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2.I meet you.
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俺は人が生き返ったり、奇跡が起きて死亡を回避したりする物語が嫌いだ。
だって現実はそうじゃないから。
どんな奇跡が起きたら俺は死なない?
何をすれば生き返る?
そんなの解るはずがないし、そもそもあり得ない。それなのに作者の手で生き返った人物はまるで何事もないかのようにのうのうとその後の人生も生きている。
理不尽極まりないと思うのは、俺だけか。
ああ、身体が妙にだるい。謎の倦怠感が俺に残りの命を伝えようとしてくる。これじゃあ授業になんて集中できやしない。
トントン、と小さく机がなった。隣の席の子は俺の机に小さなメモを置いた。
『大丈夫? 体調悪そうだけど保健室行く? 私保健委員だから連れて行くよ?』
この子の名前はなんだっただろうか。まだ2年になって2週間。名前と顔が全然一致しない。
メモを返すのも面倒なので首を振る。もちろん横に。するとその子はもう一度紙の切れ端に何かを書いて俺の机に再度置いた。
『もう少しで授業は終わるから、せめてその後に行こうよ。私は高早千尋。』
授業中に保健室に行く奴なんて、それなりの重症だ。そんな目立つことをすれば周りにどうしたと聞かれかねないし、担任に詳しく聞かれても面倒だ。だけど授業外ならサボりで通せばまあせいぜい小言を言われるくらいだろう。
『一人で行くから平気。ありがとう』
ああ、気持ち悪さが増してきた。吐きそう。
チャイムが授業の終わりを告げる。挨拶をしてすぐに保健室へ向かった。教室のすぐ向かいにある階段を下って二つ下の一階の保健室まで向かう。
いつもより廊下の声がうるさく聞こえる。頭に響く。気持ちが悪い。
「失礼します、せんせ……」
これは……多分だめ…………だ…………。
「浪谷……!」
紀伊先生の声が、少し聞こえたのを最後に俺は意識を失った。次に目を覚ましたとき、俺はとても後悔した。彼女が、高早さんが後ろからついてきていることに気が付かなかったからだ。
「あ、起きた? 大丈夫? どこか痛くない? 気持ち悪くない?」
いきなり質問攻め。寧ろ頭が痛くなる。どのくらいの時間気を失っていたのか、ベッドからは保健室の時計が見えない。
「ああ、今は五時。授業はもう終わってみんな部活をやってる時間だよ。」
なんでわかったんだ時間が知りたいって。いや俺の意思なんて関係なくただ時間を言っただけかもしれない。
「別にどこにも異常はないよ。先生は?」
「会議があるってついさっき出て行っちゃった」
彼女と二人はなんだか気まずい。なんで倒れた、とかどこか悪いの、とか聞かれそうだし……。
「君病気でしょう? 体も相当弱ってるみたい。それ大丈夫なの……?」
まさか病気かどうかが確定事項だとは。まあでも倒れただけなら知識がなくてもやばい病気かと思うものなのかもしれない。
「全然、ただの貧血だよ。」
「嘘。顔色は悪いけど貧血ならもっと黄色っぽいはずだし、爪の色もさほど白っぽくなってない。」
ただの保健委員に妙にここまで問い詰められるとは思わなかった。
「そんなこと……」
まずいここで言葉に詰まったら尚のこと貧血説が薄れてしまう。だけど、正直病気について詳しいわけじゃないし、言い返せるような知識を持っていない。
「……私の家、病院なの。だから貧血の人なんて沢山見た。でもその人たちと比較してあなたは貧血の症状が薄すぎる。なのに貧血で倒れたなんて、ありえない、と思うんだけど。」
「病院……」
なるほど、だから詳しいのか。でもそれはこちらとしてすごく都合が悪い。仮にここで交わせたとして、このあと一年間同じクラスなわけだ。日に日に弱っていったらいくら隠してもバレかねない。
「そう、ほらこの学校に検診に来てくれる亥角医院の娘なの」
「でも君は亥角って名前じゃ……」
「母方の病院なの。だからお母さんの旧姓ってわけ。」
だって現実はそうじゃないから。
どんな奇跡が起きたら俺は死なない?
何をすれば生き返る?
そんなの解るはずがないし、そもそもあり得ない。それなのに作者の手で生き返った人物はまるで何事もないかのようにのうのうとその後の人生も生きている。
理不尽極まりないと思うのは、俺だけか。
ああ、身体が妙にだるい。謎の倦怠感が俺に残りの命を伝えようとしてくる。これじゃあ授業になんて集中できやしない。
トントン、と小さく机がなった。隣の席の子は俺の机に小さなメモを置いた。
『大丈夫? 体調悪そうだけど保健室行く? 私保健委員だから連れて行くよ?』
この子の名前はなんだっただろうか。まだ2年になって2週間。名前と顔が全然一致しない。
メモを返すのも面倒なので首を振る。もちろん横に。するとその子はもう一度紙の切れ端に何かを書いて俺の机に再度置いた。
『もう少しで授業は終わるから、せめてその後に行こうよ。私は高早千尋。』
授業中に保健室に行く奴なんて、それなりの重症だ。そんな目立つことをすれば周りにどうしたと聞かれかねないし、担任に詳しく聞かれても面倒だ。だけど授業外ならサボりで通せばまあせいぜい小言を言われるくらいだろう。
『一人で行くから平気。ありがとう』
ああ、気持ち悪さが増してきた。吐きそう。
チャイムが授業の終わりを告げる。挨拶をしてすぐに保健室へ向かった。教室のすぐ向かいにある階段を下って二つ下の一階の保健室まで向かう。
いつもより廊下の声がうるさく聞こえる。頭に響く。気持ちが悪い。
「失礼します、せんせ……」
これは……多分だめ…………だ…………。
「浪谷……!」
紀伊先生の声が、少し聞こえたのを最後に俺は意識を失った。次に目を覚ましたとき、俺はとても後悔した。彼女が、高早さんが後ろからついてきていることに気が付かなかったからだ。
「あ、起きた? 大丈夫? どこか痛くない? 気持ち悪くない?」
いきなり質問攻め。寧ろ頭が痛くなる。どのくらいの時間気を失っていたのか、ベッドからは保健室の時計が見えない。
「ああ、今は五時。授業はもう終わってみんな部活をやってる時間だよ。」
なんでわかったんだ時間が知りたいって。いや俺の意思なんて関係なくただ時間を言っただけかもしれない。
「別にどこにも異常はないよ。先生は?」
「会議があるってついさっき出て行っちゃった」
彼女と二人はなんだか気まずい。なんで倒れた、とかどこか悪いの、とか聞かれそうだし……。
「君病気でしょう? 体も相当弱ってるみたい。それ大丈夫なの……?」
まさか病気かどうかが確定事項だとは。まあでも倒れただけなら知識がなくてもやばい病気かと思うものなのかもしれない。
「全然、ただの貧血だよ。」
「嘘。顔色は悪いけど貧血ならもっと黄色っぽいはずだし、爪の色もさほど白っぽくなってない。」
ただの保健委員に妙にここまで問い詰められるとは思わなかった。
「そんなこと……」
まずいここで言葉に詰まったら尚のこと貧血説が薄れてしまう。だけど、正直病気について詳しいわけじゃないし、言い返せるような知識を持っていない。
「……私の家、病院なの。だから貧血の人なんて沢山見た。でもその人たちと比較してあなたは貧血の症状が薄すぎる。なのに貧血で倒れたなんて、ありえない、と思うんだけど。」
「病院……」
なるほど、だから詳しいのか。でもそれはこちらとしてすごく都合が悪い。仮にここで交わせたとして、このあと一年間同じクラスなわけだ。日に日に弱っていったらいくら隠してもバレかねない。
「そう、ほらこの学校に検診に来てくれる亥角医院の娘なの」
「でも君は亥角って名前じゃ……」
「母方の病院なの。だからお母さんの旧姓ってわけ。」
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