32 / 63
セシリア、第2王子と初バトル
第2話 殊私の使用人
しおりを挟む「僕らの歳だと、普通はまだ専属の使用人を連れて社交場になんて来ない。それはセシリア嬢も知ってると思うけど」
レガシーは、まずはそう前置いた。
実際、セシリアと同年代の子達には、使用人がほとんど付いていない。
勿論この時期に使用人が同行する事も無くは無いのだが、例えばそれはかなりの病弱体質とか、逆に手に負えないほどやんちゃとか、そういう子達に限られる。
それ以外の子たちは通常、「自分の付きの使用人を連れて歩くのは学校入学の時期以降」というのが多い。
そしてどうやら、それはセシリアもちゃんと知っている様だった。
「しかしそれは『社交をしない子供にはまだ付き人の補助は必要ない』という事実があるからこそでしょう?」
そう言って、コテンを小首をかしげてみせる。
「私は既に大人の方々に混じって社交を行いますから、つまりは『必要に迫られて』の措置ですよ?」
言った彼女は、その声色と同じく「それの一体何が可笑しいのか」という顔をしていた。
彼女の言は概ね正しい。
貴族の社交場に使用人が同行するのは、飲み物や軽食を用意したり、色々と手配をしたり。
そういう時の補助をするためなのだから。
因みに、レガシー自身も親から「入学後以降はお前にも常に専属を付ける。その頃にはきちんと社交が出来るようにならねばならないぞ」と言い含められている。
それはおそらく、親からすれば一種の布石なのだろう。
今からソレを言っておくことでレガシーに心的負荷をかけ、近い未来にはその約束通りにレガシーを半強制的に社交場へと引っ張り出すための。
しかしそれは、裏を返せば『通常、使用人がついているのに社交のしないのはおかしい』という社交界の常識があってこそだ。
その点で言えば、現在既に社交を行っているセシリアに社交界の場で専属の使用人がついている事は、別におかしな事ではない。
「……まぁ、百歩譲ってそこは良いとしよう。でも」
しかしそれでも、やはり彼女は異例だった。
何故なら。
「こういう場で付く使用人は、普通はみんな成人済みなんだよ」
そうでなくてもセシリアの年齢で使用人が付くのは珍しい。
なのに、付いてる使用人も異例となれば、目立たないはずがない。
「君の使用人、せいぜい君より2、3歳年上っていうところなんじゃない?」
少なくともレガシーには、彼女の執事がそういう風に見えた。
レガシーのそんな指摘に、セシリアは「あぁなるほど」と納得の表情を浮かべた。
しかし彼女に、それ以上の感情は浮かんでいない。
焦りも驚きも何もなく、ただ納得だけした彼女は、まるで「それがどうした」と言わんばかりだ。
「確かに年齢的には若いかもしれませんが、彼は当家の筆頭執事のお墨付きを得ている人間です。殊私の使用人をするにあたって、彼はどの使用人よりも優秀ですよ」
そう言った彼女の瞳には、深い信頼の色が宿っている。
10
●本作の続編はこちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜
●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。
●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
↓ ↓ ↓
【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。
●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
↓ ↓ ↓
幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
召喚をされて期待したのだけど、聖女ではありませんでした。ただの巻き込まれって……
にのまえ
ファンタジー
別名で書いていたものを手直ししたものです。
召喚されて、聖女だと期待したのだけど……だだの巻き込まれでした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。
佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ!
実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『完結』不当解雇された【教育者】は底辺ギルドを再建して無双する〜英雄の娘である私は常識破りの教育で化け物を量産します〜
柊彼方
ファンタジー
「アリア。お前はクビだ」
教育者として上位ギルド『白金の刃』で働いていたアリアはギルド長であるクラウスに不要だと追放されてしまう。
自分の無力さを嘆いていたアリアだが、彼女は求人募集の貼り紙を見て底辺ギルドで教育者として働くことになった。
しかし、クラウスは知らなかった。アリアの天才的な教育にただ自分の隊員がついていけなかったということを。
実はアリアは最強冒険者の称号『至極の三剣』の三人を育てた天才であったのだ。
アリアが抜けた白金の刃ではアリアがいるからと関係を保っていたお偉いさんたちからの信頼を失い、一気に衰退していく。
そんなこと気にしないアリアはお偉いさんたちからの助力を得て、どんどんギルドを再建していくのだった。
これは英雄の血を引く英傑な教育者が異次元な教育法で最弱ギルドを最強ギルドへと再建する、そんな物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わけあって美少女達の恋を手伝うことになった隠キャボッチの僕、知らぬ間にヒロイン全員オトしてた件
果 一
恋愛
僕こと、境楓は陰の者だ。
クラスの誰もがお付き合いを夢見る美少女達を遠巻きに眺め、しかし決して僕のような者とは交わらないことを知っている。
それが証拠に、クラスカーストトップの美少女、朝比奈梨子には思い人がいる。サッカー部でイケメンでとにかくイケメンな飯島海人だ。
しかし、ひょんなことから僕は朝比奈と関わりを持つようになり、その場でとんでもないお願いをされる。
「私と、海人くんの恋のキューピッドになってください!」
彼女いない歴=年齢の恋愛マスター(大爆笑)は、美少女の恋を応援するようになって――ってちょっと待て。恋愛の矢印が向く方向おかしい。なんか僕とフラグ立ってない?
――これは、学校の美少女達の恋を応援していたら、なぜか僕がモテていたお話。
※本作はカクヨムでも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨てられた私は森で『白いもふもふ』と『黒いもふもふ』に出会いました。~え?これが聖獣?~
おかし
ファンタジー
王子の心を奪い、影から操った悪女として追放され、あげく両親に捨てられた私は森で小さなもふもふ達と出会う。
最初は可愛い可愛いと思って育てていたけど…………あれ、子の子達大きくなりすぎじゃね?しかもなんか凛々しくなってるんですけど………。
え、まってまって。なんで今さら王様やら王子様やらお妃様が訪ねてくんの?え、まって?私はスローライフをおくりたいだけよ……?
〖不定期更新ですごめんなさい!楽しんでいただけたら嬉しいです✨〗
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる