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さぁ冒険に出てみよう編
第38話 一方その頃酒場では ~そのバカ強いニューフェース~(2)
しおりを挟むディゲルドを伸したのが気まぐれだったっていうだけで?
そんな声が口々に聞こえる中、この職場のマスターが彼等荒くれモノのお替りジョッキを持って来て言った。
「一昨日ここで飲んでたやつが、『レオから突っかかってなぁー』って言ってたな確か」
「え、そうなのか?」
「そいつが何か悪い事したに決まってる!」
「ソレが、『ミランが何とか』って」
「ミラン? 冒険者ギルドの受付嬢の?」
「あぁアレだ、確かミランってレオと同じく孤児院の出だったろう?」
「あとレオが一方的にミランの事を慕ってる」
そんな言葉が口々に発せられる中、その話に耳を傾けていた飲んだくれの内の一人が「あ」と小さく声を上げた。
「そういえばそのルーキー、冒険者登録をそのミランにしてもらってたな」
その男は冒険者で、ギルドにもよく顔を出している。
あの日も初登録にしては大人過ぎるルーキーを「珍しいなぁ」と思いながら眺めていた一人だった。
「じゃぁアレか? その登録中にソイツがミランに手を出したとか?」
「いや全然」
「じゃぁ暴言か嫌味でも吐いたとか?」
「いや? むしろ終始和やかな空気で、俺達も心洗われたというか……」
「は?」
「いやその連れてた獣人の娘っていうのが可愛くてだなぁ」
そう言って、思いを馳せる様に彼はちょっと遠い目をした。
すると別の男がニヤニヤ笑う。
「おいおいお前、ガキに懸想はいかんだろ」
「違うわ! そういうのじゃなくて何かこう『癒し的な』っていうか……」
「へぇそんなにか。それはちょっと見てみたいかも」
「っていうか、なら何でレオはソイツに突っかかったんだ?」
「もしかして楽しそうに話していたその男とミランに嫉妬して……?」
「「「……」」」
「じゃぁ悪者はレオじゃないかー!」
スキンヘッドの男は、ガハハハハッと笑いながらさも愉快そうにジョッキを呷った。
そんな彼を眺めながら、向かいの男は苦笑する。
「お前さっきから言ってることが180度変わってるぞ」
いっそ清々しいまでの手のひら返しだが、これも酒の為せる業。
一応彼も普段はここまで適当じゃない。
「それにしても本当に凄いなその男。レオなんて冒険者の中では上位ランクのBだろう? Gランクでそれを伸すとか」
「で? その男と獣人はどこに住んでるやつなんだ?」
「さぁそこまでは知らないが、よく二人で串焼きを歩き喰いしてるところは見るな」
「あぁもしかして、あの竜人ハーフの所の串焼き屋か?」
「あそこの串焼き美味しいもんなぁー」
こうしてベロンベロンに酔っぱらった親父どものから騒ぎは、今日も楽しく過ぎていく。
「じゃぁそのバカ強いニューフェースに、かんぱーいっ!」
「「「「かんぱーい!」」」」
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