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母という人
第4話 私は母が、嫌いなのだ(2)
しおりを挟む「新しく始めた事っていえば『ご飯をを作る事』くらいだけど、ネットで時短レシピ検索して作るのも意外と楽しいんだよね、大体美味しいし」
それに、最悪失敗しても自分が食べるものなのでプレッシャーも皆無だ。
むしろ自分が好きなものを食べれる幸せ。
好物ばかりじゃなくて野菜とかもちゃんと食べなきゃダメな事は分かってるけど、それでもちょっとくらいなら、一人暮らしならではの自由を満喫してもバチは当たらない。
なんて所まで考えて、私はふと気付いてしまった。
食器洗い、掃除、洗濯。
それだけではない。
ごみの分別やお風呂に入った後には必ず換気扇を回す事、それに目覚ましをかけて自分で起きる事とかも。
その全てが母からの言いつけだという事に。
例え仕方がなしだったとしても、続ければ習慣になる。
そのお陰で新生活が始まった今、他の人よりちょっとだけ楽できてるのかもしれない。
そんな事実にぶち当たって、私は思わず仏頂面になった。
確かにそうと、言えなくもない。
しかしそれを完全に肯定してしまうと、それは母に感謝をするのと同義になってしまう。
「……感謝なんて出来るはずがない」
引っ越し荷物の定位置が決まり既にその全てがキレイに収まりきった部屋で、私の声がポツリと浮いた。
だって私は、母のお小言にずっと不満を持っていたのだ。
今まで反論しなかったのは、母に反論したい事がなかった訳でも無ければ母を気遣っての事でもない。
ただ面倒だったから我慢していただけなのだ。
身についた習慣は、そんな私の我慢の副産物でしか無い。
我慢した事を感謝するなんて、そんなのあり得ない。
私は母がーー嫌いなのだ。
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