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3.Keep it secret.
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「だから私は少しだけ病気に詳しいの。」
「そうなんだ……。でも心配には及ばないよ、本当にただの貧血だ。」
「嘘よ。…………ごめんなさい、先生呼んでくる。」
彼女は自分の言葉を飲み込むようにして足早に保健室を出ると、保健室の目の前にある階段を登っていく音がこちらまで聞こえた。
危ない。これ以上詰められたら本当に全てを吐かされそうだった……。高早千尋にはなるべく関わらない方がいい。
うぅ、まだあまり体調が優れない。そもそも万全な時なんてほとんどないけど。特に最近はいよいよ死にそうな匂いがプンプンしてる。自分のことだけど。
そんなことを思っているとさっきと同じように階段を下る音が響き渡る。おそらく足音的に、二人だろうから恐らく高早さんと養護の紀伊先生だろう。
「浪谷、大丈夫か?」
予想はすぐに覆された。ドアから入ってきたのは紀伊先生と高早さんではなく、担任の粟田先生だった。
俺の病気のことは紀伊先生しか知らない。でも、もしかしたら今回の一件で粟田先生にも伝わってしまったかもしれないな……。倒れたのは失態だ。
「粟田先生、大丈夫。すみません、授業出られなくて」
「大丈夫だ、健康第一だからな。家でやれそうだったら今日のプリントやってみてくれ。さっき高早が浪谷の鞄に入れてくれてたから入ってると思うからさ。」
「あ、はい。ありがとうございます。………あの」
「なんだ?」
この感じは……紀伊先生は粟田先生に伝えていないのか?
「あ、いえなんでもないです。」
なら自分から話す必要は無い。
正直、俺が紀伊先生の立場なら、いつ死ぬか分からない生徒が自分以外の誰にも死ぬことを校内で言っていない。しかも急に倒れたりして危うい。
そんな奴がもしいたら、おれは少なくとも自分の負担の軽減も兼ねて他の先生に秘密裏に伝えるだろうな。でも粟田先生は嘘がつけないタイプの人間のはずだから本当に知らない感じがする。
「あ、そうそうこれ鞄ね。高早さんが持ってきてくれたよ。」
紀伊先生の手には俺の鞄が握られていた。
「ありがとうございます。」
「礼は彼女に言った方がいいと思うよ。……あと、粟田先生には秘密にしておいた。俺の判断だ。だけど、言ってくれれば先生には俺から話してもいいし、自分から話してくれても問題ない。」
鞄を渡すために俺に近づいた先生はぼそっとそう零した。やはり言っていなかったのか……。
でも俺に自分から話すという選択肢はないから、紀伊先生が言わない限り粟田先生が知ることは無いだろう。
「……そういえば高早さんは?」
「ああ、俺を呼びに来てくれて、でも今日は帰るってよ。お礼言っとけよ。」
帰ったのか。あれだけ食い気味に詰めてきたのに。まあこっちとしてはそっちの方がいいにこしたことはないけれど。
「そうなんだ……。でも心配には及ばないよ、本当にただの貧血だ。」
「嘘よ。…………ごめんなさい、先生呼んでくる。」
彼女は自分の言葉を飲み込むようにして足早に保健室を出ると、保健室の目の前にある階段を登っていく音がこちらまで聞こえた。
危ない。これ以上詰められたら本当に全てを吐かされそうだった……。高早千尋にはなるべく関わらない方がいい。
うぅ、まだあまり体調が優れない。そもそも万全な時なんてほとんどないけど。特に最近はいよいよ死にそうな匂いがプンプンしてる。自分のことだけど。
そんなことを思っているとさっきと同じように階段を下る音が響き渡る。おそらく足音的に、二人だろうから恐らく高早さんと養護の紀伊先生だろう。
「浪谷、大丈夫か?」
予想はすぐに覆された。ドアから入ってきたのは紀伊先生と高早さんではなく、担任の粟田先生だった。
俺の病気のことは紀伊先生しか知らない。でも、もしかしたら今回の一件で粟田先生にも伝わってしまったかもしれないな……。倒れたのは失態だ。
「粟田先生、大丈夫。すみません、授業出られなくて」
「大丈夫だ、健康第一だからな。家でやれそうだったら今日のプリントやってみてくれ。さっき高早が浪谷の鞄に入れてくれてたから入ってると思うからさ。」
「あ、はい。ありがとうございます。………あの」
「なんだ?」
この感じは……紀伊先生は粟田先生に伝えていないのか?
「あ、いえなんでもないです。」
なら自分から話す必要は無い。
正直、俺が紀伊先生の立場なら、いつ死ぬか分からない生徒が自分以外の誰にも死ぬことを校内で言っていない。しかも急に倒れたりして危うい。
そんな奴がもしいたら、おれは少なくとも自分の負担の軽減も兼ねて他の先生に秘密裏に伝えるだろうな。でも粟田先生は嘘がつけないタイプの人間のはずだから本当に知らない感じがする。
「あ、そうそうこれ鞄ね。高早さんが持ってきてくれたよ。」
紀伊先生の手には俺の鞄が握られていた。
「ありがとうございます。」
「礼は彼女に言った方がいいと思うよ。……あと、粟田先生には秘密にしておいた。俺の判断だ。だけど、言ってくれれば先生には俺から話してもいいし、自分から話してくれても問題ない。」
鞄を渡すために俺に近づいた先生はぼそっとそう零した。やはり言っていなかったのか……。
でも俺に自分から話すという選択肢はないから、紀伊先生が言わない限り粟田先生が知ることは無いだろう。
「……そういえば高早さんは?」
「ああ、俺を呼びに来てくれて、でも今日は帰るってよ。お礼言っとけよ。」
帰ったのか。あれだけ食い気味に詰めてきたのに。まあこっちとしてはそっちの方がいいにこしたことはないけれど。
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