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エピローグ

第1話 セシリアの誤算(1)

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 セシリア達が応接室を出た後、ヴォルド公爵達もすぐに部屋を後にした。

 主催の彼らにはしなければならない事が沢山ある。
 いつまでも彼らばかりに構ってはいられないのだ。


 しかし部屋を出るときに、公爵達は侯爵に一定の配慮をしていった。

「会場に来る前に、この部屋で少し休憩すると良い」

 そうモンテガーノ親子に許可を出してしていったのだ。
 その為、現在この部屋に居るのは例の親子と公爵と入れ違いに入ってきた侯爵付きの執事だけである。
 

 だからだろうか。

「何なんだ、あの態度はっ!!」

 出先であるにも関わらず、侯爵・グランは吐き捨てる様にそう言った。
 つい今までは被っていられた貴族の仮面などは、既にかなぐり捨てた後である。



 彼が苛立っている理由は、至極簡単だ。
 自分の思い通りに事が進まなかったからである。

「あいつら……足元を見て発言をしてきおって」

 言いながら刻まれるリズムは、彼の足元から発せられていた。

 トントントントン。
 そんな音は、確かに彼の苛立ちの証明だっただろう。
 しかし絶妙に早いテンポのそれは同時に、彼の苛立ちを加速させる一員にもなっている。
 完全なる悪循環だ。

「そもそも、だ。『必要ない』と言うのなら最初から謝罪など要求しなければいいのだ、全く忌々しい」

 敢えて自身で要求しておきながら固辞する。
 それは、侯爵から見れば嫌がらせ以外の何者でもなく、同時に馬鹿にされている様な気にさせられたのだ。


 しかし彼は、苛立ちのあまり見えていない。

 あくまでもあれは、クラウンの態度があった上での固辞だ。
 それが無ければ別に嫌味も何もない、ただの謝罪の場になり得た筈だったのだという事が。


 そして、あの場での謝罪要求は別におかしなことではない。
 むしろそれが筋というものだったろう。

 しかしそれらを全て棚に上げて、彼は悪態をつく。

「見た目に騙されてはならんな、アレも結局は『オルトガン』なのだ」

 まるで自分に言い聞かせるように告げられたその言葉は、誰の答えを得ることもなく虚空に消える。

 にも関わらずそれに頓着しないのは、ただ自分の中に溜まったストレスを発散したいだけだからなのだろう。


 すぐに頭に血が上り、恨み事を言い、逆恨みして仕返しをする。
 それらは全て、長年に渡り彼がオルトガン伯爵家へと行ってきた事だった。

 しかし出先でのこの口の軽さは、普段の彼ならばあり得ない。
 彼だって貴族家の当主だ。
 普段から流石にそこまでに軽率ではない。

 それでもこの現状なのは、今まさに感情が臨界を迎えようとしているからに他ならない。

 
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