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侯爵子息・クラウンの、はじめの一歩
第8話 友人と呼べる人(2)
しおりを挟む今の彼は、前の彼より人としては成長した。
今ならきっと、彼は前より周りが見えるだろう。
しかし見える事が良い事ばかりだとは限らない。
彼は、どうしたって候爵子息なのだ。
彼の気持ちがどう変わったところで、結局はそのルールに縛られる。
だから、大切なのは貴族としてのルールに則った上で、一人の人間である事なのだ。
貴族のルールに則る事も、一人の人間である事も。
どちらも忘れてはならない。
そして彼は、一人の人間である事を思い出したが故に、少し周りに配慮し過ぎている。
自身を正そうとするあまり、周りに対して下手に出過ぎているのだ。
高位の者が下位の者に対してコレでは、周りに示しがつかなくなってしまう。
そうなれば、周りから馬鹿にされるどころかそこに付け入る隙を与え可能性だってある。
それは則ち「良い様に使われる」という事だ。
彼が『変わる事』に手を貸したのは、誰でも無いセシリアだ。
ならばその歪みを修正するのもセシリアの役目だろう。
「貴方は『自分に合う相手』を選ぶのであって、何も相手に優劣を付けるという話ではありません。ならば自分に合わない相手を『劣った者』だと思わない限り、それは『傲慢』にはなりません」
セシリアが丁寧に、大切に紡がれたその言葉を、クラウンもまたゆっくりと自身の中へと染み込ませた。
誰が、友人として望ましいのか。
それは、今までのクラウンには無い悩みだった。
クラウンは今まですっと、父親に言われるがままに近くに侍らせる者を選んでいた。
その人選は、あくまでも父親にとっての最良であって、クラウンにとってのソレではない。
派閥の中で自分の下に付く家の子を優遇し、分かりやすく序列化する。
『クラウンの友人』とは、そのための装置のようなものだった。
それこそが、今の彼を取り巻く現状の要因の一端とも言える。
彼が本当の意味で『友人』を作るのは、そもそも立場的に難しい。
それに加えて、そうでなくても今まさに問題の渦中だ。
今回の事でその難易度は上がっただろう。
しかし、セシリアはそれでも彼には『友人』を作ってほしいと思っている。
何故ならば。
「友人は、やはり必要です」
その実感を込めて、セシリアはクラウンにも分かるように、あからさまにレガシーへと視線をやった。
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●本作の続編はこちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜
●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
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