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2話
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「……エドワード様。何を仰られているのですか?」
両親の方に視線を向けたが、両親は動く気配がない。
どうやらいつも通り両親は一切何もしないつもりらしい。
「ああ、僕は真実の愛を見つけた。だから君と婚約を破棄させてもらう」
私はエドワードに説明を求めたが、エドワードが口にしたのは説明にすらなっていないものだった。
そしてエドワードの中ではもう婚約を破棄するのは決定事項になっているようだ。
やはり、エドワードは他人のことなど全く考えていないようだ。
しかも、なぜ私が婚約を破棄される立場なのだろうか。
真実の愛と美化しているが、結局のところただの浮気ではないか。
私は内心呆れ返りながらもエドワードに聞いた。
「はぁ……、お相手は?」
「聖女のくせにそんな事も分からないのか? メリーに決まっているだろう」
エドワードが私を馬鹿にしたように鼻で笑った。
いや、誤解が生まれないよう確認する為に聞いただけなんですけど。
そんな事も分からないのかこの王子は。
「それに、君はメリーのことを虐めていたのだろう!」
「ああっ、エドワード様! いいんです! お姉様はきっと疲れていただけなんです!」
「君は優しいねメリー。けど、僕は自分の愛する人を傷つけられるのが許せないんだ」
「エドワード様……!」
またメリーのお得意の嘘だ。
味方を作るのが上手いメリーは、私の言い分など聞かずに責め立てるように仕向けるのだろう。
私は半分諦めながらも、冤罪を否定する。
それに対してメリーは大声で喚き散らした。
「いえ、私はそんな事をしたことはありません」
「エドワード様! お姉様は嘘をついています! いつもそうなのです。ささいなことで私を責め立てて、自分の非は認めない……」
「なんて奴なんだ……! それが聖女のすることか!」
案の定、私の言葉は全く聞き入れられない。
メリーはわざとらしく涙を拭う。
「お姉様! 嘘をつくのはもう止めてください!」
「いや、さっきからやってないと言ってますが。それにまず証拠がないじゃないですか」
「いいえ、お姉様。ちゃんと証人がいます!」
メリーがそう言うとずらりと周囲から大勢の人が出てきた。
その顔の大部分には見覚えがあった。
メリーの取り巻きたちだ。
「私もその人からいじめられていました!」
「私もよ! 公爵家に逆らうつもりか、って脅されたわ!」
「あたしなんか公衆の面前で中傷されたわ!」
取り巻きたちはいやらしい笑みを浮かべ、デタラメを叫び続ける。
「もう罪を認めろ。フラン! 権力で脅すなんて貴族の風上にも置けない。君のしたことは許されないことだ!」
「いえ、ですから──」
「君との婚約を破棄する! さぁ、これにサインしろ! これが君に出来る唯一のことだ! しないならばこの国から追放する!」
エドワードが私に対して紙を突きつけて来た。
婚約を破棄するための書状だ。
どうやら証拠は証人だけのようだ。
私はあまりにも杜撰な証拠の提示の仕方に呆れた。
て言うか、今あなたは権力を使って脅しているんですけど。矛盾していませんか?
この時、私のエドワードに対しての愛着は全て無くなった。
浮気した上に、婚約者じゃない女の言葉を信じ込んで、私の話を聞かずに一歩的に罵声を浴びせたのだ。しかも権力を使って脅してまで婚約を破棄しようとしている。
私、こんな人と婚約していたのか。
結婚する前に知ることが出来てよかった。
国から追放されるわけにはいかない私はエドワードから紙を受け取って、サラサラとサインをした。
するとエドワードはそれをふんだくった。
「署名したな! これで君は罪を認めたようなものだ!」
「は?」
エドワードが私に鬼の首を取ったように書状を突きつけた。
署名したのは、しなかった場合この国から追放されると脅されたからだ。
なのに、それで署名をしたから罪を認めたことにするなんて無茶苦茶だ。
「お姉様、ようやく罪をお認めになったのですね。貴方に苦しめられた人の気持ちが理解できましたか?」
「ああ、そうだフラン。君は許されない事をした。残念だが、君にもう聖女を任せておくことは出来ない……」
「お姉様。あなたから、聖女を剥奪します」
両親の方に視線を向けたが、両親は動く気配がない。
どうやらいつも通り両親は一切何もしないつもりらしい。
「ああ、僕は真実の愛を見つけた。だから君と婚約を破棄させてもらう」
私はエドワードに説明を求めたが、エドワードが口にしたのは説明にすらなっていないものだった。
そしてエドワードの中ではもう婚約を破棄するのは決定事項になっているようだ。
やはり、エドワードは他人のことなど全く考えていないようだ。
しかも、なぜ私が婚約を破棄される立場なのだろうか。
真実の愛と美化しているが、結局のところただの浮気ではないか。
私は内心呆れ返りながらもエドワードに聞いた。
「はぁ……、お相手は?」
「聖女のくせにそんな事も分からないのか? メリーに決まっているだろう」
エドワードが私を馬鹿にしたように鼻で笑った。
いや、誤解が生まれないよう確認する為に聞いただけなんですけど。
そんな事も分からないのかこの王子は。
「それに、君はメリーのことを虐めていたのだろう!」
「ああっ、エドワード様! いいんです! お姉様はきっと疲れていただけなんです!」
「君は優しいねメリー。けど、僕は自分の愛する人を傷つけられるのが許せないんだ」
「エドワード様……!」
またメリーのお得意の嘘だ。
味方を作るのが上手いメリーは、私の言い分など聞かずに責め立てるように仕向けるのだろう。
私は半分諦めながらも、冤罪を否定する。
それに対してメリーは大声で喚き散らした。
「いえ、私はそんな事をしたことはありません」
「エドワード様! お姉様は嘘をついています! いつもそうなのです。ささいなことで私を責め立てて、自分の非は認めない……」
「なんて奴なんだ……! それが聖女のすることか!」
案の定、私の言葉は全く聞き入れられない。
メリーはわざとらしく涙を拭う。
「お姉様! 嘘をつくのはもう止めてください!」
「いや、さっきからやってないと言ってますが。それにまず証拠がないじゃないですか」
「いいえ、お姉様。ちゃんと証人がいます!」
メリーがそう言うとずらりと周囲から大勢の人が出てきた。
その顔の大部分には見覚えがあった。
メリーの取り巻きたちだ。
「私もその人からいじめられていました!」
「私もよ! 公爵家に逆らうつもりか、って脅されたわ!」
「あたしなんか公衆の面前で中傷されたわ!」
取り巻きたちはいやらしい笑みを浮かべ、デタラメを叫び続ける。
「もう罪を認めろ。フラン! 権力で脅すなんて貴族の風上にも置けない。君のしたことは許されないことだ!」
「いえ、ですから──」
「君との婚約を破棄する! さぁ、これにサインしろ! これが君に出来る唯一のことだ! しないならばこの国から追放する!」
エドワードが私に対して紙を突きつけて来た。
婚約を破棄するための書状だ。
どうやら証拠は証人だけのようだ。
私はあまりにも杜撰な証拠の提示の仕方に呆れた。
て言うか、今あなたは権力を使って脅しているんですけど。矛盾していませんか?
この時、私のエドワードに対しての愛着は全て無くなった。
浮気した上に、婚約者じゃない女の言葉を信じ込んで、私の話を聞かずに一歩的に罵声を浴びせたのだ。しかも権力を使って脅してまで婚約を破棄しようとしている。
私、こんな人と婚約していたのか。
結婚する前に知ることが出来てよかった。
国から追放されるわけにはいかない私はエドワードから紙を受け取って、サラサラとサインをした。
するとエドワードはそれをふんだくった。
「署名したな! これで君は罪を認めたようなものだ!」
「は?」
エドワードが私に鬼の首を取ったように書状を突きつけた。
署名したのは、しなかった場合この国から追放されると脅されたからだ。
なのに、それで署名をしたから罪を認めたことにするなんて無茶苦茶だ。
「お姉様、ようやく罪をお認めになったのですね。貴方に苦しめられた人の気持ちが理解できましたか?」
「ああ、そうだフラン。君は許されない事をした。残念だが、君にもう聖女を任せておくことは出来ない……」
「お姉様。あなたから、聖女を剥奪します」
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