伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜第二王子に狙われてるので、セシリアは口で逃げてみせます〜

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セシリア、第2王子と初バトル

第3話 スパルタ教育者からの教え(2)

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 すると、ほんの1、2秒のラグを置いて「よろしく」という声が返ってきた。
 そしてポツリと、もう一言。

「……確かにセシリア嬢が言うだけはある」

 そんな声が、ポツリと後頭部に落ちてくる。


 小さな声だったから、おそらく誰かに聞かせるためのものではないだろう。

(もしかしたら心の声がポロリと口から零れ落ちてしまっただけなのかもしれない)

 そんな風に思いながら、ゼルゼンはゆっくりと姿勢を元に戻す。



 すると、まっすぐにこちらを向いたレガシーの瞳と視線がかち合った。

 セシリアという安心材料の存在と、セシリアが自慢する彼への好奇心。
 おそらくそれが彼に、普段ならばまず尻込みするだろう人との会話を積極的に行う後押しをしたのだろう。

「いつからセシリア嬢付きの執事なの?」

 両者間の会話の口火を切ったのは、意外にもレガシーの方だった。
 

 その声色からは、緊張した様子は微塵も見られない。
 
 ……否、本来貴族と使用人との関係性はそういうものなのだろう。
 彼の抱える問題が、彼をそうさせる可能性があったというだけの話である。

 しかしその一方で、実は必要以上の緊張感の真っ只中に居る者もいた。

「――正式にセシリア様付きの執事となったのは社交界デビューの3か月前ですが、7歳からの5年間、見習いとして御側におりました」

 全く動じていない様に聞こえる声は、その実自分の言動にひどい重力を感じている。
 その理由は一つ。
 
(自分の言動一つで、セシリア様の評価が決まる)

 社交界では、使用人の言動は主人の評価に直結する。
 使用人の気の利いた行いが主人のプラス評価になるのと同時に、粗相は主人の教育不行き届きとして評価される事になる。
 それを、彼はちゃんと知っている。


 セシリア付きの執事として育てられたゼルゼンは、実は未だに一対一で貴族と会話をした事が無い。

 教育の一環として過去に数回マルクが付いての接客経験はあるが、それは伯爵家に何らかの用事で来た者への対応だ。

 相手には明確な用事があり、だからこそされる質問や交わされる会話にもある程度の予想が付く。
 そんな場でのお目付役が居る状態での接客経験しか無いゼルゼンにとって、これはまさに未知の体験だった。

 重荷を背負った上での未知の体験。
 そんなもの、緊張しない筈がない。

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●本作の続編はこちらから。
 ↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜

●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
 ↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。

●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
 ↓ ↓ ↓
【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。

●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
 ↓ ↓ ↓
幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。 
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