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セシリア、第2王子と初バトル
第1話 好奇心擽るものをお供にして(2)
しおりを挟む材料となっているチーズそのものの味を、如何に洋菓子として昇華させるか。
それがこの国におけるチーズケーキの神髄だ。
だから使うチーズの種類や良し悪しは選ぶが、味を邪魔するフレーバーを混ぜない。
それがこの国従来のチーズケーキだった。
しかし。
「この風味……もしかして柑橘、でしょうか?」
口に手を添えながら『未知の味』を解析し始めるセシリアの瞳には、紛れもない好奇心が灯っている。
尋ねているにも関わらず視線がマリーシアではなくケーキへと釘付けなのは、彼女が未知に興味津々だからだ。
3兄妹はみんな揃って好奇心旺盛だが、中でも彼女のソレは群を抜いている。
それを兄も姉も知っているから、二人もプライベートな時間の今は敢えてそれを指摘しない。
妹の姿を一目見れば、気に入ったのだろうという事がありありと見て取れた。
だからだろう、マリーシアは微笑まし気に目を細めながら彼女に頷く。
「えぇ、これは我が領で最近作られた新種の柑橘です。レモンの酸味と蜜柑の甘味を兼ね備えた、食べやすい爽やかさの柑橘。それをチーズケーキに入れてみたのです」
領地で作られたものを使って既存の物を一新する。
これはそんな試みなのだ。
そう彼女は答えたのだった。
その口ぶりに、セシリアはまた少し驚く。
「このケーキを考案したの、もしかしてマリーお姉様なのですか……?」
そう尋ねれば、マリーシアはほのほのと微笑みながら「えぇ。これはまだ試作品ですけれど」と答えた。
そんな彼女を前にして、セシリアは「なるほど」と独り言ちる。
セシリアは両親の紅茶好きを受け継いでいるが、マリーシアは少し趣向が異なる。
マリーシアも勿論紅茶は好きなのだが、それ以上にお茶の時間に食べるお菓子の方に執心だ。
そんな彼女が最近凝っているのが新しい洋菓子の考案なのである。
以前、セシリアは洋菓子の試作に耽り始めた彼女に「何故自分で作ろうと思ったのか」と一度聞いてみた事がある。
その時の彼女は「社交界の流行を作る為の作業ですよ」と言って笑った。
が、あれは十中八九『美味しいお菓子を食べたい』という欲求に素直に従っただけだろうとセシリアは当たりを付けている。
(『社交界の流行を作る』という目的は、確かに彼女の胸の内に秘めているものではあるのだろうけど)
しかしそれは、あくまでも自分の楽しみの『ついで』でしかないのではないかと思っている。
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●本作の続編はこちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜
●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。
●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
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【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。
●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
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幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。
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