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お引越し
閑話2 クイナの女子力モッフモフ (2)
しおりを挟む今日も今日とて平和な薬草採集とスライム狩りを済ませ、引っ越し後初めて『天使のゆりかご』で夕食を食べて。
お腹一杯で大満足のクイナを前に、真面目な顔で俺は告げる。
「クイナ、お前はこれからモッフモフになる」
「モフモフ?」
「違う。モッフモフだ」
「モッフモフ?」
「そう、モッフモフ」
ミランの精神に則って彼女にそう飲み込ませ、俺は「よし」と頷いた。
そして。
「じゃぁモッフモフになるぞぉ!」
「おー! なのっ!!」
という訳で、俺は両腕を肩までまくりながらクイナとお風呂場に行く。
お風呂場は、こういう事もあろうかと人二人が洗い場に入っても余裕がある。
「クイナー、耳と尻尾を洗うから先にお湯で洗っておいて」
「はいなの!」
元気よく返事をした彼女はさっさと服を脱いでワンピース調の赤の布を頭の上から被ると、裸足でペタペタと洗い場を歩く。
この服は、一応子供が外で水遊びをする時に着る代物だ。
妙なところが見えてしまうような事も無く、獣人用なので尻尾穴もちゃんとあるという優れもの。
俺としてはかなりありがたく、引っ越しにあたって新しく買ったものの内の一つである。
バッグから瓶を出すと、オレンジ色の液がまたタプンッと揺れた。
少し力を込めて蓋を開けるとふわりとミルクのような甘い香りが俺の鼻孔を擽ってくる。
――なるほど、確かに女の子向き。
そんな事を考えながら、俺も裸足になりズボンを脛の半分までまくり上げていると、前方からシャァーッという音が聞こえる。
このお風呂には魔力を流すとお湯が出る、魔石が設置されている。
元々魔力制御それ自体は、初歩段階をクリアしつつあるクイナだ。
使い始めて3日目ともなれば、要領だって得てくるだろう。
お陰で俺の言いつけ通り、音が止まるとちゃんとモフモフの耳も尻尾もひたひたに濡らしたクイナがそこに居た。
ペタペタと歩いて行くと、浴室内に常備している木の椅子に彼女が座る。
少し細くなった尻尾が俺の前でふよんと揺れて、薄紫の好奇心に満ちた瞳と目が合った。
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