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「なっ……! 何なのよ小娘って! 失礼じゃないの?」
そのメリーの国王に対する不躾な言い方に、空気が凍りついた。
国王は一層深くためいきをついて、近くの衛兵に命令した。
「貴様こそ誰に向かって口を聞いておる。私は国王だぞ。おい、こいつを会場から追い出せ。国王である私に対する不躾な態度、あとで罰する」
「触らないで! 私を誰だと思っているのよ! エドワード様の婚約者なのよ!」
会場からメリーが力づくで出され、エドワードがポツンと残った。
国王は肘をついてたエドワードを見下ろす。
「エドワードよ。お前にはしっかり聖女の仕事を説明したはずだが?」
エドワードはメリーの方を呆然と見ていたが、国王の言葉にハッとして向き直った。
「いえ、ですから聖女の仕事は式典と神への祈りでしょう? こんなこと誰でも──」
「この馬鹿者がっ!!!」
国王の怒声が会場に響き渡った。
エドワードはそれにすっかり萎縮してしまったような表情になる。
「それが大変なのだ、と何度も言い聞かせたであろうが!」
国王は立ち上がるほどにエドワードに怒鳴り散らしていたが、一息をついて呼吸を整えると、王座にかけ直した。
「式典では、聖女の行動はすべて決められておる。ちょっとした仕草であっても、だ。それを何時間にもかけて行う式典で、一度も間違えてはならんのだぞ? この意味がわかるか?」
国王の説明にエドワードだけでなく、会場の全員が息を呑んだ。
「神への祈りにしてもそうだ。神聖なる神への供物である大量の魔力を消費しながら長時間祈り続けなければならない。この苦労がわからんのか?」
何も言い返せなくなったエドワードが俯いた。
「それに聖女には一朝一夕でなれるものではない。何年もフランの婚約者として傍で見ていたなら分かるはずだ。フランは小さい頃から何年も修行してきたのだよ。辛いな。それが分からん貴様はもういい。──廃嫡とする」
「え?」
「聞こえんかったか? 廃嫡とすると言ったのだ。お前にはほとほと呆れた。もう国を任せようとは思わん。ここから出ていけ。おい、こいつも連れて行け」
「なっ……! ふざけるな! この僕が廃嫡!?」
国王の命令で、多少躊躇しながらもエドワードの腕を掴んだ。
そのことにエドワードが激高する。
「触るな貴様! 何をしている! 僕は王太子だぞ!」
「あなたは今廃嫡となりました。それに国王の命令の方が優先されます!」
「嫌だ! 僕はまだ廃嫡されてない! 父上! まだやれます。機会を! もう一度チャンスをください!」
「くどい。もう何度も与えている。連れて行け」
「くそぉぉぉぉおおおおおっ!」
エドワードは苦悶の声を上げながら引きずられて、会場から連れ出されていった。
そのメリーの国王に対する不躾な言い方に、空気が凍りついた。
国王は一層深くためいきをついて、近くの衛兵に命令した。
「貴様こそ誰に向かって口を聞いておる。私は国王だぞ。おい、こいつを会場から追い出せ。国王である私に対する不躾な態度、あとで罰する」
「触らないで! 私を誰だと思っているのよ! エドワード様の婚約者なのよ!」
会場からメリーが力づくで出され、エドワードがポツンと残った。
国王は肘をついてたエドワードを見下ろす。
「エドワードよ。お前にはしっかり聖女の仕事を説明したはずだが?」
エドワードはメリーの方を呆然と見ていたが、国王の言葉にハッとして向き直った。
「いえ、ですから聖女の仕事は式典と神への祈りでしょう? こんなこと誰でも──」
「この馬鹿者がっ!!!」
国王の怒声が会場に響き渡った。
エドワードはそれにすっかり萎縮してしまったような表情になる。
「それが大変なのだ、と何度も言い聞かせたであろうが!」
国王は立ち上がるほどにエドワードに怒鳴り散らしていたが、一息をついて呼吸を整えると、王座にかけ直した。
「式典では、聖女の行動はすべて決められておる。ちょっとした仕草であっても、だ。それを何時間にもかけて行う式典で、一度も間違えてはならんのだぞ? この意味がわかるか?」
国王の説明にエドワードだけでなく、会場の全員が息を呑んだ。
「神への祈りにしてもそうだ。神聖なる神への供物である大量の魔力を消費しながら長時間祈り続けなければならない。この苦労がわからんのか?」
何も言い返せなくなったエドワードが俯いた。
「それに聖女には一朝一夕でなれるものではない。何年もフランの婚約者として傍で見ていたなら分かるはずだ。フランは小さい頃から何年も修行してきたのだよ。辛いな。それが分からん貴様はもういい。──廃嫡とする」
「え?」
「聞こえんかったか? 廃嫡とすると言ったのだ。お前にはほとほと呆れた。もう国を任せようとは思わん。ここから出ていけ。おい、こいつも連れて行け」
「なっ……! ふざけるな! この僕が廃嫡!?」
国王の命令で、多少躊躇しながらもエドワードの腕を掴んだ。
そのことにエドワードが激高する。
「触るな貴様! 何をしている! 僕は王太子だぞ!」
「あなたは今廃嫡となりました。それに国王の命令の方が優先されます!」
「嫌だ! 僕はまだ廃嫡されてない! 父上! まだやれます。機会を! もう一度チャンスをください!」
「くどい。もう何度も与えている。連れて行け」
「くそぉぉぉぉおおおおおっ!」
エドワードは苦悶の声を上げながら引きずられて、会場から連れ出されていった。
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うわ!間違えてます!報告ありがとうございます!