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侯爵子息・クラウンの、はじめの一歩
第1話 セシリアの我が儘(2)
しおりを挟む彼女の我が儘は、何も回数だけではない。
様々なジャンルや視点での情報が飛び交いそうな社交場である事。
良い商談が出来そうな社交場である事。
バランスよく、得たい人脈を得ることが出来そうな社交場である事。
それらは全て『効率的な狩り場』を得るための条件だ。
しかしそこに、セシリアはもう一つ条件を付与している。
それは、『義務を終えた後に残った時間を、有意義に暇つぶしが出来る社交場である事』。
少なくともセシリアにとっての社交は、あくまでも『義務』だ。
だから彼女は、必要以上にソレを行うほど勤勉にはなれない。
セシリアが掲げたその追加条件は、最低限を熟したセシリアのご褒美タイムだ。
そして今のところセシリアをして『有意義』と思わせる同年代の貴族は、レガシーという少年ただ一人である。
だから。
「今日もそんな隅っこに居るんですか? レガシー様」
そんな調子で、社交を終えたセシリアは彼の元を毎回毎回訪れるのだ。
レガシーは、殊鉱石に関してはセシリア以上の知識を持っている。
それはきっとセシリア宅の書庫には無いマイナーな論文を読破し、そこから得た知識や実際に自身で行った数多くの実験結果を持っているからに他ならない。
しかしそれだけではなく、彼はきちんと前提から新たな仮説を打ち立て、それを検証する事ができるだけの意欲と頭脳を持っている。
そんな彼は、セシリアにとって格好の『知識欲を満たせる相手(エサ)』なのだ。
それに加えてーーまぁこれは不可抗力だろうがーー彼の周りを決して寄せつけない空気感は、セシリアにとって一種の防波堤にもなっていた。
知識欲を満たす為の時間を、無駄な会話に遮られる事が無い。
それはセシリアにとって幸せ以外の何物でも無かった。
と、こんな風に言っているとセシリアが一方的に得をしている様に思えるかもしれないが、実際にはそうではない。
彼は彼で、この時間を楽しみつつメリットを享受している。
というのも、彼は先日父親に暇つぶしの為の本を没収されていて、それ以降彼の頭をずっと悩ませ続けているのが「その時間が暇で暇で仕方が無い」という事なのだ。
だから『ちょっと変わった友人』との会話は、彼にとって非常に良い暇つぶしだった。
つまり、これは互いにとってWinWinな状態だという事であり、正しく『有益な時間である』と言えよう。
さて。
そんなこんなで、社交シーズンも中盤に差し掛かった頃。
セシリアは、とあるお茶会に参加していた。
そしてそこには勿論、レガシーの姿もある。
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●本作の続編はこちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜狙う第二王子、逃げるセシリア〜
●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。
●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
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【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。
●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
↓ ↓ ↓
幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。
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