50 / 63
セシリア、第2王子と初バトル
第3話 落ちていく思考、沈むセシリア(1)
しおりを挟む「あの時の沈黙は『あわよくば』を狙った物でした。正直あんなに上手く行くとは思っていなかったので自分でも驚きましたよ」
何故あの時あんなにすんなりと論議を放棄したのか良く分からないのですが。
そう言った後で「しかし」と言って言葉を続ける。
「あれはあまりにも酷い言葉の歪曲でした。呆れを通り越して少々腹も立ったので、もし彼があそこで『それで良い』と会話を投げなかったとしてもそれなりの抵抗はしたと思います」
『仲良くする権利』を『侍る事の承認』と言う、そんな暴挙が自らに降りかかるのを指を加えて見ている事など出来る筈もない。
『侍る』とは即ち、付き従う事である。
あくまでの対等の意味を含む『仲良くする』とは雲泥の差だ。
そして「王の前でそれを『承認』されている」という事は、即ち「『義務』である
」という事だ。
これに至っては雲泥の差どころか、『権利』とは正反対の言葉になってしまうのだ。
それを彼は「同じような物じゃないか」と言った。
しかしそんなの、冗談じゃない。
そうでなくても第二王子は『面倒』なのだ。
彼が改変した言葉は間違いなく今以上の『面倒』を呼び込む。
そうと分かっていてまさか放っておくこと等、出来る筈が無い。
「まぁとりあえず今回は乗り切れたみたいだね」
「キリルお兄様の言う通り、本当に『とりあえず』ではありますが」
兄が浮かべる苦笑に、セシリアも似たような表情を返す。
するとキリルは、そこから彼女の懸念を感じ取ったようだ。
紅茶のカップをゆっくりソーサーへと着地させながら、こんな風に言葉を続ける。
「彼がこのまま引き下がるなんてそんな都合の良い考えは、まさかしていないんだろう? セシリー」
「そうですね、非常に残念ではありますが」
正に今井大ていた懸念事項を当てられて、セシリアは小さなため息と共に苦笑を深めた。
セシリアが抱いた懸念は、彼が彼女の予想外の言動をした所にある。
10
●本作の続編はこちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜
●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。
●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
↓ ↓ ↓
【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。
●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
↓ ↓ ↓
幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
『完結』不当解雇された【教育者】は底辺ギルドを再建して無双する〜英雄の娘である私は常識破りの教育で化け物を量産します〜
柊彼方
ファンタジー
「アリア。お前はクビだ」
教育者として上位ギルド『白金の刃』で働いていたアリアはギルド長であるクラウスに不要だと追放されてしまう。
自分の無力さを嘆いていたアリアだが、彼女は求人募集の貼り紙を見て底辺ギルドで教育者として働くことになった。
しかし、クラウスは知らなかった。アリアの天才的な教育にただ自分の隊員がついていけなかったということを。
実はアリアは最強冒険者の称号『至極の三剣』の三人を育てた天才であったのだ。
アリアが抜けた白金の刃ではアリアがいるからと関係を保っていたお偉いさんたちからの信頼を失い、一気に衰退していく。
そんなこと気にしないアリアはお偉いさんたちからの助力を得て、どんどんギルドを再建していくのだった。
これは英雄の血を引く英傑な教育者が異次元な教育法で最弱ギルドを最強ギルドへと再建する、そんな物語。
捨てられた私は森で『白いもふもふ』と『黒いもふもふ』に出会いました。~え?これが聖獣?~
おかし
ファンタジー
王子の心を奪い、影から操った悪女として追放され、あげく両親に捨てられた私は森で小さなもふもふ達と出会う。
最初は可愛い可愛いと思って育てていたけど…………あれ、子の子達大きくなりすぎじゃね?しかもなんか凛々しくなってるんですけど………。
え、まってまって。なんで今さら王様やら王子様やらお妃様が訪ねてくんの?え、まって?私はスローライフをおくりたいだけよ……?
〖不定期更新ですごめんなさい!楽しんでいただけたら嬉しいです✨〗
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
高校球児、公爵令嬢になる。
つづれ しういち
恋愛
目が覚めたら、おデブでブサイクな公爵令嬢だった──。
いや、嘘だろ? 俺は甲子園を目指しているふつうの高校球児だったのに!
でもこの醜い令嬢の身分と財産を目当てに言い寄ってくる男爵の男やら、変ないじりをしてくる妹が気にいらないので、俺はこのさい、好き勝手にさせていただきます!
ってか俺の甲子園かえせー!
と思っていたら、運動して痩せてきた俺にイケメンが寄ってくるんですけど?
いや待って。俺、そっちの趣味だけはねえから! 助けてえ!
※R15は保険です。
※基本、ハッピーエンドを目指します。
※ボーイズラブっぽい表現が各所にあります。
※基本、なんでも許せる方向け。
※基本的にアホなコメディだと思ってください。でも愛はある、きっとある!
※小説家になろう、カクヨムにても同時更新。
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
召喚をされて期待したのだけど、聖女ではありませんでした。ただの巻き込まれって……
にのまえ
ファンタジー
別名で書いていたものを手直ししたものです。
召喚されて、聖女だと期待したのだけど……だだの巻き込まれでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる