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セシリア、第2王子と初バトル
第7話 鉄壁な仮面と、ひどい誤解(1)
しおりを挟む(近くで見ると、やはり綺麗だ)
セシリア・オルトガン。
ずっと「また会いたい」と思っていた相手を前にしてアリティーがまず最初に思ったのが正にコレだった。
それは、10歳の少年が同い年の少女に対して思うにしては少しマセた感想かもしれない。
しかし、彼女にはその言葉が良く似合う。
整った容姿に雰囲気から感じ取れる気品、そして洗練された所作。
幼いにも関わらず『可愛い』よりも『綺麗だ』という言葉が先に出てくるのは、そういったものを直感的に感じ取ったからこそなのだろう。
今日は、王城パーティーの時ほど着飾ってはいない。
しかしそれでもまるで人を惑わす妖精の様な美しさは健在だ。
纏わりついてくる数多の令嬢とは違う。
そう思わせる何かが、彼女にはある。
気持ちがふわりと高揚するのだ、彼女を視界に入れると。
彼女のすぐ隣では、確かセルジアットの三男だというヤツが同じく最敬礼で控えているが、そんな事はどうでも良い。
そのくらい、アリティーはセシリアに釘づけだった。
敬礼のために伏せられている顔と視線。
それはそれで美しい。
が。
(今すぐ顔を上げて、その瞳に私を映し込んでほしい)
そんな独占欲染みた『何か』を持て余し、アリティーは見えないソレに促されて口を開く。
「セシリア嬢、貴方と私の仲だろ? 顔を上げてくれ」
「……私と殿下の間に、『2人の仲』と呼べるほどの何かがこれまで、あったでしょうか?」
顔を上げろと言ったのに、従いはしなかった。
そんな彼女に少し焦れったさのようなものを感じながら、アリティーは逸る心にただ素直に言葉を走らせる。
「何を言ってる、先日の王族パーティーで君は王から『私の近くに侍る事』を承認されたじゃないか」
そう言った時だった。
背中越しにジェームスの咳払いが聞こえて、思わずハッとする。
(あぁ、いけないいけない。私は第二王子、いつだって王子然としていなければならない)
そう自分に言い聞かせ、心の平静を取り戻す。
(冷静でなければ、思い通りになる物もそうならなくなる)
そう思い直して、一つ軽く息を吐く。
それは同時に、彼が「冷静になりさえすれば全ては自分の思い通りに運ぶ」と思っている証拠だった。
しかしそれは、今までの彼の人生が育てた常識だ。
だからそれを「当たり前」と思いこそすれ「奢りや傲慢だ」とは思わない。
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●本作の続編はこちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜
●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。
●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
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【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
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幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。
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