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2話
しおりを挟む私とレイが婚約したのは、ちょうど五年前のことだ。
私はまだ十五歳で、レイは十七歳だった。
私達二人は奇跡的な出会いをした。
貴族の通う学園に入ったばかりで、私は自分の向かうべき教室が分からず、学園の中で迷ってしまった。
その時に颯爽と現れ手を貸してくれたのがレイだった。
同じ十代にしては落ち着いたレイの物腰に、私はすぐに恋に落ちた。
その後、レイと婚約するという話が持ち上がって、私は泣いて喜んだ程だ。
二人で一緒に学園生活を送れたのはたった一年程だったが、その時は今でも一番幸せな記憶として私の中に眠っている。
そして私が学園を卒業した後、遂に二人で暮らすことになった。
新しい屋敷を購入し、二人だけの生活が始まった。
二人だけの生活は、とても幸せだった。
レイが忙しく帰れない日もあったが、ほぼ毎日夜遅くまで寝室で語り合った。
そんな生活が一年続いた後。
レイへ北部へ行くことが命じられた。
仕方のないことだった。
他の兵士も義務として二年間従事している以上、騎士団長の息子であるからといって贔屓するわけにはいかない。
加えて、レイ自体も自分だけ贔屓されることを望んでいなかった。
将来騎士団長になる以上、他の兵士より楽をしてはいけない、というのがレイの考えだった。
私は泣く泣く、レイを北部へと見送った。
ボロボロと泣いている私を見て、レイは毎日手紙を書くことを約束した。
そしてその約束は一年間、破られることなく毎日続いている。
そして私は最近、上機嫌だった。
なぜならば、もうすぐレイが休暇で帰ってくるからだ。
北部へ行っている者には、一年に一回、二週間の長期休暇が与えられる。
レイも手紙でそろそろ帰れる、と書いていたため、私はレイが帰ってくるのを楽しみにしていた。
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