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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第1話 野次馬したい家族を置いて(2)
しおりを挟む「招待されていない2人を連れて行く。傍から見れば、それは『セシリアを守っている』様に見えてしまう」
何も出来ない末の妹を兄姉が守っている図。
少なくとも、招待していない事を知っている人間にはそのように映るだろう。
そしてそれは、今後のセシリアの為には良くない。
「貴方が実際に護られなければ何も出来ない『ただのお飾り』ならそれも良いでしょうけれど、貴方はそうではないでしょう?」
十分、周りの大人達と渡り合っていける。
ならば不必要な事をして周りに間違った認識を植え付けわざわざ相手に舐められに行く必要などどこにもない。
クレアリンゼは、堂々とそう言ってのけた。
そこにはセシリアに対する信頼が見て取れる。
クレアリンゼの言った事に、セシリアは反論のことばを持っていない。
しかしまぁ、兄姉が本当に悔しがっていたので。
「……野次馬をしたがっていたお2人には、帰ったらたっぷりと今日のお土産話をする事にします」
「そうね、それが良いわ」
セシリアの思い出し苦笑に、クレアリンゼが「帰ってからが楽しみね」と笑顔で応じる。
その笑顔が、会場で何か動きがあるどころか、まるでお土産話に相応しい『何か』が起きる事を予知しているかのようで、セシリアは何とも複雑な気分になってしまった。
そして、場にはまた些かの沈黙が降りた。
カタコトカタコトという等速の音が耳朶を優しく叩く。
そんな中、クレアリンゼが「ふふふっ」と含み笑いをした。
(……どうしたんだろう?)
彼女の視線は、間違いなくセシリアを捉えていた。
しかしセシリア自身には、全くもって笑を向けられる心当たりが無い。
セシリアが首を傾げると、おそらくその心情を察したのだろう。
まるで言い訳をするかの様に「いえ」と口を開く。
「何だかとても、楽しみで」
「? 何がです??」
要領を得ない母の言葉に再び首を傾げると、彼女は上品にも口元に手を当ててコロコロと笑い始めた。
「『色々と』よ。セシリアと外のお茶会に行くのは、今日が初めてだしね」
もう一緒に社交場に行ける歳になったのね、早いものだわ。
頬を緩ませながらそう言ったクレアリンゼに、ハッとする。
言われれば、確かにそうだ。
母とのお茶会なんて、家では昔から毎日のようにしてきている。
だから『外での初めてのお茶会』という言葉が、何だかちょっとくすぐったい。
その気恥ずかしさを吹き飛ばす様に、セシリアは一度コホンと咳払いをしてみせた。
そして「ソレ繋がりで、ちょうど聞きたい事があったのですが」と母に尋ねる。
「家で行うお茶会と今回では、何か違う心構えが必要でしょうか」
社交におけるお茶会における前提知識は、セシリアの脳内データベースにも入っている。
しかし。
(もしかすると現場では、知識(ソレ)とはまた違う『注意すべき事』があるかもしれない)
これは、そう思っての娘の質問だった。
そんなセシリアに、クレアリンゼは「そうね……」と少し思案顔になった。
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