伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜第二王子に狙われてるので、セシリアは口で逃げてみせます〜

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セシリア、第2王子と初バトル

第3話 落ちていく思考、沈むセシリア(1)

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「あの時の沈黙は『あわよくば』を狙った物でした。正直あんなに上手く行くとは思っていなかったので自分でも驚きましたよ」

 何故あの時あんなにすんなりと論議を放棄したのか良く分からないのですが。
 そう言った後で「しかし」と言って言葉を続ける。

「あれはあまりにも酷い言葉の歪曲でした。呆れを通り越して少々腹も立ったので、もし彼があそこで『それで良い』と会話を投げなかったとしてもそれなりの抵抗はしたと思います」

 『仲良くする権利』を『侍る事の承認』と言う、そんな暴挙が自らに降りかかるのを指を加えて見ている事など出来る筈もない。


 『侍る』とは即ち、付き従う事である。
 あくまでの対等の意味を含む『仲良くする』とは雲泥の差だ。

 そして「王の前でそれを『承認』されている」という事は、即ち「『義務』である
」という事だ。
 これに至っては雲泥の差どころか、『権利』とは正反対の言葉になってしまうのだ。


 それを彼は「同じような物じゃないか」と言った。
 しかしそんなの、冗談じゃない。


 そうでなくても第二王子は『面倒』なのだ。
 彼が改変した言葉は間違いなく今以上の『面倒』を呼び込む。
 そうと分かっていてまさか放っておくこと等、出来る筈が無い。

「まぁとりあえず今回は乗り切れたみたいだね」
「キリルお兄様の言う通り、本当に『とりあえず』ではありますが」

 兄が浮かべる苦笑に、セシリアも似たような表情を返す。
 するとキリルは、そこから彼女の懸念を感じ取ったようだ。
 紅茶のカップをゆっくりソーサーへと着地させながら、こんな風に言葉を続ける。

「彼がこのまま引き下がるなんてそんな都合の良い考えは、まさかしていないんだろう? セシリー」
「そうですね、非常に残念ではありますが」

 正に今井大ていた懸念事項を当てられて、セシリアは小さなため息と共に苦笑を深めた。


 セシリアが抱いた懸念は、彼が彼女の予想外の言動をした所にある。


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●本作の続編はこちらから。
 ↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜

●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
 ↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。

●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
 ↓ ↓ ↓
【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。

●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
 ↓ ↓ ↓
幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。 
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