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第一章:奔走する者と、機を待つ者。
第11話 モンテガーノ侯爵の悪あがき
しおりを挟むお茶会への参加を拒否された翌日。
「どうしたものか」と頭を悩ませたグランは、とある方策を思い付いた。
(断られたのは、『モンテガーノ侯爵家が主催だから』だ。ならば偶々同じ社交場に居合わせたのならばどうだろうか)
それならば「我が家が主催のお茶会に出ない」という向こうの言葉にも沿うし、こちらは周りに和解アピールをする事ができる。
まさか公の場で上の立場である我が家を蔑ろにする事も無いだろう。
これは良い、名案だ。
心中でそんな自画自賛をした後で、グランは「思い立ったが吉日」と言わんばかりにすぐさま行動を起こした。
まずはバエルに指示を出す。
セシリアが参加する社交場がどこかを調べてもらう様に、と。
そして一人、ほくそ笑んだのだった。
これで私の問題もすぐに解決だ。
そう、信じて。
調査結果は、その翌日には出た。
しかし結果は、グランにとって予想外のものだった。
「……何? 『どの社交場にも参加予定が無い』だと?」
片眉を釣り上げて「どういう事だ」とバエルに問う。
威圧的なその声を受けて、僅かに居心地悪そうにバエルが身じろぎをした。
しかしそれもほんの一瞬だ。
彼は忠実な執事として、その仕事を全うする。
「はい。近日開催が決定している社交場へのセシリア様の参加は0です。それどころか社交界デビュー以降、現在に至るまでただの一度も社交に参加していないようで……」
そんな彼の報告に、グランは思わず「グゥッ!」と悔しげな声を上げる。
(……まさかセシリア嬢が社交場に顔を出していないとは)
社交会デビューの年には普通、親が子供を社交場に連れ出すものだ。
そうやって親の縁を子に受け継がせる為の準備をする。
だから彼女が社交場に出ない可能性など、全く考慮の外だった。
しかし。
(どんなに良い案だとしても、実行出来ないのならば意味が無い。さて、どうしたものか……)
不機嫌そうな顔で、グランは更に考える。
そして妙案を思い付いた。
(彼女に社交の出席予定が無いのならば、こちらでそれを作ってしまえば良いのではないか……?)
幸いにも、グランは『革新派』の重鎮だ。
そのツテを辿れば、他人が主催の社交場など簡単に用意する事ができる。
この件で私が秘密裏に動いている事は、できれば他の貴族に知られたくはなかったが、この際仕方が無い。
(よし、奴らにお茶会や夜会を主催させよう)
そしてその招待状を彼女宛に送ってもらい、彼女からの参加連絡が来たら我が家もその社交に参加する。
そして偶然の居合わせからの、和解アピールだ。
(なんて妙案だ! これなら間違いなく上手くいく!)
直感的な手ごたえを感じて、グランはグッと拳を握った。
そして意気揚々と自身の伝手を辿り始める。
結果から言うと、彼は複数の貴族を通じてセシリア宛に社交の招待状を送らせる事に成功した。
そして彼女の返答内容を横流ししてもらう事にも。
因みに社交の内容について、グランは貴族達にアドバイスをした。
より相手の気を引く為の趣向を盛り込み、昼のお茶会・夜の社交パーティーなどと開催時間帯もずらして「その中のどれか一つには彼女が引っかかるよう」と。
(あとは彼女がどの社交に参加するか、決めるのを待つだけだ)
これでもう勝ったも同然。
そんな気持ちで、グランは数日の時を過ごしたのだった。
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