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1話
しおりを挟む私、公爵令嬢フラン・キャロルの妹であるメリー・キャロルはとてもわがままだった。
私の持っているものは何でも欲しがり、自分の物をあげるのは極端に嫌った。
自分のお菓子は分けたくないのに、私が食べているお菓子は欲しがる。
ドレスやおもちゃも何もかもだ。
果てには私が誕生日に買って貰ったぬいぐるみまで。
私があげなかったら大声で泣き叫んで、私がいじめた、なんて根も葉もない事を言いふらす。
加えて、妹は昔から味方を増やすことが上手い。
私が何かあげるのを断ると、その後メリーは決まって誰か連れてきて仲間と一緒に私を責め立てた。
こうして、私のお気に入りは全て妹に奪われた。
しかし両親だけはこの時はまだメリーの振る舞いを窘め、私達を公平に扱ってくれた。
だが、それは私が十歳の頃《聖女》として選ばれた日から一層酷くなる。
聖女に選ばれたことと、私が長女であったことで、私に対して極端に厳しく接するようになった。
「聖女なんだから妹こわがままくらい我慢しなさい」
「あなたは聖女なんだからもっと広い心を持ちなさい」
こんな無茶苦茶なことを言い始めたのだ。
そして、どんなに頑張っても私のことを褒めてくれることは無くなった。
この時から私にはメリーの横暴から守ってくれる味方がいなくなった。
ドレスで着飾ったメリーが、質素な聖女の格好をした私から何もかもを奪っていった。
しだいに、私の部屋には贅沢品と呼べるものは全て無くなった。
何か手に入れる度にメリーに奪われ、聖女としても辛い仕事をこなさなければならない毎日。
そうして地獄のような一年を過ごした後、エドワード・レオンス王太子の誕生日パーティーで私とエドワードが婚約することが発表された。
その時だけは両親は私のことを褒めてくれた。
メリーは褒められている私のことを嫉妬して睨んでいた。
そして五年後、エドワードの誕生日パーティー。
「フラン! 突然ですまない」
エドワードはパーティー会場の真ん中でいきなり大声を出した。
なんだなんだ、と周りの注目が私とエドワードに集まる。
私は嫌な予感しかしなかった。
エドワードは昔からよく考えずに行動することが多い。
それで人に迷惑をかけても、微塵たりとも申し訳ないと思わないのだから質が悪い。
自分が王太子たがら、人は自分の思い通りに動くのが当然と思っているのだ。
しかも、今回はエドワードの横にメリーがいた。
メリーは人の婚約者であるのに関わらず、エドワードの腕にくっついている。
そしてエドワードは浮気者と罵られてもおかしくないのに、それを気にした様子は無い。
本格的に嫌な予感がしてきた。
「君との婚約を破棄する! 僕は真実の愛を見つけたんだ!」
「…………はぁ」
私はため息をつくのを我慢出来なかった。
本当にこの人は何を言っているのだろう……。
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