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セシリア、第2王子と初バトル
第4話 伊達に10年も兄姉をやってはいない(1)
しおりを挟む自らの内に沈み始めたセシリア。
そんな末妹に、兄姉は目敏く気が付いた。
そして互いに顔を見合わせて、よく似た苦笑を浮かべあう。
セシリアが何を考えているのか。
2人はそれに的確な当たりをつけた。
そしてその上で、両者共に同じ結論に至る。
その謎がもし時間さえあれば解ける類のものだとしたら、2人は幾らだって彼女の意識が浮上するのを待っただろう。
しかし生憎、解けるとは思えない。
第二王子に対する行動予測については、キリルとマリーシアもセシリアと同じ見解だった。
だからこそ、思うのだ。
何かが足りていないのだ、と。
思考の為の材料が足りないのだから、幾ら考えたところでゴールに辿り着く事はあり得ない。
だからこの思考は、意味が無い。
それをアイコンタクトで共有して、それから「それにしても」と未だに思考の海に深く沈んでいる末妹を2人して見遣る。
両親を含め、オルトガン伯爵家の人間はしばしばこういう風になる事がある。
しかしセシリア程、瞬間的にそして深く思考の海へと沈む者は居ない。
彼女の知的好奇心の高さとソレに掛ける集中力は、一族の中でも群を抜く。
それはもう、同じ血を持つ彼らが呆れる程に。
そして、だからこそ兄姉は迷宮に迷い込んでしまった妹にこう告げる。
「セシリー。考え事は一旦置いといて、ちょっとこれも食べてみない?」
先に声を掛けたのはキリル。
そして。
「こちらの紅茶もいかが? 先日お父様が社交場のお土産に持って帰ってこられた茶葉なのだけれど、とってもセシリー好みだと思うの」
それに続いたのが、マリーシア。
彼女が言いながら自身のメイドに目配せすると、その意志を受け取って彼女は指定された茶葉を準備し始める。
2人はセシリアの兄姉、伊達に10年間も一緒に居ない。
彼らはこの世で数少ない『両親以上にセシリアを熟知している人物』であり、どう扱えば彼女の気を引けるのかはよく知っている。
2人の言葉に、案の定セシリアは思考の海から浮上した。
まずは兄から勧められたクッキーを素直に受け取って口に運び、口内に広がった『予想外』にすぐさま目を白黒させる。
「何ですか、これ。クッキーなのに、甘くないっ!」
思わずそんな声を上げたセシリアに、キリルは「ふふふっ」と笑ってみせる。
「珍しいだろう? これは他国のお菓子で、練り込んであるのはその国で使われている香辛料なんだってさ」
ちょっとしたドヤ顔で解説してみせたキリルもまた、初めてこのお菓子に出会った時にはちょうど今のセシリアと同じような感想を抱いていた。
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