伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜第二王子に狙われてるので、セシリアは口で逃げてみせます〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
上 下
55 / 63
セシリア、第2王子と初バトル

第2話 心酔従者・ジェームス(2)

しおりを挟む



 そんな時だ。
 クスリというかすかな声が、ジェームスの耳を撫でた。
 その声に誘われるようにして視線を上げれば、そこには苦笑を浮かべた主人の姿がある。

「仕方がないんだよ。あの時、『権利』という言葉を使った理由。それもきちんとあるんだから」
「王族としての権力を振り課さず事で、兄君から目をつけられるような事をしたくなかったんでしょう?」

 あの時はその兄君も同席していたから尚更だ。
 そんな風に答えれば、主人は「まぁそれも理由の一つではあるんだけどさ」と一言言い置いてから更にこんな風に続けられた。

「強制の言葉は、良くも悪くも相手に強いインパクトを与える。それをあの場でやってみろ、貴族たちから『王子が貴族を権力で従わせた』と思われかねない。確かに権力的には王族の方が上だが、人の数は圧倒的に貴族の方が多い。暴君過ぎる王にもし彼らが反旗を翻したらと考えると、後々面倒な事になるだろう」

 だからあの場で彼女の今後の言動を縛る様な言葉を使う事を避けたのだ。
 そんな風に言った彼に、ジェームスは大きな衝撃を受けた。

(何ということだ……)

 思わず口から出かかった感嘆は、ギリギリの所で心の内に留めた。

 しかし表情は実に素直である。
 大きく目を見開いて、ジェームスは微笑む主人に釘付けだ。


 主人の頭の良さや思慮深さについては、勿論知っているつもりだった。
 しかし、それでも。

(殿下はまだ10歳。まさかその年で既に王族としての自覚があるどころか、周りに与える影響を加味した上で行動している)

 今までジェームスは、主人を尊敬し、敬愛してきた。
 しかし。

(正に感服だ)

 「すごい、我が主人」と思いつつも「さすが我が主人」という思いが拮抗する。
 敬う気持ちの上から更に敬う気持ちを塗りたくって完全に武装された彼の心は、もはや心酔と言っても過言ではない。



 しかしその主人が、「完敗だよ」と言って息を吐いた。

「つまりあの時の私にとっては『権利』という言葉を使う事が最適解だった。彼女はそんな私が見せた『隙』を的確に突いて見せたんたよ」

 それは、実質的な敗北宣言に聞こえた。
 だからジェームスは心の中で激しく動揺する。

しおりを挟む

●本作の続編はこちらから。
 ↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜

●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
 ↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。

●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
 ↓ ↓ ↓
【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。

●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
 ↓ ↓ ↓
幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。 
感想 0

あなたにおすすめの小説

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

召喚をされて期待したのだけど、聖女ではありませんでした。ただの巻き込まれって……

にのまえ
ファンタジー
別名で書いていたものを手直ししたものです。 召喚されて、聖女だと期待したのだけど……だだの巻き込まれでした。

異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ! 実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・

わけあって美少女達の恋を手伝うことになった隠キャボッチの僕、知らぬ間にヒロイン全員オトしてた件

果 一
恋愛
僕こと、境楓は陰の者だ。  クラスの誰もがお付き合いを夢見る美少女達を遠巻きに眺め、しかし決して僕のような者とは交わらないことを知っている。  それが証拠に、クラスカーストトップの美少女、朝比奈梨子には思い人がいる。サッカー部でイケメンでとにかくイケメンな飯島海人だ。  しかし、ひょんなことから僕は朝比奈と関わりを持つようになり、その場でとんでもないお願いをされる。 「私と、海人くんの恋のキューピッドになってください!」  彼女いない歴=年齢の恋愛マスター(大爆笑)は、美少女の恋を応援するようになって――ってちょっと待て。恋愛の矢印が向く方向おかしい。なんか僕とフラグ立ってない?  ――これは、学校の美少女達の恋を応援していたら、なぜか僕がモテていたお話。 ※本作はカクヨムでも公開しています。

捨てられた私は森で『白いもふもふ』と『黒いもふもふ』に出会いました。~え?これが聖獣?~

おかし
ファンタジー
王子の心を奪い、影から操った悪女として追放され、あげく両親に捨てられた私は森で小さなもふもふ達と出会う。 最初は可愛い可愛いと思って育てていたけど…………あれ、子の子達大きくなりすぎじゃね?しかもなんか凛々しくなってるんですけど………。 え、まってまって。なんで今さら王様やら王子様やらお妃様が訪ねてくんの?え、まって?私はスローライフをおくりたいだけよ……? 〖不定期更新ですごめんなさい!楽しんでいただけたら嬉しいです✨〗

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

高校球児、公爵令嬢になる。

つづれ しういち
恋愛
 目が覚めたら、おデブでブサイクな公爵令嬢だった──。  いや、嘘だろ? 俺は甲子園を目指しているふつうの高校球児だったのに!  でもこの醜い令嬢の身分と財産を目当てに言い寄ってくる男爵の男やら、変ないじりをしてくる妹が気にいらないので、俺はこのさい、好き勝手にさせていただきます!  ってか俺の甲子園かえせー!  と思っていたら、運動して痩せてきた俺にイケメンが寄ってくるんですけど?  いや待って。俺、そっちの趣味だけはねえから! 助けてえ! ※R15は保険です。 ※基本、ハッピーエンドを目指します。 ※ボーイズラブっぽい表現が各所にあります。 ※基本、なんでも許せる方向け。 ※基本的にアホなコメディだと思ってください。でも愛はある、きっとある! ※小説家になろう、カクヨムにても同時更新。

処理中です...