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6.She decided not to.
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今日の体育は体力測定を兼ねた20メートルシャトルランだ。
流石に20メートルを何度も走っては身体が悲鳴をあげるので、俺はささっと5回で端に避けて後半組の待機している場所へ戻った。でも後半組の奴らになんで5回で辞めたのかと問われても面倒なので隅の誰も見ていないようなところに腰を落とした。
ぼーっとみんなが必死に走るのを見る。今は丁度20回目に到達した辺りで、そろそろ疲れが見え始めている頃だった。
「これはそろそろ仲間が増えるな。」
思わずぼそっと呟く。
「そうだね、特に原くんとかしんどそう」
ただの独り言だったつもりの言葉に返答が返ったのに驚き、慌てて声がした方を振り向く。
そこに居たのは高早さんだった。
「やっほ、浪谷くん。隣、いいかな……?」
「あ……ああ……。」
直ぐに断る上手い理由も思いつかず二つ返事で了承してしまう。本当はあまり近づきたくない人間ランキングTOP1なんだけど。
「みんな頑張るね~」
彼女のつぶやきには静寂が帰る。
いや正確に言えば、二十メートルシャトルランのあの音がだけが彼女の耳には入っただろう。
そのまま数分沈黙が続いた。
こちらから話すことなどないので、彼女が話始めなければ永遠に沈黙のままだろう。そう思った時、恐る恐るといった風に彼女の口が動いた。
「……ねえ、あのさ」
そして少し口ごもる彼女を見て何を話そうとしているのか大方予想がついた。
「この間のこと……だよね?」
「うん、そう。……この間は本当に、ごめんなさい!」
床にベタっと座り込んだ状態で頭を下げる彼女を見る。女の子が男に頭を下げてる図なんて側から見ればなんと勘違いされるかわかったものじゃない。
「もう、いいから、頭上げて。」
「ごめんね私、深入りしようとして。浪谷くんは嫌がってる風だったのに。だから、なかったことにしようかと思ったんだけど、やっぱりそれはなんか違うと思って……ほんとにごめん。」
どうやら高早さんは人一倍正義感が強いタイプのようだ。そうでなければわざわざ改まった謝罪なんてされることはなかっただろうから。
「……もう、いい。だけど深入りはしないでほしい。」
「うん、わかった……。」
あまり納得してそうには見えない様子だったが、そんなことは知ったことではない。彼女が「わかった」と言ったのであればそれまでだ。
「でも、話しかけるのはいいよね? 友達になりたい。」
少し予想外の返事が来て気持ちが焦る。友達? それは俺がなるべく作らないと決めていたものである。誰かとの新しい関わりなんていらない。
「悪いけど、もう話しかけないで欲しい……。」
「なんで? 嫌だよ」
彼女が言葉を紡ごうとしたタイミングで先生が吹いた笛の音が鳴り響く。どうやら前半組の最後の奴が走り終えたらしい。これから後半だ。
「後半組は配置につけ~!」
体育教師の大きな声が鳴り響く。彼女は後半組だ。何か言いたげな視線をこちらに向けながらも彼女は奥の方に走っていった。
悪い事をしたとは思うが、仕方の無いことだと許してもらいたい。
流石に20メートルを何度も走っては身体が悲鳴をあげるので、俺はささっと5回で端に避けて後半組の待機している場所へ戻った。でも後半組の奴らになんで5回で辞めたのかと問われても面倒なので隅の誰も見ていないようなところに腰を落とした。
ぼーっとみんなが必死に走るのを見る。今は丁度20回目に到達した辺りで、そろそろ疲れが見え始めている頃だった。
「これはそろそろ仲間が増えるな。」
思わずぼそっと呟く。
「そうだね、特に原くんとかしんどそう」
ただの独り言だったつもりの言葉に返答が返ったのに驚き、慌てて声がした方を振り向く。
そこに居たのは高早さんだった。
「やっほ、浪谷くん。隣、いいかな……?」
「あ……ああ……。」
直ぐに断る上手い理由も思いつかず二つ返事で了承してしまう。本当はあまり近づきたくない人間ランキングTOP1なんだけど。
「みんな頑張るね~」
彼女のつぶやきには静寂が帰る。
いや正確に言えば、二十メートルシャトルランのあの音がだけが彼女の耳には入っただろう。
そのまま数分沈黙が続いた。
こちらから話すことなどないので、彼女が話始めなければ永遠に沈黙のままだろう。そう思った時、恐る恐るといった風に彼女の口が動いた。
「……ねえ、あのさ」
そして少し口ごもる彼女を見て何を話そうとしているのか大方予想がついた。
「この間のこと……だよね?」
「うん、そう。……この間は本当に、ごめんなさい!」
床にベタっと座り込んだ状態で頭を下げる彼女を見る。女の子が男に頭を下げてる図なんて側から見ればなんと勘違いされるかわかったものじゃない。
「もう、いいから、頭上げて。」
「ごめんね私、深入りしようとして。浪谷くんは嫌がってる風だったのに。だから、なかったことにしようかと思ったんだけど、やっぱりそれはなんか違うと思って……ほんとにごめん。」
どうやら高早さんは人一倍正義感が強いタイプのようだ。そうでなければわざわざ改まった謝罪なんてされることはなかっただろうから。
「……もう、いい。だけど深入りはしないでほしい。」
「うん、わかった……。」
あまり納得してそうには見えない様子だったが、そんなことは知ったことではない。彼女が「わかった」と言ったのであればそれまでだ。
「でも、話しかけるのはいいよね? 友達になりたい。」
少し予想外の返事が来て気持ちが焦る。友達? それは俺がなるべく作らないと決めていたものである。誰かとの新しい関わりなんていらない。
「悪いけど、もう話しかけないで欲しい……。」
「なんで? 嫌だよ」
彼女が言葉を紡ごうとしたタイミングで先生が吹いた笛の音が鳴り響く。どうやら前半組の最後の奴が走り終えたらしい。これから後半だ。
「後半組は配置につけ~!」
体育教師の大きな声が鳴り響く。彼女は後半組だ。何か言いたげな視線をこちらに向けながらも彼女は奥の方に走っていった。
悪い事をしたとは思うが、仕方の無いことだと許してもらいたい。
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