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セシリア、第2王子と初バトル
第5話 俺の主人は、面倒に愛されている(2)
しおりを挟むその先には、とある3つの人影があった。
こちらに向かって歩いて来ているが、足取り的に「社交に疲れたのでちょっと休憩」という感じではない。
迷いなく一直線にこちらへと近付いてくる相手を見るに、どうやら何か明確な目的があっての事のようだ。
その人影の先頭の顔に、ゼルゼンは見覚えがあった。
(あぁ、またセシリアは……『呼んだ』のか)
そう思えば、思わずため息をついてしまいそうになるくらい呆れてしまう。
何に呆れたのかと言えば、『彼女の面倒事に愛される体質に』だ。
実際にはまだ巻き込まれてはいないのだが、間違いなく巻き込まれるだろうという予感がビシビシと感じられてしまっているのだから仕方がない。
(……いやまぁ、もしセシリアに『呼んだ』なんて言ったら「そんな面倒な事、する筈がないでしょ? まったく、人聞きの悪い」なんて事を言いそうだけど)
そんな風に思っている内にも、面倒事は一歩一歩と近づいてきている。
少し心配になって、ゼルゼンはスイッと主人の方に視線をやった。
そしてすぐに自身の心配がものの見事に的中してしまっている事に気づく。
セシリアは、限りなく薄く貼れられた社交の仮面のすぐ上に、まるで苦虫を噛み潰してしまった時のような顔を乗せていた。
それを見れは10人が10人ともアレが彼女絡みの『何か』だとすぐに分かるだろう。
案の定、心当たり無さげどころか相手が誰かも分かっていないようなキョトン顔のレガシーが、セシリアを見た途端に何かを察した顔になった。
「……セシリア嬢、彼らは君と一体どんな因縁があるの?」
そんな彼の問いに、彼女の表情がハッとした顔に上塗りされた。
しかしそれはほんの一瞬で、すぐにスンとした顔に取り繕われる。
「王城パーティーでの私の噂、彼はそのもう一つの方の当事者です」
その声色は、苦々しい心情がむき出しだった。
せっかく外面は取り繕ったというのに、両者の間に発生するちぐはぐさがどうにも残念過ぎる。
否、違うか。
これはきっと。
(わざとだ。これからポーカーフェイスをしないといけないって、分かってるから)
一種のガス抜きのようなものなのだろう。
ゼルゼンとレガシーには見えるが、ちょうど相手からは見えない。
そんな絶妙な顔の角度を維持しているあたり、おそらく確信犯である。
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●本作の続編はこちらから。
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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜
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