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私を形成してるモノ
第10話 ほんのちょっと、そう思うくらいなら(2)
しおりを挟む「もしかして……変ですか?」
「ううん、可愛くていいと思う」
ホントに?
微笑みとを通り越して笑いたくなっちゃってるのが口元に出ちゃってるけど。
そんな事を内心で思いながら、私はちょっと苦笑した。
「それはちょっと、30歳に対して使う褒め言葉じゃないですね」
可愛いって。
それこそちょっと可愛らしすぎやしないだろうか。
そう思ってのわたしの言葉に「何言ってんの」と反論の声が上がった。
「美里ちゃんはまだピチピチでしょうが」
いやいや言ってももう30よ?
そう思って「いやでも」とすぐに思い直す。
農業者の年齢層は年々高齢化し続けている。
50代でも若手と言われたりするのだ、30なら若手も若手なのである。
収穫した全てのトマトをキレイに拭ききって袋詰にし、出荷のために車に乗せる。
その車が出発する時、その車の運転手であり、農業ベテランであり、そして何より人生のベテランでもある奥さんが、窓を開けてこう言った。
「習慣って、大人になると付けるの中々難しいのよ? だからそういう常識を教えてくれたお母さんに感謝しなきゃね」
そう告げた直後に発信する車。
その姿を何となしに眺めながら、私は彼女の言った『感謝』という言葉を自身の内心でゆっくりと転がす。
直接ソレを告げるには、あまりに気恥ずかしすぎた。
しかしまぁ心の中でほんのちょっと思うくらいなら、もしかしたらそれも良いのかもしれない。
おあつらえ向きに、今日はちょうど母の日だ。
必要に迫られるでなく実家に帰ってみる事も、たまには良いのかもしれない。
~~Fin.
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