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七話

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 本を借りに来ただけ、本を借りに来ただけだと心の中で繰り返し唱えた。


「まさか君から会いに来てくれるなんて、嬉しいな」

 フィオナはかなり動揺をしていた。
 普段キッチリとした恰好の彼は、寝衣であるガウンを着崩し胸元が大胆にはだけており正直目のやり場に困る。しかも細身だと思っていたが、意外と筋肉質で逞しい。
 
「もしかして、私の事が恋しくなってしまったのかい」
「違っーー」
「そうだ、お茶を淹れてあげよう」

 先程から「本を貸して頂けますか」と言い訳を繰り返しているが何時も調子でスルーされている。相変わらず脈略は皆無だと苦笑するしかない。

「今蜂蜜を入れてあげるからね。きっと甘くて美味しいよ」
「蜂蜜!」
 
 この瞬間、フィオナの頭の中から本の存在は消え去った。

 期待に満ちた表情を浮かべお茶の入ったカップを見つめる。
 彼が瓶に入った蜂蜜をたっぷりとスプーンで掬い、カップの中に入れてくれた。大好きな蜂蜜入りのお茶に一気に笑顔になってしまう。我ながら単純だがこればかりは仕方がない。

「ありがとうございます! 頂きーー」

 嬉々としてカップに手を付けるが、ある事に気が付き手を止めた。

「ローデヴェイク様は、お飲みにならないんですか?」
「うん、私は今は気分でないから」
「そうなんですね」

 瞬間彼の口角が何時にも増して上がって見えた気がしたが、深く考えずにカップに口を付けた。
 
「人生は一度きり。私は自らの欲望に忠実に、そして愛する人を獣の如く淫らに愛するのが座右の銘でね」

(座右の銘って、そう言うものでしたっけ……)

 小首を傾げながら彼の顔を窺い見ると、妖しさを孕む翡翠色の瞳と目が合った。瞬間、心臓が大きく脈を打つ。だが次の瞬間、彼の後ろの棚に置かれた猛毒の表記のある瓶が目に飛び込んできた。
 
(あの瓶は……)

 慌てて視線をテーブルの上の蜂蜜に向けると、まさかの同じ物だ。サッーと血の気が引いていく。

(え……ま、まさかこれ蜂蜜じゃなくて毒ーー)

「大丈夫だよ、毒なんて入ってないから」

 フィオナの様子に気が付いた彼は、まるで心を読んだ様に追い討ちを掛けるようにそう言う。余計に疑わしいがーー。

「媚薬しか入ってないから安心していいよ」
「媚薬っ⁉︎  ゴホッ‼︎」

(媚薬って何⁉︎)

 フィオナは慌てて吐き出そうとするが、何時の間にか至近距離に立っていた彼に手で口を塞がれてしまう。

「んっんっーー‼︎」

(飲んじゃった⁉︎)

「うん、良い子だ。ちゃんとごっくんできたね」

 耳元で囁かれ、彼の熱い吐息に身体が震えた。
 身体がおかしい。何処もかしこも熱くて仕方がない。思考が鈍り段々と息が上がるのが分かる。

「おっと、大丈夫かい。このままでは良くないから運んであげるね」

 軽々と持ち上げられ横抱きにされると、ベッドまで運ばれた。

「ぁっ……」

 力なく横たわるフィオナの上に、ローデヴェイクが覆い被さる。
 彼の手が頬を撫でただけで、ピクリと身体が勝手に反応してしまう。
 キスをしながら耳から首筋辺りを執拗に撫でられる。彼の舌が自分の舌に絡み付き吸われ、歯列をゆっくりとなぞっていく。

(何、これ……何時もと全然違う……)

 ゆっくりと離れた彼とフィオナの唇からは透明な糸が引きプツリと切れた。

「フィオナ」
「ローデヴェイク、さま……?」
「君は本当に無垢で、無防備で可愛いね。でもダメだよ、こんな時間にそんな恰好で男の部屋を訪ね来るなんて。襲われても文句は言えない」

 流石に着替えるのは大変だったので、寝衣に薄いカーディガンを羽織ってはきたが、もしかするとはしたないと軽蔑されたかも知れない。
 
「あぁ、それとも期待してたのかな」

 フィオナは身体が思う様に動かない中、必死に首を横に振った。

「そんなに蕩けた顔をして、そうは見えないよ」

 今自分がどんな表情をしているかは分からないが、もし彼の言う通りならばそれは先程飲まされたお茶の所為だ。

「本当はもっと私に夢中にさせてからじっくりと君を堪能するつもりだったけどーーでもこうして君の無防備な姿を見てしまったら、流石の私でも我慢がきかない」
「っ……ダメ、ですっ」

 カーディガンなどあっという間に脱がされ、そのまま身体の線に沿って寝衣に手を伝わせ彼の大きな手でゆっくりと焦らすように撫で回された。
 胸元の二つの膨らみを外側から少しずつ触れ、徐々に中心部の蕾へと近付いてくるのが分かった。だが蕾に触れそうになると彼の手はまた離れていく。
 フィオナはもどかしさを感じて思わず身体を捩る。

「んっ……ぁ……やッ……」
「すまない、やはり無理強いは良くないね」

 暫く弄られていたが、不意に彼は手を離した。そしてローデヴェイクは心底申し訳なさそうに謝罪をする。

「ローデヴェイク、さまっ……ぃや」
「うん、分かってる。大丈夫、もう触らないよ」

 違う、そうじゃない。もっと彼の手で触って欲しいーー身体中が熱くて疼いて仕方がない。
 無意識に、フィオナは離れていくローデヴェイクの手を掴んだ。

「どうしたの?」

 首を傾げる彼の手を自ら胸元に引き寄せると、目を丸くした。

「嫌なんじゃないのかい?」
「違っ……違うのっ」

 首を何度も横に振り否定をする。まるで幼子みたいな言動だが、そんな事を気にする余裕はなかった。
 今はただ彼に触れて欲しくて仕方がない。頭がぼんやりとして思考も理性も働かない。

「何が違うの? ちゃんと言わないと分からないよ」

 長く綺麗な彼の指が、焦らす様にまた胸元に触れてくる。

「ぁっ……」
「ほら、フィオナ。どうして欲しい?」
「触って……もっとローデヴェイクさまに、触れられたい……ああッ‼︎」

 瞬間指で蕾を突っつかれ更に摘み上げられる。待ち望んだ感覚に、フィオナの身体は痺れ跳ねると弧を描いた。

「もしかして、達してしまったのかな」
「はぁっ……んっ……ぁッ」
「凄く感じ易いんだね……素晴らしい」

 寝衣の中に彼の手が差し込まれ直に触れられると、先程までとはまた違った感覚が伝わってくる。
 
「可愛い蕾だ」
「あっんッ……」

 乳房を露わにされた瞬間、彼は蕾に喰らい付いた。口に含み舌先で弄って転がした後、少し強く吸う。その間も、もう片側の乳房は手の平全体を使い刺激を与え続けられた。

「随分と気持ち善さそうだねーーあぁ、こんなに濡らして淫らだ」
「ぁッーー‼︎」

 くちゅッと水音が耳に届いた時には、既に彼の手がフィオナの秘部に触れていた。
 
「凄いよ、フィオナ。次々に君のなかから蜜が溢れてくる」
「そこはっ……」

 鼻歌でも歌い出しそうなくらい上機嫌な声色だ。
 ローデヴェイクは秘部に触れそうな程に顔を近付け、フィオナの大事な場所をじっくりと観察をする。探るようにして花弁を捲り上げると、敏感な場所が空気に触れたのを感じた。

「下の蕾も赤く膨れて実に美味しそうだよ」
「いや、ぁっ……ああッ‼︎」

 舌先を使い、チロチロと舐めながら指先でも刺激を与えられる。蕾を擦っていた指は徐々に奥へと向かい、指に愛液を絡ませてると徐になかに侵入してきた。

「温かくて狭いーーゆっくりとほぐしてあげるからね」

 円を描くようにしてゆっくりとなかを掻き回され、一本だった指は二本、三本と増えていく。

「あっ……アアッ」
「うん、そろそろ良さそうだね」
「ローデヴェイク、さま……?」

 手についた愛液を丹念に舐め取ると、彼はガウンを脱ぎ捨てた。




 



 
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