笑顔が壁を作っているのだことに気がついた。
(て、そんなことを考えてる場合じゃありません! 私も挨拶しないと!)
貴族社会においてまともに挨拶ができない人間は侮られてしまう。
「リナリア・マリヤックと申します。初めまして」
私は令嬢たちに対して挨拶をする。
屋敷でアンナと練習した通りの完璧な挨拶をしたのだが、彼女たちは目の前のノエル様に夢中でろくに挨拶は返って来なかった。
私のことなどいないかのようにノエル様に詰め寄っている。
「えーっ!?」
「本当に婚約なさったんですか?」
彼女たちは残念そうな声をあげるが、その言い方や表情はどこか演技くさかった。
きっと私が『生贄』の婚約者であり、いずれ婚約破棄されることを知っているからだろう。
その証拠に、彼女たちの私を見る目はどこか嘲るような、また哀れみが含まれたものだった。
「あ! そうだ!」
令嬢の中の一人が声を上げた。
「せっかくですから踊っていってはいかがでしょうか!」
その令嬢の提案に対し、他の令嬢は次々にそれを肯定した。
「私もそれが良いと思いますわ! 婚約してから初めてのパーティーですし!」
「私たち、ノエル様が踊っているところを見たことがありませんもの!」
「私も見てみたいですわ!」
なぜ急にそんなことを勧めてきたのか、と考えいたが彼女たちの目を見てすぐに意図を理解した。
彼女たちの目には私に対しての怒りや陥れようとしている色が見えた。
私が注目される状況にすることで私が何かミスをすればそれで良し、しなくてもそれで良し、ということだろう。
『生贄』として婚約させられたのは可哀想だけど、それでもノエル様の隣に婚約者として立っているのはムカつくものはムカつくということだろうか。
ただ、あくまでも彼女たちの提案は普通の範疇だし、それにあまりにダンスを断るのもそれはそれで婚約しているという建前上よろしくない。
つまりダンスは踊らなければならないということだ。
あからさまな彼女たちに対してノエル様は若干呆れた様子を見せながらも、私に向き直って手を差し伸べてきた。
「そうですね。リナリア、私と一曲お相手願えますか?」
「はい。ノエル様」
ノエル様の差し出してきた手を私は取る。
ゆっくりとノエル様が歩き出したので私はそれについて行く。
ノエル様についていきながら私は緊張を抑えていた。
(大丈夫。練習したんだからしっかり踊れば大丈夫……!)
そして広場の中心へと出てきた。
たった今ちょうど一曲終わったようで、今まで踊っていたペアが戻ってくる。
「準備はできましたか」
「はい」
ノエル様の合図に合わせて私は広場の中心へと入った。
こういった場では一番位が高い人物が真ん中で踊るので、私とノエル様が中心で踊ることになる。
中心は一番目立つ場所で、注目を浴びる場所だとアンナが言っていた。
その言葉の通り中心に立つと視線が注がれているのが分かった。
噂の『生贄』の婚約者がどんなものか皆興味を持っているのだろう。
それ故に失敗はできない。
私は軽く息を吐いた。
曲が始まった。
(いち、に……)
幸い曲のテンポはゆったりとしていて、比較的踊りやすかった。
ノエル様の足を踏まないようにだけ気を配りながら私は踊る。
その時、ふとノエル様と目が合った。
するとノエル様はふっと表情を緩めた。
それはさっきの令嬢たちに浮かべていた笑顔とは違う、心の底から笑っている優しい微笑みだった。
私はノエル様がその表情を見せてくれるぐらい心を許してくれていることが嬉しくて、つい釣られて笑顔になった。
くるりくるりと私たちは回る。
そして曲も最後へと差し掛かってきた時。
気を抜いてしまったのだろう。私は足をもつれさせてしまった。
「え──」
倒れる、と思った。
しかしその瞬間、ノエル様が私を抱き止める。
曲が終わり、拍手が周りから聞こえてきた。
「大丈夫ですか」
「はい……」
ノエル様とばっちり目が合う。
その青い瞳に吸い込まれそうになる。
ノエル様の息遣いが聞こえて来そうなくらいその顔が近くに来ている。
周囲の音が聞こえなくなり、私の鼓動の音だけが聞こえてくる。
「戻りましょう」
その一言で私は引き戻された。
「は、はい!」
ノエル様の腕をとって、まだ聞こえてくる自分の心臓の音を抑えながら人の中へと戻ってきた。
「頑張りましたね」
「はい、ありがとうございます」
戻ってきたとん、ノエル様が私のことを褒めてくれた。
私は笑顔でお礼を言う。
するとさっきの令嬢たちが駆け寄ってきた。
「素晴らしかったですわ!」
「初めてノエル様が踊っているところを見れて光栄です!」
「私はそれよりもノエル様の見せた表情がとても好きです!」
「ええ! あの表情を引き出してくれたリナリア様には感謝の念に堪えませんわ!」
「ありがとうございますリナリア様!」
彼女たちは次々に私へとお礼を述べていった。
何故かは分からないが、彼女たちの表情はさっきまでとは打って変わり私へ感謝を向けていた。
一瞬演技ではないのかと思ったが、興奮した様子で私にお礼を言っている彼女達を見て演技でないことが分かった。
まだ知らぬノエル様の表情を引き出したことが高評価に繋がったようだった。
最初は彼女たちの変わりように少し驚いていたが、感謝をされるのは嬉しかった。
「そう言えば、リナリア様のその髪はとてもお綺麗ですね」
「私も思っていました。こんなに綺麗な白金色の髪は見たことがありません」
返事をしたかったが不用意に話さないように言われていたので、返事を返していいのかノエル様を見る。
するとノエル様が頷いたので私は返事をした。
「ありがとうございます。これは母からの遺伝で……」
私はまるで友達が一気に沢山できたような気分で彼女達と話していた。
そんな時。
「これはこれは、素晴らしいですな」
その雰囲気を引き裂くように誰かが話しかけてきた。
途端に楽器の音が聞こえてきた。それに加えて話し声も。
会場の中はオレンジ色の照明で照らされ、息の詰まるような空気が充満していた。
「リナリア、私についてきてください」
「はい……!」
耳元で囁かれ心臓が跳ね上がりつつも私は公爵様の歩みについていく。
広間の中を歩いているとヒソヒソと話している声が聞こえて来た。
『ほら、あれが……』
『噂の……』
公爵様の言っていた通り、私のことは知れ渡っているようだ。
全方向から視線を感じながらノエル様について行っているとノエル様が立ち止まった。
「ネイジュ公爵様!」
「お待ちしていました!」
何だろう、と思っていると数人の令嬢が駆け寄ってきてたちまちノエル様が囲まれた。
どうやらノエル様は彼女たちを見て立ち止まったようだ。
「公爵様、今日も素敵です!」
「噂でもしかしたら今日来ると伺っていたのですが、本当にいらっしゃったのですね!」
彼女たちはノエル様を皆恋する乙女の瞳で見上げている。
本人も言っていたが、やっぱりノエル様は社交界ではモテモテみたいだ。
「この方はどなたですか……?」
そしてすぐに彼女たちはノエル様の隣に立っている私の存在に気づき誰なのかを質問した。
皆のアイドルであるノエル様に見知らぬ女がついているのが気になるのだろう。
「彼女は私の婚約者です」
ノエル様は取り繕った笑みをニッコリと浮かべて彼女たちにそう言った。
普通ならノエル様の優しそうな笑顔を見たらこれが本当だと思うだろうが、ノエル様と少なからず関わってきた私にはこの笑顔が壁を作っているのだことに気がついた。
(て、そんなことを考えてる場合じゃありません! 私も挨拶しないと!)
貴族社会においてまともに挨拶ができない人間は侮られてしまう。
「リナリア・マリヤックと申します。初めまして」
私は令嬢たちに対して挨拶をする。
屋敷でアンナと練習した通りの完璧な挨拶をしたのだが、彼女たちは目の前のノエル様に夢中でろくに挨拶は返って来なかった。
私のことなどいないかのようにノエル様に詰め寄っている。
「えーっ!?」
「本当に婚約なさったんですか?」
彼女たちは残念そうな声をあげるが、その言い方や表情はどこか演技くさかった。
きっと私が『生贄』の婚約者であり、いずれ婚約破棄されることを知っているからだろう。
その証拠に、彼女たちの私を見る目はどこか嘲るような、また哀れみが含まれたものだった。
「あ! そうだ!」
令嬢の中の一人が声を上げた。
「せっかくですから踊っていってはいかがでしょうか!」
その令嬢の提案に対し、他の令嬢は次々にそれを肯定した。
「私もそれが良いと思いますわ! 婚約してから初めてのパーティーですし!」
「私たち、ノエル様が踊っているところを見たことがありませんもの!」
「私も見てみたいですわ!」
なぜ急にそんなことを勧めてきたのか、と考えいたが彼女たちの目を見てすぐに意図を理解した。
彼女たちの目には私に対しての怒りや陥れようとしている色が見えた。
私が注目される状況にすることで私が何かミスをすればそれで良し、しなくてもそれで良し、ということだろう。
『生贄』として婚約させられたのは可哀想だけど、それでもノエル様の隣に婚約者として立っているのはムカつくものはムカつくということだろうか。
ただ、あくまでも彼女たちの提案は普通の範疇だし、それにあまりにダンスを断るのもそれはそれで婚約しているという建前上よろしくない。
つまりダンスは踊らなければならないということだ。
あからさまな彼女たちに対してノエル様は若干呆れた様子を見せながらも、私に向き直って手を差し伸べてきた。
「そうですね。リナリア、私と一曲お相手願えますか?」
「はい。ノエル様」
ノエル様の差し出してきた手を私は取る。
ゆっくりとノエル様が歩き出したので私はそれについて行く。
ノエル様についていきながら私は緊張を抑えていた。
(大丈夫。練習したんだからしっかり踊れば大丈夫……!)
そして広場の中心へと出てきた。
たった今ちょうど一曲終わったようで、今まで踊っていたペアが戻ってくる。
「準備はできましたか」
「はい」
ノエル様の合図に合わせて私は広場の中心へと入った。
こういった場では一番位が高い人物が真ん中で踊るので、私とノエル様が中心で踊ることになる。
中心は一番目立つ場所で、注目を浴びる場所だとアンナが言っていた。
その言葉の通り中心に立つと視線が注がれているのが分かった。
噂の『生贄』の婚約者がどんなものか皆興味を持っているのだろう。
それ故に失敗はできない。
私は軽く息を吐いた。
曲が始まった。
(いち、に……)
幸い曲のテンポはゆったりとしていて、比較的踊りやすかった。
ノエル様の足を踏まないようにだけ気を配りながら私は踊る。
その時、ふとノエル様と目が合った。
するとノエル様はふっと表情を緩めた。
それはさっきの令嬢たちに浮かべていた笑顔とは違う、心の底から笑っている優しい微笑みだった。
私はノエル様がその表情を見せてくれるぐらい心を許してくれていることが嬉しくて、つい釣られて笑顔になった。
くるりくるりと私たちは回る。
そして曲も最後へと差し掛かってきた時。
気を抜いてしまったのだろう。私は足をもつれさせてしまった。
「え──」
倒れる、と思った。
しかしその瞬間、ノエル様が私を抱き止める。
曲が終わり、拍手が周りから聞こえてきた。
「大丈夫ですか」
「はい……」
ノエル様とばっちり目が合う。
その青い瞳に吸い込まれそうになる。
ノエル様の息遣いが聞こえて来そうなくらいその顔が近くに来ている。
周囲の音が聞こえなくなり、私の鼓動の音だけが聞こえてくる。
「戻りましょう」
その一言で私は引き戻された。
「は、はい!」
ノエル様の腕をとって、まだ聞こえてくる自分の心臓の音を抑えながら人の中へと戻ってきた。
「頑張りましたね」
「はい、ありがとうございます」
戻ってきたとん、ノエル様が私のことを褒めてくれた。
私は笑顔でお礼を言う。
するとさっきの令嬢たちが駆け寄ってきた。
「素晴らしかったですわ!」
「初めてノエル様が踊っているところを見れて光栄です!」
「私はそれよりもノエル様の見せた表情がとても好きです!」
「ええ! あの表情を引き出してくれたリナリア様には感謝の念に堪えませんわ!」
「ありがとうございますリナリア様!」
彼女たちは次々に私へとお礼を述べていった。
何故かは分からないが、彼女たちの表情はさっきまでとは打って変わり私へ感謝を向けていた。
一瞬演技ではないのかと思ったが、興奮した様子で私にお礼を言っている彼女達を見て演技でないことが分かった。
まだ知らぬノエル様の表情を引き出したことが高評価に繋がったようだった。
最初は彼女たちの変わりように少し驚いていたが、感謝をされるのは嬉しかった。
「そう言えば、リナリア様のその髪はとてもお綺麗ですね」
「私も思っていました。こんなに綺麗な白金色の髪は見たことがありません」
返事をしたかったが不用意に話さないように言われていたので、返事を返していいのかノエル様を見る。
するとノエル様が頷いたので私は返事をした。
「ありがとうございます。これは母からの遺伝で……」
私はまるで友達が一気に沢山できたような気分で彼女達と話していた。
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