追放殿下は隣国で、セカンドライフを決意した。 〜そしてモフっ子と二人、『ずっとやりたかった10の事』を叶える事にします〜

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教会でする大事な話編

第44話 クイナの中のポテンシャル(2)

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「よくご存じですね。実はその童話にはモデルが居たという話があるのです。もしかしたらその人が、『豊穣』の恩恵持ちだったのかもしれませんね」

 そう言われ、何だか物語の裏話を知ったような気分になって妙にワクワクしてしまった。
 その一方で感心もしている。
 『豊穣』の有用さにもそうだが、そもそも神父がそれを諳んじた事にもだ。

「もしかして神父様、恩恵の内容を全部暗記してるんですか?」
「ここで聞かれる度に私も疑問に思って調べたりして、そうしている内に気が付けば、という感じですね」
「あぁなるほど」

 それでも分からなかった事を後で調べる辺り、彼は知識欲が深いのだろう。
 確かエルフの種族的特性に、そういったものがあったかもしれない。

 が、ここで「あれ?」と首を傾げる。

 ならば何故、先程彼は辞書の話なんてしたんだろう。
 今の感じじゃぁ知識を秘匿したいという感じでもなかったけど。

 そう思えば、彼は思わずと言った感じで苦笑する。

「たとえ立ち合い神官には守秘義務があるとは言っても、恩恵は個人情報ですからね。中には自分が持っている恩恵を、他人に知られたくない方も居るのですよ」
「――あぁ」

 そうだった、一般的に恩恵とはそういう類のものだった。
 特に珍しい恩恵持ちは周りから搾取されたりしやすいからな。

 俺は王太子だったから立場上、国民に自分の恩恵を明かしていた。
 これは自身の恩恵を国民の為に使っている・役に立てているとアピールするための措置で、これが意外と求心力になるらしい。
 そういう背景もあって、俺の中では恩恵はみんなに知られているのが普通の事だったから……。

「用心深い方もいらっしゃいますからね」

 そう言った彼は、「そういう危機意識の著しく高い人は自分で辞書で調べるのだ」と教えてくれた。

 俺としてはどうだろう。
 今の所この神父さんには俺達への配慮と真摯さを感じるし、仕事意識が高そうにも見える。
 今まで培ってきた王太子としての洞察力を総動員した結果として、彼は信用できるんじゃないかと思うけど。

「なぁ、クイナ」
「んー?」

 耳元に口を寄せコショコショと話をすると、クイナは一もニもなく頷いた。

「大丈夫なの!」
「そ、良かった」

 俺がクイナに聞いたのは、「この神父さん、約束破ったりするように見える?」というものだ。
 もしかしたら「こんな小さな子に何を聞いてるんだ」と思うかもしれないが、彼女が得ている恩恵『直感力』に頼った形だ。
 嫌な感じがしたらおそらく、何かしらを感じるだろう。

 
 俺とクイナ、2人の意見をすり合わせ、俺は彼に頼る事にする。

「じゃぁあの、俺が貰った恩恵についてもお聞きしても?」
「えぇもちろん構いませんよ?」
 
 俺の問いに快く応じてくれたので、俺はその後少し彼と話をしたのだった。


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