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オタクを暴露されて教室で公開処刑されてる時に救ってくれたのはイケメン生徒会長でした
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高校では顕著にスクールカーストが現れる。
まるで昔の身分制度のように、付き合う相手も、同じカーストから選ぶのが一般的だ。
スクールカーストの上位者と下位者が結ばれる、身分差の恋·····などはめったに起こらない。
めったに起こらないからこそ、身分差の恋は漫画やアニメになるのだと、私は思う。
私の中には「スクールカーストなんで糞喰らえ!」という思いと「スクールカースト上位者でいたい·····」という相反する思いが同居し、大きなストレスを生んでいた。
幸いな事に、私は母親譲りの色白小顔と、父親譲りのくっきり二重と明るい性格でスクールカースト上位者でいられていた。中学からメイクを覚えたことによる影響もデカい。少しぽっちゃりしてる点がコンプレックスだが、絶賛ダイエット中だ。
ちなみに私は、中2から重度の乙女ゲームオタクになった。中学生の頃、何気なくつけたテレビに写った深夜番組のアニメの美少年に、胸を射抜かれた。そこから、アニメにハマり、乙女ゲーが元と知ってやり込み、そこから乙女ゲーの沼にどっぷり浸かった。
学校での今の立場を失わないために、オタクであることは絶対にバレないように生活していた。グッズの買い物はネットだし、外では絶対にバレないように気をつけていた。
乙女ゲーのグッツが収納された、私のクローゼットの中だけがオアシスだった。
夏休み前に、同じクラスでサッカー部のエース、セイジに告白された。セイジは茶髪をツンツン立てている髪型で、クラスでも目立つスクールカースト上位の男子だ。周りの男子達といつも騒がしくしている。
私は、彼を好きでもないのに、うっかり返事して付き合ってしまった。
きっとその理由は、熱帯夜で寝苦しくて寝不足だったせいと、ダイエット中で頭に血が回っていなかったせいと、特典映像満載のDVDの予約をしていたか思い出していたせいと、糞みたいな身分制度に惑わされたせいだと思う。
付き合ってみて後悔したのは、彼のデリカシーの無さだ。
夏休み中に、セイジと私は映画デートに行くことになった。彼のポップコーンをボロボロこぼす食べ方や、咀嚼の音の大きさにウンザリしつつ映画を見終えた。
映画の帰り、両親が出掛けている話をしたところ、セイジはすごくしつこく私の家に来たがった。
うだるような暑い日だったし、ゲームにお小遣いを注ぎ込みすぎてカフェに入るお金もあまり無かったので、セイジのあまりのしつこさに根負けして、仕方ないから私の部屋に来させてあげる事にした。
しかし、その判断をした事に、私は大いに後悔することになる·····。
なんと、私がお菓子と飲み物を用意しようと部屋を出ている間に、セイジが勝手にクローゼットを開けたのだ。
あの日の怒りは、一生忘れない。
「·····な、なんだこれ!?」
クローゼットの中身を見て唖然としているセイジに、私は金切り声で叫んだ。
「出てって!!アンタとはマジで無理!別れて!」
尻尾をまいて逃げていくセイジの後ろ姿を見ながら、私は何もかもに後悔し始めた。
夏休み明けにクラスに行くと、案の定の展開が待ち受けていた。
「ヒロコって実はオタクなんだぜ!マジで、キモかったから振ってやったわ!」
「マジかよww」
「あいつの部屋のクローゼットの中、なんか銀髪のゲームのキャラクターのポスターで1杯だったし、抱き枕まであったんだぜ!マジでキモかったわ!」
セイジはわざと、クラス中に聞こえるような大声で話している。
クラスの視線と嘲り笑いが私に集中しているのを感じて、私は顔が真っ赤になった。
その時の生徒会長の、よく通る声が聞こえた。
「オタクであることは、蔑まれることではないと思うけど?」
生徒会長は黒髪短髪でスラッと背が高く、目鼻立ちがくっきりしている。勉強も学年トップ、スポーツも万能で、女子のファンも多かった。
以前、女子達でクラスでイケメンは誰かという話になった時、堂々の1位になったのが生徒会長だった。
生徒会長は、セイジに向かって続けて言った。
「漫画であれゲームであれ、スポーツであれ、大好きな熱中できるものがある事は、素敵な事だと思うけど」
「なっ!ゲームとスポーツを同レベルにすんなよ!」
「好きなものに熱中してる事に、変わりないのでは?」
空手黒帯、剣道段持の生徒会長にそう言われて、セイジは言葉につまったが、負けじと周りの男子に向かって「生徒会長が女子びいきだと、男子は肩身が狭いよなぁ?」と同意を求めた。
すると生徒会長は、毅然と言い返した。
「いや、セイジを心配して言ってるんだ。セイジの今の言動は『自分は好きな人の大切なものを、大事にできない人間だ』と公言してるようなものだから····」
クラスで男子からも女子からも一目置かれている生徒会長にそう言われ、セイジは耳まで真っ赤になっておし黙ってしまった。
私は、この時の爽快感を忘れない。
それと同時に私はようやく気づいた。スクールカーストは『糞みたいなもの』ではなく『糞その物』だ。
歪んだ自尊感情と承認欲求、差別意識、劣等感情という人間の汚い部分の塊だ。トイレに流すべき汚物だ。汚物を処理しないから『いじめ』という病気に発展するのだ。
私は、教室内にデカデカととぐろを巻いていた糞を気にして、好きなものを好きだと言えなかったのか·····と、途端に全てが馬鹿らしくなった。
ありのままの自分でいよう、糞のことは気にしない。
大丈夫、このクラスにはトイレを流してくれる生徒会長がいる。
その出来事以降、私は吹っ切れて、好きなものは好きだと高々と宣言するようになった。
その後私は、生徒会長に恋に落ち·····たりはしなかった。
私に、ガールズラブの趣味はないからだ。
生徒会長は、『イケメン女子』だったからだ。
まるで昔の身分制度のように、付き合う相手も、同じカーストから選ぶのが一般的だ。
スクールカーストの上位者と下位者が結ばれる、身分差の恋·····などはめったに起こらない。
めったに起こらないからこそ、身分差の恋は漫画やアニメになるのだと、私は思う。
私の中には「スクールカーストなんで糞喰らえ!」という思いと「スクールカースト上位者でいたい·····」という相反する思いが同居し、大きなストレスを生んでいた。
幸いな事に、私は母親譲りの色白小顔と、父親譲りのくっきり二重と明るい性格でスクールカースト上位者でいられていた。中学からメイクを覚えたことによる影響もデカい。少しぽっちゃりしてる点がコンプレックスだが、絶賛ダイエット中だ。
ちなみに私は、中2から重度の乙女ゲームオタクになった。中学生の頃、何気なくつけたテレビに写った深夜番組のアニメの美少年に、胸を射抜かれた。そこから、アニメにハマり、乙女ゲーが元と知ってやり込み、そこから乙女ゲーの沼にどっぷり浸かった。
学校での今の立場を失わないために、オタクであることは絶対にバレないように生活していた。グッズの買い物はネットだし、外では絶対にバレないように気をつけていた。
乙女ゲーのグッツが収納された、私のクローゼットの中だけがオアシスだった。
夏休み前に、同じクラスでサッカー部のエース、セイジに告白された。セイジは茶髪をツンツン立てている髪型で、クラスでも目立つスクールカースト上位の男子だ。周りの男子達といつも騒がしくしている。
私は、彼を好きでもないのに、うっかり返事して付き合ってしまった。
きっとその理由は、熱帯夜で寝苦しくて寝不足だったせいと、ダイエット中で頭に血が回っていなかったせいと、特典映像満載のDVDの予約をしていたか思い出していたせいと、糞みたいな身分制度に惑わされたせいだと思う。
付き合ってみて後悔したのは、彼のデリカシーの無さだ。
夏休み中に、セイジと私は映画デートに行くことになった。彼のポップコーンをボロボロこぼす食べ方や、咀嚼の音の大きさにウンザリしつつ映画を見終えた。
映画の帰り、両親が出掛けている話をしたところ、セイジはすごくしつこく私の家に来たがった。
うだるような暑い日だったし、ゲームにお小遣いを注ぎ込みすぎてカフェに入るお金もあまり無かったので、セイジのあまりのしつこさに根負けして、仕方ないから私の部屋に来させてあげる事にした。
しかし、その判断をした事に、私は大いに後悔することになる·····。
なんと、私がお菓子と飲み物を用意しようと部屋を出ている間に、セイジが勝手にクローゼットを開けたのだ。
あの日の怒りは、一生忘れない。
「·····な、なんだこれ!?」
クローゼットの中身を見て唖然としているセイジに、私は金切り声で叫んだ。
「出てって!!アンタとはマジで無理!別れて!」
尻尾をまいて逃げていくセイジの後ろ姿を見ながら、私は何もかもに後悔し始めた。
夏休み明けにクラスに行くと、案の定の展開が待ち受けていた。
「ヒロコって実はオタクなんだぜ!マジで、キモかったから振ってやったわ!」
「マジかよww」
「あいつの部屋のクローゼットの中、なんか銀髪のゲームのキャラクターのポスターで1杯だったし、抱き枕まであったんだぜ!マジでキモかったわ!」
セイジはわざと、クラス中に聞こえるような大声で話している。
クラスの視線と嘲り笑いが私に集中しているのを感じて、私は顔が真っ赤になった。
その時の生徒会長の、よく通る声が聞こえた。
「オタクであることは、蔑まれることではないと思うけど?」
生徒会長は黒髪短髪でスラッと背が高く、目鼻立ちがくっきりしている。勉強も学年トップ、スポーツも万能で、女子のファンも多かった。
以前、女子達でクラスでイケメンは誰かという話になった時、堂々の1位になったのが生徒会長だった。
生徒会長は、セイジに向かって続けて言った。
「漫画であれゲームであれ、スポーツであれ、大好きな熱中できるものがある事は、素敵な事だと思うけど」
「なっ!ゲームとスポーツを同レベルにすんなよ!」
「好きなものに熱中してる事に、変わりないのでは?」
空手黒帯、剣道段持の生徒会長にそう言われて、セイジは言葉につまったが、負けじと周りの男子に向かって「生徒会長が女子びいきだと、男子は肩身が狭いよなぁ?」と同意を求めた。
すると生徒会長は、毅然と言い返した。
「いや、セイジを心配して言ってるんだ。セイジの今の言動は『自分は好きな人の大切なものを、大事にできない人間だ』と公言してるようなものだから····」
クラスで男子からも女子からも一目置かれている生徒会長にそう言われ、セイジは耳まで真っ赤になっておし黙ってしまった。
私は、この時の爽快感を忘れない。
それと同時に私はようやく気づいた。スクールカーストは『糞みたいなもの』ではなく『糞その物』だ。
歪んだ自尊感情と承認欲求、差別意識、劣等感情という人間の汚い部分の塊だ。トイレに流すべき汚物だ。汚物を処理しないから『いじめ』という病気に発展するのだ。
私は、教室内にデカデカととぐろを巻いていた糞を気にして、好きなものを好きだと言えなかったのか·····と、途端に全てが馬鹿らしくなった。
ありのままの自分でいよう、糞のことは気にしない。
大丈夫、このクラスにはトイレを流してくれる生徒会長がいる。
その出来事以降、私は吹っ切れて、好きなものは好きだと高々と宣言するようになった。
その後私は、生徒会長に恋に落ち·····たりはしなかった。
私に、ガールズラブの趣味はないからだ。
生徒会長は、『イケメン女子』だったからだ。
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