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 私、公爵令嬢フラン・キャロルの妹であるメリー・キャロルはとてもわがままだった。

 私の持っているものは何でも欲しがり、自分の物をあげるのは極端に嫌った。

 自分のお菓子は分けたくないのに、私が食べているお菓子は欲しがる。

 ドレスやおもちゃも何もかもだ。
 果てには私が誕生日に買って貰ったぬいぐるみまで。

 私があげなかったら大声で泣き叫んで、私がいじめた、なんて根も葉もない事を言いふらす。

 加えて、妹は昔から味方を増やすことが上手い。
 私が何かあげるのを断ると、その後メリーは決まって誰か連れてきて仲間と一緒に私を責め立てた。

 こうして、私のお気に入りは全て妹に奪われた。

 しかし両親だけはこの時はまだメリーの振る舞いを窘め、私達を公平に扱ってくれた。
 だが、それは私が十歳の頃《聖女》として選ばれた日から一層酷くなる。

 聖女に選ばれたことと、私が長女であったことで、私に対して極端に厳しく接するようになった。

「聖女なんだから妹こわがままくらい我慢しなさい」

「あなたは聖女なんだからもっと広い心を持ちなさい」

 こんな無茶苦茶なことを言い始めたのだ。
 そして、どんなに頑張っても私のことを褒めてくれることは無くなった。

 この時から私にはメリーの横暴から守ってくれる味方がいなくなった。

 ドレスで着飾ったメリーが、質素な聖女の格好をした私から何もかもを奪っていった。
 しだいに、私の部屋には贅沢品と呼べるものは全て無くなった。

 何か手に入れる度にメリーに奪われ、聖女としても辛い仕事をこなさなければならない毎日。

 そうして地獄のような一年を過ごした後、エドワード・レオンス王太子の誕生日パーティーで私とエドワードが婚約することが発表された。

 その時だけは両親は私のことを褒めてくれた。
 メリーは褒められている私のことを嫉妬して睨んでいた。

 そして五年後、エドワードの誕生日パーティー。

「フラン! 突然ですまない」

 エドワードはパーティー会場の真ん中でいきなり大声を出した。
 なんだなんだ、と周りの注目が私とエドワードに集まる。

 私は嫌な予感しかしなかった。

 エドワードは昔からよく考えずに行動することが多い。

 それで人に迷惑をかけても、微塵たりとも申し訳ないと思わないのだから質が悪い。
 自分が王太子たがら、人は自分の思い通りに動くのが当然と思っているのだ。

 しかも、今回はエドワードの横にメリーがいた。

 メリーは人の婚約者であるのに関わらず、エドワードの腕にくっついている。
 そしてエドワードは浮気者と罵られてもおかしくないのに、それを気にした様子は無い。

 本格的に嫌な予感がしてきた。

「君との婚約を破棄する! 僕は真実の愛を見つけたんだ!」

「…………はぁ」

 私はため息をつくのを我慢出来なかった。
 本当にこの人は何を言っているのだろう……。
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