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さぁ冒険に出てみよう編

第36話 魔法使い……たいクイナ(2)

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「クイナ、甘くておいしいスライム、食べれない……?」
「いやまぁ俺が捕まえれば今すぐにでも食べられるけど」
「クイナ、自分で捕まえたいのー……」

 肩をズゥーンと落とした彼女に、俺は思わず苦笑い。
 まるで世界が終わるような落ち込みようだが、そんなに落ち込む必要はない。

「ならまずは訓練だな」
「訓練、なの?」
「そう。魔力の放出を自分でコントロールする訓練だよ」

 スライムを一瞬で爆散させるほどの魔力を一度に練れる人は、かなり少ない。
 しかしそれだけ、ちゃんと訓練さえすれば多くの魔力を一度に操る事が出来るという事だ。
 つまりクイナは、稀な魔法の才を持ってる。

 コントロール出来るようにさえなれば、クイナの「魔法を使いたい」という願いも「スライムを自分で捕まえたい」という願いも両方叶う。

「クイナに出来るかな……」

 両手をキュッと握りしめ、地面を見つめてクイナが言った。
 やはりクイナの中で魔法は、特別な何かなのだろう。
 が、そんな彼女に俺は言う。

「出来るさ。だって俺が出来るくらいなんだから」
「アルドが……?」

 期待と不安がない交ぜになった瞳で縋る様に見つめられ、俺は「大丈夫」と言って笑う。

「俺も内包魔力が大きくて昔はちょっと大変だった」

 スライムを爆散させた事は無いけどな。
 そう言った俺は、しかしレングラムから笑い交じりに「きっとスライム爆散し放題だろうなぁ?」と言われた事があるのは確かだ。

 王族の血筋のせいで元々そういう体質なのだ……という事までは流石に口にするわけにもいかなかったが、そのせいで魔力制御を覚えるまでは魔力抑制用の腕輪を常に付けていないといけなかった。
 外してしまうと所構わず無意識に放火して回るような子供だったのだ、物騒な事に。

「だからクイナも頑張れば、俺と同じくらいには魔法を使えるようになる。その為には、もちろんクイナも頑張らないといけないけど……」
「頑張るのっ!」

 シュバッと右手を上げたクイナは耳も尻尾もピンとしていて、全身で手を上げている様な感じだ。
 そのやる気に俺は「これなら大丈夫そうかな」と思う。

「じゃぁ今日はとりあえず帰ろう。で、数日は魔法のお勉強をしような」
「はーい!!」

 という事で、俺は人生初の誰かの『先生』になったのだった。

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