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ネズッチ視点~童話の世界かよ!~
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「俺の身分と外見ではなく、内面に惚れてくれる女の子と結ばれたいと思うのは、身分不相応な夢なのだろうな·····」
俺が、王宮の私室の窓から満月を眺めながら呟いてしまった瞬間、背後でドスのきいた声が聞こえた。
「その願い、叶えてやろう」
部屋に1人だったはずなのになぜ?と、慌てて振り返ると部屋に黒いローブを着たガチムキの50代くらいのスキンヘッドのオッサンが立っていた。
片目が潰れていて、正直ヤクザにしか見えない。
「不法侵入者だ!衛兵!」
俺の声に部屋の扉が開き、衛兵ではなく何故かケンタが慌てた様子で入ってきた。
「王子、その方はこの国で唯一の魔法使い様です!先程、王から魔法使いが王子の部屋に行くと伝令がありました」
「ま、魔法使い??この人が?」
「そうだ。これを見ろ」
そう言って、スキンヘッドのヤクザ風オッサンは胸元を探った。
拳銃でも出てくるのではと身構えていた俺は、出てきたものを見て、ポカンとしてしまった。
強面のオッサンは、可愛いピンクのお星様のステッキを堂々と掲げていた。
それは前世の俺の妹が好きだったアニメ『魔女っ子バビデ』の魔法ステッキにそっくりで、思わず俺は叫んでしまった。
「似合わねぇー!」
俺の発言が気に障ったのか、強面のオッサンのコメカミの血管が浮き上がった。
「無礼な。·····まぁ良い、貴様の願い叶えてやろう。ビビデバビデブー」
オッサンの魔法ステッキからピンク色の光が俺に向かって噴出した。
そして、気づくと俺はネズミになっていた。
スキンヘッドのオッサンは可愛いピンクのお星様のついた魔法ステッキを振りながら、ニヤニヤと俺に言い放った。
「『王城のイケメン王子様より、ボロネズミの方が好き』と思ってくれる女性に恋してもらったら、人間に戻してやるよ」
「そんな·····」
「『身分と外見ではなく、内面に惚れてくれる女の子と結ばれる』のが、お前の夢なんだろ?さっき、ほざいてただろ?」
絶対このオッサン、俺がさっき魔法ステッキ似合わねぇって言ったこと根に持ってるよ·····俺は、予想外の事態に狼狽えた。
すると黙って様子を見ていたケンタが、魔法使いのオッサンに向かって言ってくれた。
「王子も割り当てられてる執務があるので、ずっとネズミのままでは困ります」
「安心しろや。この魔法は月の力を利用してるから、夜にしかネズミにはならねぇ」
「ならいいです」
あっさり引き下がったケンタに、俺は叫んだ。
「良くねぇだろ!夜の間ずっとネズミなんだぜ!?ボロネズミの方が良いと言う女性なんて、この世にいるわけねぇから一生夜はネズミの姿って事だろ?」
「安心しろ。目星はつけてある」
そう言って魔法使いのオッサンがお星様のステッキを振ると、部屋の壁にボンヤリと映像が投影された。
ツギハギだらけの服を着た女性が、食器を布で一生懸命磨いている様子が映し出されていた。
「彼女の名前は、シンデレラ。動物にも優しいし、彼女ならお前に惚れてくれる可能性が1ミクロンくらいならあるかもな。まぁ、お前の中身がどれほど魅力的なのかによるがな」
「1ミクロンって1ミリの1000分の1だろ!?絶望的ってことじゃねーか!!ってか、シンデレラって·····この異世界、まさか童話の世界だったのか!?」
「ゴチャゴチャとうるせぇ。自業自得だ、さっさと行け。新月の日以外は毎日、1時間だけ転送魔法でシンデレラの元に飛ばしてやるよ」
そう言って魔法使いのオッサンは、俺に向かって杖を降った。
そうして、俺はシンデレラの屋根裏部屋に転送されたのだった。
俺が、王宮の私室の窓から満月を眺めながら呟いてしまった瞬間、背後でドスのきいた声が聞こえた。
「その願い、叶えてやろう」
部屋に1人だったはずなのになぜ?と、慌てて振り返ると部屋に黒いローブを着たガチムキの50代くらいのスキンヘッドのオッサンが立っていた。
片目が潰れていて、正直ヤクザにしか見えない。
「不法侵入者だ!衛兵!」
俺の声に部屋の扉が開き、衛兵ではなく何故かケンタが慌てた様子で入ってきた。
「王子、その方はこの国で唯一の魔法使い様です!先程、王から魔法使いが王子の部屋に行くと伝令がありました」
「ま、魔法使い??この人が?」
「そうだ。これを見ろ」
そう言って、スキンヘッドのヤクザ風オッサンは胸元を探った。
拳銃でも出てくるのではと身構えていた俺は、出てきたものを見て、ポカンとしてしまった。
強面のオッサンは、可愛いピンクのお星様のステッキを堂々と掲げていた。
それは前世の俺の妹が好きだったアニメ『魔女っ子バビデ』の魔法ステッキにそっくりで、思わず俺は叫んでしまった。
「似合わねぇー!」
俺の発言が気に障ったのか、強面のオッサンのコメカミの血管が浮き上がった。
「無礼な。·····まぁ良い、貴様の願い叶えてやろう。ビビデバビデブー」
オッサンの魔法ステッキからピンク色の光が俺に向かって噴出した。
そして、気づくと俺はネズミになっていた。
スキンヘッドのオッサンは可愛いピンクのお星様のついた魔法ステッキを振りながら、ニヤニヤと俺に言い放った。
「『王城のイケメン王子様より、ボロネズミの方が好き』と思ってくれる女性に恋してもらったら、人間に戻してやるよ」
「そんな·····」
「『身分と外見ではなく、内面に惚れてくれる女の子と結ばれる』のが、お前の夢なんだろ?さっき、ほざいてただろ?」
絶対このオッサン、俺がさっき魔法ステッキ似合わねぇって言ったこと根に持ってるよ·····俺は、予想外の事態に狼狽えた。
すると黙って様子を見ていたケンタが、魔法使いのオッサンに向かって言ってくれた。
「王子も割り当てられてる執務があるので、ずっとネズミのままでは困ります」
「安心しろや。この魔法は月の力を利用してるから、夜にしかネズミにはならねぇ」
「ならいいです」
あっさり引き下がったケンタに、俺は叫んだ。
「良くねぇだろ!夜の間ずっとネズミなんだぜ!?ボロネズミの方が良いと言う女性なんて、この世にいるわけねぇから一生夜はネズミの姿って事だろ?」
「安心しろ。目星はつけてある」
そう言って魔法使いのオッサンがお星様のステッキを振ると、部屋の壁にボンヤリと映像が投影された。
ツギハギだらけの服を着た女性が、食器を布で一生懸命磨いている様子が映し出されていた。
「彼女の名前は、シンデレラ。動物にも優しいし、彼女ならお前に惚れてくれる可能性が1ミクロンくらいならあるかもな。まぁ、お前の中身がどれほど魅力的なのかによるがな」
「1ミクロンって1ミリの1000分の1だろ!?絶望的ってことじゃねーか!!ってか、シンデレラって·····この異世界、まさか童話の世界だったのか!?」
「ゴチャゴチャとうるせぇ。自業自得だ、さっさと行け。新月の日以外は毎日、1時間だけ転送魔法でシンデレラの元に飛ばしてやるよ」
そう言って魔法使いのオッサンは、俺に向かって杖を降った。
そうして、俺はシンデレラの屋根裏部屋に転送されたのだった。
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