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7.To affect people
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高早さんに悪いことをしたと思ってから一週間。その気持ちはもはや一ミリたりとも残ってはいなかった。
なぜなら、あの日から彼女はまるで友達になったかのように毎日毎日話しかけてくるからだった。
最初はほとんど無視をしていたが、段々と
「女の子から話しかけられているのに無視してる男」
みたいなレッテルを周りに貼られているような空気を感じて、最低限一言二言返すようになった。
最悪だ。新しい友達なんて全く作る気なかったのに。
「おはよう浪谷くん」
そんなことを考えていると、悩みの原因である高早さんの声が頭上から聞こえてくる。
今日もかと小さくため息をつくと俺は恐る恐る頭を上げた。
「……おはよう高早さん」
俺から挨拶が返ってきたことに満足したのか、自身の嫌そうな顔とは正反対の眩しい笑顔で去っていった。
毎朝こうだ。
何が問題かって勿論なるべく人と関わらないと決めていた自分が彼女と話していることもそうだが、一番は彼女、高早千尋がみんなの人気者だということだ。
クラスにいる根暗な男子というポジションだった俺が、彼女というスポットライトに当てられることで否が応でも目立ってしまう。もしかしたらそのうち誰かに話しかけられるかもしれない。
人と関わりたくない、その思いだけが積み重なる一方だった。
「なぁ環太、お前最近委員長と仲良いのな。」
昼休み中、拓間はチューチューと紙パックのイチゴ牛乳をいつものように飲んでいる。委員長とは勿論彼女のことだ。
「仲良くなんてないよ……。向こうが話しかけてくるだけだ。」
「でも無視はしないじゃん。」
そりゃぁ出来ることなら俺だって無視をしたい……。だけど出来ないからこうしてまんまと会話をしてしまっているんだ。
「……周りの視線が痛いんだよ……」
「そう、いうもんか……?」
自分に自信のあって人との関係を断ち切りたいなんて生まれてこの方思ったこともなさそうな拓間には分からないかもしれないが。
「ねえ市川くん、浪谷くん。私も一緒にお弁当食べていい?」
拓間との会話も落ち着いたと思った瞬間だった。勘弁して欲しい、
「お! 噂をすれば委員長。いいぜ!」
最悪だ。なんで俺は高早さんと今飯を食ってるのか。そしてもっと最悪なのは高早さんの女友達達から「ねえ千尋、一緒に食べようよ」「なんで市川くん達と食べるの?」という声が飛んでくること。
俺が知りたいよ……。
「市川くんはサッカー部なんだよね? 練習大変?」
「そりやぁもう大変よ~。毎日ヘトヘト。」
二人のどうでもいい話が続く。そこで話が弾むなら俺は要らないんじゃないか、拓間だけここに残せば高早さんは十分満足なのではないか。
「市川くん運動神経良いもんね。体育祭期待してるよ」
「おう、運動神経で言うと環太だって俺に負けないくらい良いんだぜ。」
ドキっとした。
俺の運動神経がいいのは事実だ。だけど、拓間が期待を寄せている体育祭での活躍は難しいだろう。だって俺は既に手を抜いて体育の授業を受けるのが精一杯な状態だから。
高早さんも何も知らない拓間の言葉に同じく反応した。いや実際には同じではない。おそらく彼女の中で俺はただ何かしらが原因で体調が万全ではない奴といったところだ。あと一年弱で死ぬなんて思ってないだろう。
「へえ、そうなんだ。運動部だったりしたの?」
「…………昔はな。バスケ部だった。」
二人の視線に耐えられず渋々答える。
「環太器用だからさぁ、超強かったんだぜ!」
超、は言い過ぎだが俺達のチームがそこそこ強かったのは事実だ。まあ、所詮中学時代の話でしかないけれど。
「へえ、そうなんだ!」
「高校に入ったらやめちまったんだよ、勿体ねぇなぁ。」
「いいんだよ別に。」
その日から高早さんに加え、彼女と親交を深めた拓間によって俺の日常はさらに掻き乱れていくことになる。
なぜなら、あの日から彼女はまるで友達になったかのように毎日毎日話しかけてくるからだった。
最初はほとんど無視をしていたが、段々と
「女の子から話しかけられているのに無視してる男」
みたいなレッテルを周りに貼られているような空気を感じて、最低限一言二言返すようになった。
最悪だ。新しい友達なんて全く作る気なかったのに。
「おはよう浪谷くん」
そんなことを考えていると、悩みの原因である高早さんの声が頭上から聞こえてくる。
今日もかと小さくため息をつくと俺は恐る恐る頭を上げた。
「……おはよう高早さん」
俺から挨拶が返ってきたことに満足したのか、自身の嫌そうな顔とは正反対の眩しい笑顔で去っていった。
毎朝こうだ。
何が問題かって勿論なるべく人と関わらないと決めていた自分が彼女と話していることもそうだが、一番は彼女、高早千尋がみんなの人気者だということだ。
クラスにいる根暗な男子というポジションだった俺が、彼女というスポットライトに当てられることで否が応でも目立ってしまう。もしかしたらそのうち誰かに話しかけられるかもしれない。
人と関わりたくない、その思いだけが積み重なる一方だった。
「なぁ環太、お前最近委員長と仲良いのな。」
昼休み中、拓間はチューチューと紙パックのイチゴ牛乳をいつものように飲んでいる。委員長とは勿論彼女のことだ。
「仲良くなんてないよ……。向こうが話しかけてくるだけだ。」
「でも無視はしないじゃん。」
そりゃぁ出来ることなら俺だって無視をしたい……。だけど出来ないからこうしてまんまと会話をしてしまっているんだ。
「……周りの視線が痛いんだよ……」
「そう、いうもんか……?」
自分に自信のあって人との関係を断ち切りたいなんて生まれてこの方思ったこともなさそうな拓間には分からないかもしれないが。
「ねえ市川くん、浪谷くん。私も一緒にお弁当食べていい?」
拓間との会話も落ち着いたと思った瞬間だった。勘弁して欲しい、
「お! 噂をすれば委員長。いいぜ!」
最悪だ。なんで俺は高早さんと今飯を食ってるのか。そしてもっと最悪なのは高早さんの女友達達から「ねえ千尋、一緒に食べようよ」「なんで市川くん達と食べるの?」という声が飛んでくること。
俺が知りたいよ……。
「市川くんはサッカー部なんだよね? 練習大変?」
「そりやぁもう大変よ~。毎日ヘトヘト。」
二人のどうでもいい話が続く。そこで話が弾むなら俺は要らないんじゃないか、拓間だけここに残せば高早さんは十分満足なのではないか。
「市川くん運動神経良いもんね。体育祭期待してるよ」
「おう、運動神経で言うと環太だって俺に負けないくらい良いんだぜ。」
ドキっとした。
俺の運動神経がいいのは事実だ。だけど、拓間が期待を寄せている体育祭での活躍は難しいだろう。だって俺は既に手を抜いて体育の授業を受けるのが精一杯な状態だから。
高早さんも何も知らない拓間の言葉に同じく反応した。いや実際には同じではない。おそらく彼女の中で俺はただ何かしらが原因で体調が万全ではない奴といったところだ。あと一年弱で死ぬなんて思ってないだろう。
「へえ、そうなんだ。運動部だったりしたの?」
「…………昔はな。バスケ部だった。」
二人の視線に耐えられず渋々答える。
「環太器用だからさぁ、超強かったんだぜ!」
超、は言い過ぎだが俺達のチームがそこそこ強かったのは事実だ。まあ、所詮中学時代の話でしかないけれど。
「へえ、そうなんだ!」
「高校に入ったらやめちまったんだよ、勿体ねぇなぁ。」
「いいんだよ別に。」
その日から高早さんに加え、彼女と親交を深めた拓間によって俺の日常はさらに掻き乱れていくことになる。
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