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第二章:初めての社交お茶会に出向く。

第5話 クラウンの言い分 -王城パーティー編-(2)

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 エドガー兄様曰く、「淑女教育が行き届いた、器量の良い、従順な女」というのが『良い女』の条件らしい。

(折角自分で選べるんなら、やっぱり『良い女』を選びたいよなっ)

 侯爵家の俺に相応しい相手を。
 そう思いながら、俺は彼の言葉をそのまま、自身の理想として頭上に掲げた。



 『青田買い』の手順をエドガー兄様から聞き出した後で、俺は彼と別れた。

 そして、すぐに同年代の子女達がいるエリアへと足を運び、見知った面々と合流を果たす。


 彼らはみんな、俺の家が所属している派閥の家の子だ。
 随分と前から交流があるから、互いに顔も名前も既に知っている。


 俺は人気者だった。
 俺の姿を見つけるや否や、彼らはこぞって寄って来る。
 俺はそんな子女達の相手をしてやりながら、ふとした拍子に少し遠くへと目を遣った。

 そしてそこに『花』を見つける。


 ソレは、黄色の『花』だった。

 艶やかなオレンジガーネットの髪に、ペリドットの丸くて大きな瞳。
 陶器の様な白い肌と華奢な雰囲気を纏った、可愛らしい女の子がそこには居た。

 彼女は、他の令嬢達と何やら話をしている様だった。
 
 その中で時折浮かべる、ふわりとした笑顔。
 それが、僅かに体を揺らす度に光る装飾品と相まって美しい。
 


 ――あぁ、『これ』だ。
 俺は直感的にそう思った。

 

 彼女は、俺の掲げた理想にピッタリに見えた。

 器量は他と隔絶した良さ。
 流れるような所作も美しい。
 それに何よりも、とても大人しそうな女の子だ。
 今後、さぞかし従順に育ちそうな。


 見つけた得物に、俺の口角が独りでに上がった。

 そしてそんな俺の変化に、周りの子息達がすぐに気付く。

「何か面白い事でもあったんですか? クラウン様」

 子息達の内の一人が、そんな風に尋ねて来た。


 興味津々な声の『子分』に、俺はエドガー兄様の話の内容を話して聞かせた。
 そして「アレがそのターゲットだ」と、例の彼女を指し示す。

 すると皆、一度納得顔を浮かべた後で今度は口々にこんな事を言い始めた。

「可愛いですね、あの子。確かにクラウン様に相応しいかもしれません」
「クラウン様に声を掛けられたら、あの子もきっと喜びますよ!」
「何って言ったって侯爵家の次男だもんな、クラウン様」
「クラウン様って堂々としてるし、俺らのリーダーだし間違いないっす!!」

 賛同の嵐に、俺は「そうだろう、そうだろう」と気持ちよく頷いた。

 そしてすっかり上がりきった気持ちを携えて、行動を開始した。

 全ては理想の結婚相手を得るために。



 近くにあったジュースのグラスを手に取り、期待に胸を膨らませながら彼女の方へと歩み始める。

 すると、背中越しに数人分の足音が続いてきた。
 おそらく『子分達』だろう。

(『子分達』を引き連れて会場を闊歩する俺、なんかちょっとカッコイイんじゃ……)

 そうと気付いてしまえば、テンションは鰻登りだ。

 この状況にほろ酔い気分で、俺は彼女との距離を詰める。

 そして――。

 俺は予定通り、見事に『偶然の事故』を演出した。

 しかし何故か、それ以降は思い描いた通りにはならなかった。

 何故だ。
 俺はちゃんと兄様の言う通りにしたのに。
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