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21話 花園にて
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私は今日は屋敷の中にある庭園に散歩しに来ていた。
初日に何となく目に入っていたのだがなかなか機会が作れず、今日ようやくここへとやって来た。
さすが公爵家の屋敷と言うべきか、庭園は広くさまざまな木や花が綺麗に手入れされていた。
「わぁ、凄いですねアンナさん!」
「そうね。庭師の人が毎日手入れしてるからね」
「ん? ここは……」
そして庭園の中を歩いていると椅子とテーブルが用意された場所を発見した。
生垣で周囲からの視線が遮られており、まるで秘密の花園みたいだ。
「すごく綺麗で雰囲気が良いですね!」
「せっかくですからここでお茶でもしたら?」
「え? いいんですか」
「別に大丈夫よ。あんたは公爵様の婚約者なのよ? じゃあちょっと紅茶とお菓子の準備をしてくるから待ってて」
そう言ってアンナはすぐに屋敷へと戻っていった。
私はしょうがなく椅子に座って待つことにした。
アンナは言葉の通りすぐに帰ってきて紅茶とちょっとしたお菓子を持ってきた。
と言ってもこのお菓子も私が今まで食べたことの無いような値段がするのだろうけれど。
私はアンナが淹れてくれた紅茶を飲む。
「せっかくですからアンナさんも一緒に紅茶をお飲みしませんか? 美味しいお菓子もありますし」
「ダメよ。今はメイドとして給仕してるんだから」
一人で紅茶を飲むのも少し寂しいのでアンナを誘ってみたのだが返事は連れないものだった。
少し寂しいがこればっかりはしょうがないので立ったままのアンナと雑談をしながら紅茶を飲む。
「……前々から思ってたけど、テーブルマナーはいいのよね」
「そうですね。十歳までに基本的な教育は受けていたのと、義妹を教育するためにやってきた家庭教師の先生が私の境遇を見かねてこっそり教えてくれたので、テーブルマナーなどはできます」
「へえ……」
「まあ、その先生もそれがバレて解雇されちゃったんですけどね」
「うわぁ……いつ聞いてもやばいわね、あんたの実家」
「はい、こうやって抜け出せたのは本当に幸運でした」
「私もそう思うわ」
そんな風にアンナと雑談をしていると、花園の中に誰かがやって来た。
「公爵様?」
やって来たのは公爵様だった。
公爵様は私を見て少し驚いていたがすぐに何も気にせずに椅子に座った。
「公爵様はどうしてここへ?」
「昼食の後はたまにここで紅茶を飲むので」
「申し訳ありません、今すぐに移動します」
公爵様の心休まる時間を邪魔しては悪いと椅子から立ちあがろうとしたのだが、公爵様はそれを制止した。
「いえ、必要ありません。別に気にしませんので。アンナ、紅茶を淹れてくれますか」
「そ、そうですか……」
「かしこまりました」
私は椅子へと座り直す。
(あれ? 何だか雰囲気が柔らかくなってる……?)
公爵様の態度は以前に比べてどこか柔らかくなり、親しみやすい雰囲気になっている気がした。
アンナは公爵様の言われた通りに紅茶を淹れる。
以前のことがあったのでこの二人が顔を合わせるのは少しどうなのだろうと思っていたが、どうやら二人は割り切っているらしく、どこ吹く風だ。
心配事が杞憂に終わったことに安堵する。
そして私は本をめくり、公爵様は静かに紅茶を飲む。
静かな時間が流れていた。
「その……」
公爵様が話しかけてきた。
私は本を閉じて顔を上げる。
「クッキー、ありがとうございました」
「え? お食べになったのですか?」
「毒見をしたうえでですが」
私はてっきりあの後捨てられたと思っていたので、公爵様がクッキーを食べてくれたことが意外だった。
「その……昨日は申し訳ありません。せっかく作っていただいたのに失礼なことを……」
「いっ、いえ! 毒見のことも考えずに急に渡した私もわるいですから!」
公爵様が頭を下げる。
私は慌てて否定した。
「お口に合いましたか?」
「ええ……とても美味しかったです」
「それは良かったです!」
クッキーに限らず、丹精込めて作ったものを美味しいと言ってもらえるのはやっぱり嬉しい。
実家では誰も「美味しい」なんて言ってくれなかったから余計に嬉しかった。
「どんなところが美味しかったですか?」
「ど、どんなところ?」
「はい!」
今まで作ったものの味を尋ねることなんて出来なかったので、この機会に聞いておこうと思った。
公爵様は上をむいて考えながら答える。
「そ、そうですね……。私はこれまで砂糖が大量に使われたものばかり食べて来ましたが、リナリア嬢のクッキーはとても優しい味で、それでいて何度も食べたくなるような、そんな味でした」
「何度も食べたくなる味……」
思ったよりも褒めてもらえて私は少し照れる。
公爵様は深く考えずに発言していたのか、自分の言葉に気がつくと口を抑えた。
「あっ、いえこれは……」
「またお作り致しますね」
「……お願いします」
また食べたいと言われたことが嬉しくて私は笑顔を隠しきれない。
「アンナさん……? どうかしましたか」
「いえ何でも」
後ろを見るとアンナがニヤニヤしていた。
何だろうと思って尋ねてみたが誤魔化されてしまった。
なぜそんなにも満たされたような表情をしているのだろうか。
「……」
「公爵様? どうかなさいましたか?」
「いえ、何でもありません」
気がつけば公爵様が私とアンナを交互にみていたので何かあったか尋ねてみたが、公爵様は頭を振った。
「それでは、これだけ言っておきたかったので」
公爵様はそう言って椅子から立ちあがろうとした。
「あ、あの!」
私はそれを引き止めた。
公爵様にお願いしたいことがあったからだ。
しかしその前に聞いて置かなければならないことがある。
「少々お聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですけど」
「では少し失礼します」
私は公爵様の耳元まで口を寄せる。
「小説の件についてですが、秘密にしておいた方がよろしいでしょうか?」
「……」
「あれ? 公爵様、お顔が赤いですが大丈夫ですか?」
顔を離すと公爵様の顔が少し赤くなっていたので、私は公爵様に大丈夫か確認した。
すると公爵様はハッとして咳払いをすると元の表情に戻った。
「大丈夫です。あなたの言葉でもう隠さないことにしたので」
「それは良かったです」
私は秘密にする必要が無いことに安心して、改めて公爵様へお願いをした。
「お勧めの小説、また教えていただけませんか? 公爵様のおすすめの小説、もっと読んでみたいです!」
私は純粋な気持ちでそう尋ねた。
公爵様も穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
「今度、本を持っていきます」
「はい!」
「何か好みなどがあれば聞きますが」
「そうですね……私は前と同じく恋愛小説を読んで見たいです」
「恋愛ものですね。分かりました」
「ありがとうございます」
「それでは本当にこれで失礼いたします。これから仕事ですので」
そう言って公爵様は椅子から立ち上がったところで、何かを思い出した。
「ああ、そうだ。言い忘れていたことがありました」
「言い忘れていたこと?」
「はい、あなたには今度私と一緒に社交界に出てもらいます。
「…………え!?」
社交界!?
初日に何となく目に入っていたのだがなかなか機会が作れず、今日ようやくここへとやって来た。
さすが公爵家の屋敷と言うべきか、庭園は広くさまざまな木や花が綺麗に手入れされていた。
「わぁ、凄いですねアンナさん!」
「そうね。庭師の人が毎日手入れしてるからね」
「ん? ここは……」
そして庭園の中を歩いていると椅子とテーブルが用意された場所を発見した。
生垣で周囲からの視線が遮られており、まるで秘密の花園みたいだ。
「すごく綺麗で雰囲気が良いですね!」
「せっかくですからここでお茶でもしたら?」
「え? いいんですか」
「別に大丈夫よ。あんたは公爵様の婚約者なのよ? じゃあちょっと紅茶とお菓子の準備をしてくるから待ってて」
そう言ってアンナはすぐに屋敷へと戻っていった。
私はしょうがなく椅子に座って待つことにした。
アンナは言葉の通りすぐに帰ってきて紅茶とちょっとしたお菓子を持ってきた。
と言ってもこのお菓子も私が今まで食べたことの無いような値段がするのだろうけれど。
私はアンナが淹れてくれた紅茶を飲む。
「せっかくですからアンナさんも一緒に紅茶をお飲みしませんか? 美味しいお菓子もありますし」
「ダメよ。今はメイドとして給仕してるんだから」
一人で紅茶を飲むのも少し寂しいのでアンナを誘ってみたのだが返事は連れないものだった。
少し寂しいがこればっかりはしょうがないので立ったままのアンナと雑談をしながら紅茶を飲む。
「……前々から思ってたけど、テーブルマナーはいいのよね」
「そうですね。十歳までに基本的な教育は受けていたのと、義妹を教育するためにやってきた家庭教師の先生が私の境遇を見かねてこっそり教えてくれたので、テーブルマナーなどはできます」
「へえ……」
「まあ、その先生もそれがバレて解雇されちゃったんですけどね」
「うわぁ……いつ聞いてもやばいわね、あんたの実家」
「はい、こうやって抜け出せたのは本当に幸運でした」
「私もそう思うわ」
そんな風にアンナと雑談をしていると、花園の中に誰かがやって来た。
「公爵様?」
やって来たのは公爵様だった。
公爵様は私を見て少し驚いていたがすぐに何も気にせずに椅子に座った。
「公爵様はどうしてここへ?」
「昼食の後はたまにここで紅茶を飲むので」
「申し訳ありません、今すぐに移動します」
公爵様の心休まる時間を邪魔しては悪いと椅子から立ちあがろうとしたのだが、公爵様はそれを制止した。
「いえ、必要ありません。別に気にしませんので。アンナ、紅茶を淹れてくれますか」
「そ、そうですか……」
「かしこまりました」
私は椅子へと座り直す。
(あれ? 何だか雰囲気が柔らかくなってる……?)
公爵様の態度は以前に比べてどこか柔らかくなり、親しみやすい雰囲気になっている気がした。
アンナは公爵様の言われた通りに紅茶を淹れる。
以前のことがあったのでこの二人が顔を合わせるのは少しどうなのだろうと思っていたが、どうやら二人は割り切っているらしく、どこ吹く風だ。
心配事が杞憂に終わったことに安堵する。
そして私は本をめくり、公爵様は静かに紅茶を飲む。
静かな時間が流れていた。
「その……」
公爵様が話しかけてきた。
私は本を閉じて顔を上げる。
「クッキー、ありがとうございました」
「え? お食べになったのですか?」
「毒見をしたうえでですが」
私はてっきりあの後捨てられたと思っていたので、公爵様がクッキーを食べてくれたことが意外だった。
「その……昨日は申し訳ありません。せっかく作っていただいたのに失礼なことを……」
「いっ、いえ! 毒見のことも考えずに急に渡した私もわるいですから!」
公爵様が頭を下げる。
私は慌てて否定した。
「お口に合いましたか?」
「ええ……とても美味しかったです」
「それは良かったです!」
クッキーに限らず、丹精込めて作ったものを美味しいと言ってもらえるのはやっぱり嬉しい。
実家では誰も「美味しい」なんて言ってくれなかったから余計に嬉しかった。
「どんなところが美味しかったですか?」
「ど、どんなところ?」
「はい!」
今まで作ったものの味を尋ねることなんて出来なかったので、この機会に聞いておこうと思った。
公爵様は上をむいて考えながら答える。
「そ、そうですね……。私はこれまで砂糖が大量に使われたものばかり食べて来ましたが、リナリア嬢のクッキーはとても優しい味で、それでいて何度も食べたくなるような、そんな味でした」
「何度も食べたくなる味……」
思ったよりも褒めてもらえて私は少し照れる。
公爵様は深く考えずに発言していたのか、自分の言葉に気がつくと口を抑えた。
「あっ、いえこれは……」
「またお作り致しますね」
「……お願いします」
また食べたいと言われたことが嬉しくて私は笑顔を隠しきれない。
「アンナさん……? どうかしましたか」
「いえ何でも」
後ろを見るとアンナがニヤニヤしていた。
何だろうと思って尋ねてみたが誤魔化されてしまった。
なぜそんなにも満たされたような表情をしているのだろうか。
「……」
「公爵様? どうかなさいましたか?」
「いえ、何でもありません」
気がつけば公爵様が私とアンナを交互にみていたので何かあったか尋ねてみたが、公爵様は頭を振った。
「それでは、これだけ言っておきたかったので」
公爵様はそう言って椅子から立ちあがろうとした。
「あ、あの!」
私はそれを引き止めた。
公爵様にお願いしたいことがあったからだ。
しかしその前に聞いて置かなければならないことがある。
「少々お聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですけど」
「では少し失礼します」
私は公爵様の耳元まで口を寄せる。
「小説の件についてですが、秘密にしておいた方がよろしいでしょうか?」
「……」
「あれ? 公爵様、お顔が赤いですが大丈夫ですか?」
顔を離すと公爵様の顔が少し赤くなっていたので、私は公爵様に大丈夫か確認した。
すると公爵様はハッとして咳払いをすると元の表情に戻った。
「大丈夫です。あなたの言葉でもう隠さないことにしたので」
「それは良かったです」
私は秘密にする必要が無いことに安心して、改めて公爵様へお願いをした。
「お勧めの小説、また教えていただけませんか? 公爵様のおすすめの小説、もっと読んでみたいです!」
私は純粋な気持ちでそう尋ねた。
公爵様も穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
「今度、本を持っていきます」
「はい!」
「何か好みなどがあれば聞きますが」
「そうですね……私は前と同じく恋愛小説を読んで見たいです」
「恋愛ものですね。分かりました」
「ありがとうございます」
「それでは本当にこれで失礼いたします。これから仕事ですので」
そう言って公爵様は椅子から立ち上がったところで、何かを思い出した。
「ああ、そうだ。言い忘れていたことがありました」
「言い忘れていたこと?」
「はい、あなたには今度私と一緒に社交界に出てもらいます。
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社交界!?
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