追放殿下は隣国で、セカンドライフを決意した。 〜そしてモフっ子と二人、『ずっとやりたかった10の事』を叶える事にします〜

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教会でする大事な話編

第43話 俺の恩恵、こっそり増殖。(1)

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 自分とクイナ2人分のお布施を支払い祝福の間に入れてもらって神父の到着を待っていると、やがて扉がガチャリと開いた。
 反射的にそちらを見て、ちょっと驚く。

 そこには純白の神父服に身を包んだ、一人のエルフの姿があった。

「きれー、なの……」

 クイナが思わずと言った感じでそう言葉を漏らした気持ちは良く分かる。


 男性エルフだ。
 だけど種族的な中世的容姿がそう思わせるのか、それとも性格が滲み出ての者なのか。
 優し気で美しく、それでいて何物をも寄せ付けないくらいに厳かで神々しい。
 そんな感じだ。

 そんな彼が、低く落ち着いた声で言う。
 
「それではそこで両膝を付き、祈ってください」

 俺が言われた通りの体勢になると、隣のクイナもすぐに俺の真似をする。
 そんな彼女を確認してきちんと出来てるのを見てから、俺はゆっくりと目を瞑った。


 膝をついて両手を胸の前で組み、俺は天に祈りを捧げる。

 祈りというのは邪念を取り払い、ただ一心に神を思うという事だ……と、前に習った事がある。
 子供の頃はその意味も良く分からなくて何となく祈るふりをしてたが、じゃぁソレが理解できる大人になった今その通りの事が出来るのかと言われると、全くそんな事は無い。

 目を瞑ると、むしろ何故か「無心になどなれなる筈も無い」という気持ちにさせられたのだ。
 
 多分それは、そう思うくらいには最近色んな事があったからなのだと思う。


 最初に頭の中に浮かんできたのは、あの国に置いてきたシンと俺が今何の不自由を感じない様に心身共に鍛え上げてくれた師のレングラム。
 その他にも道中で知り合った商人のダンノとメルティー親子、串焼き屋のおじさんや『天使のゆりかご』のマリアとズイード。
 そして何より、隣のクイナ。

 沢山のいい出会いがあった。


 まだ『やりたかった事』も、3つしか叶えられてない。
 けど、逆に言えば僅か11日でもう4つも叶っているという事で、王城に居た時には一生叶わないと思っていた夢が4つも叶ったという事は、少なくとも俺にとっては奇跡に近い事である。

 そのお陰か、あれ以降は毎日が実に短くて濃厚に思えてならない。


 ここまで大して嫌な思いもせずにこれたのは、きっと運が良かったからだ。
 だから今に、最大限の感謝を捧げたい。
 
 そう思いながら、俺は祈った。


 瞑っていても瞼越しに分かるくらいの光が俺とクイナに降り注ぐ。
 それが神からの祝福の証だった。

「――目を開けて結構ですよ」

 そう言われ、俺はゆっくりと瞼を上げる。
 隣を見れば同じように目を開けたクイナが何故か、一仕事終えたかのようなため息を吐いていた。
 思わず笑ってしまったんだけど、キョトンとした顔で見てくるんだから更に微笑ま可笑しい。

 と。

「ロールをご確認ください」

 一枚の紙がそれぞれ俺とクイナの前へと差し出される。

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